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がん⑪ 代替療法の正しい使い方

77-1-1.JPG 代替療法は、最後の切り札か、あるいは単なる気休めか--。代替療法が求められる理由と、その問題点を考えていきましょう。

監修/星野惠津夫 がん研有明病院消化器内科部長

77-1.1.JPG 代替療法とは「現時点では西洋医学的に有用性が証明されていないため、標準的治療として認められていない治療法」です。いきなり難しい定義を申し上げましたが、簡単に言えば、今のところ"エビデンス"(有用である証拠)がない治療法のこと。正式には「補完代替医療」と呼ばれますが、ここでは代替療法と呼ぶことにします。
 代替療法の存在理由は、現在の西洋医学がすべての患者さんに満足される治療を提供できていない現実にあります。
 実際、わが国のがん患者の2人に1人が代替療法を利用しています。ただ、その内訳としては健康食品やサプリメントが圧倒的に多く、それによって延命や奇跡の生還を期待する人が大多数です。
 一方、欧米では国が専門機関を設立して様々な代替療法に関する情報収集や研究を行い、その結果、一部は私的な医療保険でカバーされています。また、欧米のがん患者では祈りや宗教的な癒しなどを治療に用いる人が多く、健康食品やサプリメントに大金を使う人は少数と報告されています。まさに日本とは対照的です。
 特に米国では、実態調査に基づき、政府が出資して国立衛生研究所(NIH)の中に研究部門を創設し、代替療法の研究と普及を行ってきました。代替療法による全人的なサポートは、患者のためにも医療費抑制のためにも効果的と判断されたからです。
 わが国では、漢方薬や鍼灸などの一部には健康保険が適用され、これらは代替療法ではなく正規の医療と位置づけられています。しかし、それ以外の様々な代替療法に関して、国はこれまで野放しにしてきました。そのため医師に匙を投げられた患者さんは、がんのバイブル本やインターネットで救われる方法を探し回った挙句、えてして有害無益な健康食品やサプリメントに大金をつぎ込むことになるのです。横行する詐欺やボッタクリに引っかかるケースも珍しくありません。政府が正面から取り組んでこなかったために、被害に遭う人が後を絶たないのです。

有効性と安全性はピンからキリまで

 これまでのところ、ほとんどの代替療法には医学的に有効という証拠はありません。漢方薬は医療現場でその効果が認められていますが、サプリメントの多くは、名前はよく知られてはいても、科学的検討で有効性が否定されたものが多いのです。
 のみならず大抵は、正しい情報と十分な理解がないままに、販売業者の言うことを妄信して代替療法を用いています。しかも、多くの場合、主治医に内緒で代替療法を受けているのが現状です。
 代替療法を用いるか否かは、患者さん自身が決めることですが、実際にはネット上に溢れる大量の情報に洗脳され、あるいは友人などからの無責任な勧めにも左右されます。
 そこで、ご家族も含めて、様々な代替療法に関する情報を広く集め、その上で、自ら最善と考えられるものを選択するという心構えが重要です。
 米国では1997年に「医療へのアクセス法」が成立しました。主治医は、自分では治療できない患者に対し、本人が希望した場合、代替療法を含むしかるべき医師や治療師に紹介する義務を負う、という法律です。日本でもこのような法律が制定されれば、患者さんを見捨てることなく、最後まで患者さんに寄り添った治療が行われ、「がん難民」は確実に減っていくはずです。

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