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がん③ 緩和ケア、なぜ大切なのか


対象は痛みだけじゃない。

 消化器がん、婦人科がん、泌尿器がんなどが腹膜に転移して、がん性腹膜炎・腹膜播種を起こした場合、胃の出口や十二指腸が周囲のがんやリンパ節転移で狭くなっている場合、さらに、手術、抗がん剤治療、放射線治療などのがん治療や鎮痛薬などの後遺症、副作用などで消化管に障害を来たした場合には、食欲不振、腹痛、吐き気、嘔吐、便秘などの消化器症状が現れて、QOLの低下や栄養障害などの原因になります。
 口から、また病態によっては胃瘻(PEG)から食物を食べる、栄養を投与することは、実は免疫力の点でもとても大切なことです。
 体内の免疫系で重要な役割を果たすリンパ球の半分は腸の粘膜に存在しており、腸管粘膜を適度に刺激することで免疫力がアップするからです。
 便秘を改善すること、食生活を工夫すること、口腔ケアなどは、日頃から心がけて下さい。
 消化管閉塞(腸閉塞)を起こすと、ガスや便が出ない、吐き気が続く、食事をした直後に腸をねじられるような腹痛が起こる、などの状態になります。さらに消化管が飲食物や消化液などで満杯になると、吐き続けます。
 この場合すぐに絶飲食にして、点滴で水分や栄養を管理しつつ、消化管内に溜まったものを胃管やイレウス管を挿入・留置して外へ出します。さらに薬物療法として、消化管閉塞改善薬のオクトレオチドの持続投与、ステロイド薬の点滴などを開始します。
 全身の状態や病態によっては、胃の出口や十二指腸にステントと呼ばれる網状の筒を内視鏡で留置したり、狭窄・閉塞を解除するバイパス手術を行う場合もあります。
 腹水が大量に溜まった場合は、外来や入院で適当な間隔で腹部に細い管を入れて排液します。排液しても大量の腹水が短期間で溜まってしまう場合には、腹水濾過濃縮再靜注法(CART)という方法を用いる場合があります。一度に数リットルの腹水を抜いて、フィルターでアルブミン、グロブリンなどの大切な成分だけを濾し数百CCに濃縮したものを点滴で体内に戻します。ちなみにこの治療は保険適用になりました。
 また、まだ研究段階ですが、腹腔内と上大静脈を体内でカテーテルを用いてつなぎ、腹水を血管内へ還流させる腹腔静脈シャントという方法もあります。

呼吸困難を和らげる

 肺がんやがんが肺に転移したり、がん性胸膜炎・胸膜播種(胸水貯留)により正常の肺組織が機能しない時など前面に出てくる症状が呼吸困難感です。
 呼吸困難感治療の第一選択が、先程も説明したモルヒネ投与です。これに、ステロイド剤、抗不安薬の併用投与と適量の酸素吸入、上半身をやや上げた体位などの工夫、部屋の換気をよくするなどで症状を緩和できます。
 胸水が胸に溜まった場合は外来で細い管を胸腔内に入れて胸水を排液する方法や、入院して胸腔内に太い管を入れて十分に排液して肺を膨らませた後に免疫賦活剤などを注入する胸膜癒着術と呼ばれる治療法があります。肺を包んでいる膜と肺がうまく癒着されると、胸水が溜まらなくなることもあります。

心を和らげる

 患者や家族にとって身体の苦痛を和らげるのと同じくらい重要なのが、心理精神的な面の治療です。多くの患者は不眠、不安障害、適応障害、抑うつ・うつ病など心のダメージを受けます。
 心と身体は絶えず対話をしており、心の苦痛が増強すると身体の苦痛も強くなります。身体症状と同様にメモをしておき、外来診察時などに主治医や看護師に言って下さい。
 主治医や看護師が専門医の介入を必要と判断した場合は、精神腫瘍科医(腫瘍精神科医)、臨床心理士、心の問題を専門に扱うリエゾン看護師など、心の治療・ケアの専門スタッフを紹介してくれるはずです。
 専門スタッフによる心のケアの基本は、不安や落ち込みについて専門家に話す「カウンセリング」です。
 薬を併用したほうがよい場合には、症状に応じて、睡眠導入剤、抗不安薬、抗うつ薬などが処方されます。やめられなくなるのでは? とご心配かもしれませんが、医師の指示通りの飲み方を守っていただく限り、医療用麻薬と同様に全く心配ありません。
 また、自分の心身を意識的にリラックスさせる「リラクセーション」法を習得することも良いでしょう。不安、緊張感、抑うつ気分を和らげるだけでなく、寝つきをよくしたり、痛みを間接的に軽くするなどの効果も期待できます。
 この中には、他の疾患で用いられている呼吸法や軽いダンスなど、最初に練習が必要なものもありますが、一度覚えると、一人でいつでもどこでもできるようになります。
 海外では、アロマセラピーマッサージが不安障害やがん倦怠感に有効であること、針治療が吐き気や痛みを緩和することなどが、臨床研究で検証されています。その他、漢方医薬、リハビリテーション医学、栄養療法も緩和ケアにおける治療の一環として導入すべく、研究されています。

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