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がん⑨ がんワクチンなぜ効くのか


効率アップを狙って樹状細胞に注目。

 前頁で登場した「樹状細胞」の働きをフルに活かそうというがんワクチン療法も研究が進んでいます。「樹状細胞ワクチン療法」です。
 樹状細胞はその名の通り、長い突起をたくさん生やした姿をしています。がんを攻撃する細胞傷害性T細胞にがんの存在や情報を知らせる重要な仲介役ですが、がんペプチドワクチン療法では、体に注射したがん抗原ペプチドをうまいこと樹状細胞が見つけて食べ、抗原提示するかどうかは、出たとこ勝負でした。
 それに対し、樹状細胞ワクチン療法では、まず、患者自身の樹状細胞を血液中からいったん取り出して、患者自身のがん組織や、がん細胞から調製したがん抗原タンパク質と混ぜ、取り込ませます。そうしてがん抗原ペプチドを提示させた状態で、その樹状細胞を再び体の中に戻すのです。
 これにより、効率的に細胞傷害性T細胞にがんの特徴を覚え込ませ、がん細胞のみ狙って攻撃するよう導びこう、という考えです。実際には、こうして作製した樹状細胞ワクチンを、例えば2週間に1度の割合で5~7回、3~4カ月にわたって患者に注射します。

一筋縄でない合成ペプチド開発

 ところで、ペプチドワクチン療法はもちろん、樹状細胞ワクチン療法でも場合により、人工的に合成されたペプチドが用いられます。そこで注目されるのが、より多くのがんに共通して使えるペプチドの開発です。
75-1.2.JPG 例えば、「WT1」というがん特異的タンパク質は、白血病などの血液がんも含む、ほとんどのがんで作られることが研究で明らかとなっています。ですから、その断片(9個のアミノ酸)である「WT1ペプチド」を用いることで、より多くのがん患者さんにがんワクチン療法の門戸が開かれる可能性が高まります。
 しかし、まだ課題があります。ペプチド合成で重要になるのが、「白血球の型」とも言われるHLAです。
 HLAは、白血球を始め、体のすべての細胞表面に複数見られる構造物で、細胞が抗原を提示するのに必要な"手"の役割を担っています。樹状細胞では、がんを分解してできた抗原ペプチドがその手に載せられ示されて初めて、細胞傷害性T細胞が抗原の存在を認識できるようになります。ですから人工抗原ペプチドも、このHLAとうまく手をつなげる(結合できる)構造でなければいけません。
 日本人は約60パーセントがA‐2402、約20パーセントがA‐0201という型のHLAを持ちあわせていることが分かっています。そこで、WT1などがんタンパク質のアミノ酸配列のうち、この2種類のHLAに結合しやすそうな部分を予測、検証して抗原ペプチドを見つけてきました。それが機械で合成され、理論上、日本人のほぼ8割の患者さんに適合する人工抗原ペプチドとして、がんワクチン療法に使われてきています。
 以上から、今のところ次の2条件に当てはまる患者さんは、がんワクチン療法により期待が持ちやすいと言えるかもしれません。
●がん細胞にWT1が出ていること。
●HLA-Aの型が、2402か0201であること。
 もちろん他のタイプでも、医療機関や臨床試験によっては対応が可能なケースもあります。また、樹状細胞ワクチンの最近の研究では、樹状細胞にがん抗原ペプチドを混ぜたワクチンよりも、がん組織そのものを混ぜたほうが高い効果を得られたとの報告も一部あり、試行錯誤が続いています。いずれにしても検査も必要ですから、まずは主治医と相談し、あるいはセカンドオピニオンなども活用しながら検討してみてください。

FDA承認ワクチン、実力は? 2010年4月、前立腺がん治療用ワクチン「プロベンジ」(一般名シプリューセル‐T)が、FDA(米国食品医薬品局)により認可されました。臨床試験では、無症状または症状の少ない前立腺がんで、ホルモン療法(2011年9月号参照)が効かなくなった患者さんの生存期間を4カ月以上延長しています。仕組みとしては樹状細胞ワクチンに似ていますが、使う白血球が樹状細胞に特定されません。▽これは、がんワクチン療法の承認第1号で、画期的と言えます。ただ、一般的にFDAの承認を得るには時間のかかる臨床試験が必要。その間にがん免疫療法は大きく進歩し、プロベンジも既に最新がんワクチンとは言えません。開発期間が延びたことで開発費も莫大になり、回収のためか、価格は3回投与で800万円以上と高額なのも悩ましいところです
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