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がん低侵襲治療④ 頭頸部がん

86-1-1.jpg これまで隔月で、主に手術の範囲や方法を工夫して体への負担を小さく留めるがん低侵襲治療についてご紹介してきました。今回は、頭頸部がんを例に、放射線治療の低侵襲化について、がん研有明病院放射線治療部の利安隆史医師にお話をうかがいました。

86-1.1.jpg 「がん研有明病院放射線治療部では、5人の医師が、前立腺がんや乳がんなど、部位ごとのスペシャリストとして診療を分担しています」と語る利安医師自身は、頭頸部がんを担当しています。
 頭頸部がんとは、文字通り首から頭にかけてできるがん。のど(咽喉・喉頭)から口(口腔)、鼻(鼻腔)等にできたがんを指し、原発巣が目や脳にある場合は含まれません。いわゆる耳鼻咽喉科の領域にできたがんと言えば分かりやすいでしょうか。
86-1.2.jpg 頭や顔の辺りには、手術や放射線によってダメージを受けると機能が失われてしまうなど、厄介な副作用を生じる「リスク臓器」が集中しています。脊髄、目、耳、鼻、耳下腺、口腔内(舌を含む)、声帯など、どれも手術で傷つければ直ちに生命活動や日常生活に支障が出るものばかりです。
「だからこそ、頭頸部がんは、手術、放射線、抗がん剤などを組み合わせてできるだけ低侵襲に治療を行うことが重要になります。それぞれの治療方法の効果と副作用のバランスを考えて選択することが最も重要です」と利安医師。

副作用がQOLを大きく左右

 ただし「放射線治療にも特有の副作用はあります」。
 放射線は、対象となる病巣をめがけて真っすぐに飛んでいき、そのまま通り抜けます。ですから放射線を体の前後から当てる通常の照射方法では、病巣より手前と後ろにある器官や臓器も、病巣と同じだけの線量を浴び、障害を受けることになります。重要なリスク臓器に近接している頭頸部がんでは、大きな副作用を引き起こしてしまいます。
「例えば上・中咽頭がんでは、多くの患者さんが耳下腺への副作用で悩まされます」
 耳下腺は唾液を作る臓器の一つ。おたふく風邪で膨れるところです。「この〝唾液工場〟が放射線でダメージを受けて唾液が作られなくなると、口の中が乾き、あっという間に粘膜が傷んでしまいます。食べ物を飲み込むのも難しく、口内の衛生状態も悪くなって、たちまち虫歯や歯槽膿漏に影響が出ます」
 困ったことに、口内の乾燥は放射線治療が終わってもすぐには回復しません。少なくとも数年、あるいは元に戻らないこともあると言います。
 その他、口腔内に放射線が当たると、味覚障害や口内炎が生じます。6割程度が治療後2~3カ月で回復しますが、味がしなかったり痛くて食べられなかったりが続けば、どちらもQOL(生活の質)の大きな低下は必至です。
 利安医師は「当院では歯科との連携によって口内ケアも同時進行します」と、副作用対応の大切さを強調します。ですが、副作用が少ないに越したことはなく、放射線治療の低侵襲化も試みられてきました。

がんの放射線治療 おさらい  がん治療の3本柱と言えば、手術、化学療法、放射線です。中でも、X線などの放射線をがん細胞へ照射し、細胞分裂を失敗させてがん細胞を死滅させる放射線治療は、補助的な治療を含めれば、ほぼすべてのがんが対象となっています。しかも、一般に内視鏡やレーザーによる切除に次いで、体への負担は軽いと考えられています。  全身状態や併用療法にもよりますが、多くの場合、治療は毎日10分~20分、照射そのものは数分~15分程度です。これを平日のみで数週間(頭頸部がんでは約1カ月半)続けます。通院でも行えるのが大きなメリットです。
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