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梅村聡の目⑮ 有床診療所を有効活用 その心は脱ハコモノ行政

有床診療所を応援する国会議員連盟を4月4日に立ち上げました。日本型の医療を守っていくためですが、霞が関の体質を変えていくことにもなると思っています。

 法律では、ベッドが20床以上ある施設を「病院」、19床以下の施設を「診療所」と言います。そして、診療所には、いわゆる"ビル診"などのように入院ベッドを全く置かない無床診療所と、入院できるベッドを置いている有床診療所とがあります。国内約10万カ所の診療所のうち約1万カ所が有床診療所です。
 病院の総ベッド数は約160万床で、有床診療所は約13万床です。日本のベッドの8%弱は有床診療所ということになります。病院の入院患者総数が年間約1300万人なのに対して、有床診療所は約60万人。こちらは5%弱という計算になり、病院に比べるとベッドの稼働効率は高くないようです。
 有床診療所で多い診療科は内科、外科、産婦人科の順となっています。外科的処置も可能で、骨折など日常的に起きるけがの手術、眼科の白内障手術は代表的です。後述しますが、患者にとっては入院費が安いというメリットもあります。

冷遇され絶滅寸前

 有床診療所は入院患者の7割以上が65歳以上で、高齢者の割合が病院より多くなっています。病院よりも在宅に近い施設として、在宅は無理でも身近な場所で看取りたいと思う家族の看取りの場所にもなっています。疼痛管理もできますし、病状が悪化した慢性患者さんの一時的な入院機能もあります。各地域の医療ニーズを満たすため、ベッドを生かして病院と在宅の間で緩やかな連携機能を発揮していたのが有床診療所なのです。
 ただし、各地のニーズに即して融通無碍に進化してきた結果、中央集権的に一律管理したい国からすると得体の知れない存在だったのでしょう。厚生労働省はこれまで、有床診療所を抹殺しようと考えているのでないかというくらい冷遇してきました。
 入院基本料の最低は340点(看護師配置1人以上3人以下、入院31日以降の場合)。一泊3400円と、ビジネスホテルよりも安い金額です。当然ながら患者を入院させると赤字になりますが、厚労省は、その赤字を外来の診療報酬で補填しなさいと、本来の機能からすれば全く本末転倒に指導してきました。結果として、これまた当然のことながら、有床診療所は減少の一途を辿り、ここ20年ほどで約4割まで減りました。
 日本の医療は、有床診療所を含む形で発展し、世界でもトップレベルと評価されるに至りました。なぜ、重要な役割を果たしてきたにもかかわらず、世界的に珍しいからと、ここまで冷遇してきたのでしょうか。
 そろそろ反省すべき時期です。

制度も"ハコモノ"

 前回説明したように、厚労省は「地域包括ケア」をキーワードに入院医療から在宅医療への移行を進めています。地域の様々な医療機関、介護サービス事業所、行政、専門スタッフなどがチームになって24時間365日、地域で暮らす患者をサポートしていこうという考え方です。
 そのため、今年4月の診療報酬改定の目玉として、2006年度から実施している「在宅療養支援診療所」制度をさらに手厚くしましたが、個人的には感心しません。「3人の常勤医が必要」という要件が加わり、周囲にほとんど診療所がないような医療過疎地域では、加算をとるのが難しくなってしまいました。在宅医療を行う診療所の格差が開いたり、医療機関のやる気をそいだりしかねないからです。
 何かを充実させるために制度や仕組みをつくったのに、実態を無視して設計したためどうもうまくいっていないということ、今回の在宅医療に限らず多く見受けられると思います。
 この話、何かに似ていませんか?
 そう、ニーズも定かでないのに、予算ありきであちこちに建物を造る"ハコモノ行政"です。
 この構造は、行政の作る制度やシステムでも起こり得ます。官僚は、予算や報酬の得られる仕組みと、それを受け取ることのできる要件を定めます。仕組みを作ると、その官僚個人の手柄となり、その段階まででも結構な予算を要します。でも実際にやってみたら、中身が伴わなかったり使えなかったりということが、過去にたくさんありました。
 今回の在宅医療に関しては、元から使える資源の少ない中でなんとか仕組みを作ろうとしていますから、今まで以上に無理の生じやすいところもあると思います。ここは発想を変えてみた方がよいのではないでしょうか。

新しく作らない

 既に地域ごとのニーズに応じて存在する有床診療所を、高齢者の受け皿として有効活用するなら、「中身が伴わない」とか「使えない」といったことは、ほとんどないはずです。
 有床診療所と同様の機能を持つ施設を新しく作ろうとしたら、大変なコストと手間がかかります。でも今現在、有床診療所には、年間36兆円の医療費の中のたった1%の4千億円しか使われていません。行政や地域医療の無駄を大いに省けるはずです。有床診療所支援は、霞が関の官僚の考え方を変えてもらうチャンスにもなると思います。
 こうした考えから、今回の診療報酬改定で有床診療所が評価されるよう尽力し、緩和ケアやターミナルケアなどの評価項目が新設されました。
 さらに支援を強化していくため、「有床診療所を応援する議員連盟」を設立し、私は事務局長を務めています。設立総会には約30人の国会議員が集まりました。今後は参加議員から、各地方の医療の現状説明、どのように有床診療所が役割を果たしているかを検証していこうと思います。
 地域密着の有床診療所を検証すれば、地域の実態も浮き彫りになっていくでしょうし、診療報酬改定が本当に有効だったかも見えてきます(繰り返しますが、そのためにもやはり診療報酬改定は3年に1度であるべきです)。これから定期的に会合を開き、次回診療報酬改定に向けた要望活動などを行っていく予定です。
 既にある日本型医療を守って充実させ、霞が関の考え方も方針転換させる画期的な議連活動です。ぜひ皆様に見守っていただきたいと思います。

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