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梅村聡の目⑯ 政策決定過程を透明に 情報ドミノを倒したい

 政治不信が強まる一方です。政策の良し悪し以前に、政策がどうやって決められているのか、国民の目に見えないのも大きいと感じています。政治や行政への信頼を回復するには、よく見えるようにする必要があります。

 橋下徹・大阪市長には賛否両論あると思いますが、彼の大きな功績は、政治・行政・法律・政策・予算が毎日動いていることを、市民や国民に見せたことです。政策の良し悪しではなく、「見えている感じ」が市民に満足感を与えているのです。私が、この連載を持とうと思った理由も、このポイントと重なります。
 政策の決定過程は、本来であれば日本の将来像を見据えた上でマスメディアが報じるべきと思いますが、実際報じられているのは、いわゆる政局ニュース。政党内や政党間の勢力争い、主導権争いなどばかりです。誰がどの派閥についた、別れた、誰と誰が会合をしたといった話です。これは単なる権力争いの話であって、政治の本質ではありません。
 政局について話すことで政治について語っているかのような錯覚をひき起こされていたとしたら、マスコミや官僚の思うつぼです。

役人の思いつき

 では改めて、国の政策が現在どうやって決まっているか、説明します。
 思い切った言い方をしますと、まず役人が政策を思いつきます。根底にあるモチベーションは、「役人人生の中で自分の価値を高めたい」という思いと、規制や基準を作ることによる省庁の権限拡大の二つであることが多いように感じます。全部が全部そうだとは言いませんが、省庁全体として見るとそうなってしまっていることが多いのです。
 次に、自分たちが決めたのではないという"アリバイ工作"のための審議会や検討会を創ります。最初は、その政策の賛成派と反対派を呼んで議論させますが、どうしても意見がまとまらない場合は、反対派に対して、「来年からの予算や研究費がどうなってもいいですか?」と言います。そんなことを言われたら、賛成せざるを得ないでしょう。それでも賛成しなかったら、会議の下に小委員会やワーキングチームなどを創り、そのメンバーを賛成派ばかりにして議論も非公開にします。
 こうして関係者の意見がまとまったかのような報告書を作り、政治家のところに持ってくるわけです。政治家には法律を通さないという手段が残されているだけで、論理的に反論する余地は極めて少ないのです。
 唯一対抗できる手段が直接の民意です。でも集会を開いて反対意見をまとめたとしても、官僚は「たまたま、その時周りにいた人がそう言っただけでしょう」と言います。それでも譲らないでいると「では、あなたの地元にこんなハコモノをつくりましょう」と持ちかけます。
 この包囲網を突破するには、何が行われているのか、メディアを通じて国民に広く知っていただく必要があります。しかし、いきなりマスコミが採り上げてくれることは多くありません。そこで、このコーナーが必要になるわけです。
 例えば生活保護の話なら、厚労省はそれまで「全国銀行協会が反対するから生活保護受給申請者の資産について本店での一括調査はできない」と言い続けていました。しかし、このコーナーに書いたことで産経新聞が採り上げ、その後、私が国会質問をすることによって銀行協会が譲歩しました。診療報酬改定でも、このコーナーから火がついて、「診療報酬を手当てしないといけない」と国会議員が100人以上も集まりました。
 震災対応にしても、役所にとって、このコーナーは大きなプレッシャーでした。政策を変えるための"情報ドミノ倒し"の最初のドミノになってきたからです。

つなぐのが仕事

 次に、政治家の本来の仕事とは一体何なのか。私は、素材を組み合わせて食べられるようにする"料理人"であるべきと思っています。
 例えば以前書いた「がん登録」の話でも、国民から「制度を作ってくれ」なんて意見は出ません。「ある日がんと告げられて、慌てて本屋に駆け込み名医やブランド病院ガイドを見て、そこに行ったけど見捨てられた。満足いかなかった」という声が出てくるだけです。一方で、「がん対策基本法ができる時、がん登録を法律に入れたら本体がこけてしまうため、入れなかった」という情報もあるわけです。後者が原因で前者の不満が生じていることに気づいて、つなぐのが政治家の仕事です。
 また例えば生活保護の問題では、国民は「生保の受給金額が、基礎年金の倍になっているのはおかしい」と言います。国は「年金はあくまで保険をかけた対価だから、生保の金額と比べることに意味はない」と話が噛み合いません。でも組み合わせて考えると、十分な資産・収入を持つ人の生活保護不正受給が問題だと分かります。であれば、資産・収入調査を厳格にしようということになるわけです。
 ただし今の政治家が、きちんと料理人に徹しているかというと心もとなくて、以下2パターンの人が目立ちます。まず、官僚と同じ思考パターンに染まってしまい、官僚に褒められることで自尊心を高める人。あるいは、「恵まれない人の権利拡大」だけ言って票を稼ぐ人です。本来の政治家は、両方の立場を理解しながら、役所と国民の意見が噛み合わない理由を解きほぐし、つながないといけないのです。
 私は常にそのスタンスを意識して活動してきたので、役所からも国民からも違和感なく受け入れてもらえたと思っています。今後もこの姿勢は貫きます。

政治家の見分け方

 どうやってよい政治家を見分けていったらよいのでしょうか。実は皆さんが思っている以上に、政治家との垣根は低いものなのです。話を聴きたい、会ってもらいたいと思った時には、何も大規模な集会を開かなくても喫茶店などに3、4人も集まれば、大臣などの役職についている場合は別にして、政治家は喜んでホイホイと駆けつけます。この身近さこそが小選挙区制のメリットなのです。
 そして、そういう場を持ったら、一方的に話を聴くのではなく、ぜひ対話をしてもらいたいのです。5~10分も話をすれば、相手の能力は分かるでしょう。自分の目で見て確かめるのが大事です。休みの日にでも文化クラブやレジャー的な感覚でやってみていただけたらと思います。

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