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梅村聡の目㉓ 国民が政策で選べるよう衆議院選挙制度の改革を

昨年12月に行われた衆院選では、自民党が政権与党に返り咲きました。しかし、自民党が主張する政策を国民が本心から選んだかといえば、そんなことはないと感じています。現在の小選挙区制度では、政策を選びにくいという欠陥が如実に表れました。私自身は、中選挙区制度に戻すべきと考えています。

 衆院選で圧勝して政権党に返り咲いた自民党が掲げた政策は、国土強靭化計画で公共事業推進、TPPには反対、明言しないものの原発維持、だったと言えると思います。

 対して民主党は、公共事業より社会保障や人にお金を使うべき、すぐには無理でも2030年代に原発ゼロ、TPPにはイニシアチブを取りながら条件付きで参加と掲げていました。手前味噌になりますが、こちらの方が一般市民の感覚と近かったと感じています。しかしこの政策は国民から「NO」を突き付けられた形です。政権与党への拒否という投票行動が、結果として選挙結果と政策選択が一致しないという現象を生み出しました。

 なぜこういうことが起きるのか、私は小選挙区制に原因があると考えています。小選挙区制では国民は政策を選択しにくいのです。

小選挙区の落とし穴

 小選挙区制が始まったのは、1996年でした。それまでは中選挙区制で一つの選挙区から3~5人が当選しました。しかし中選挙区制は選挙区が広いため、有権者に対する様々なサービスが必要になり、お金がかかるという批判がありました。さらに、同じ党で複数の候補者が出るため、党内競争が起こり、派閥政治の元になるという側面もあったのです。

 こうして、お金のかかる選挙からかけない選挙へ、派閥政治から政党政治へ、という二つの流れで小選挙区制度が実現されました。

 しかし、これまでや今回の結果を見ても分かるように、選挙で政策を選ぶことが非常に難しくなりました。読者の皆さんも、例えば医療政策について選べたかどうか、考えてみてください。地域包括ケア、医師の数、医師・看護師不足、診療報酬など、医療には様々な論点がありますが、今回の選挙では全く具体論が上がらなかったし、ニュースにもなっていなかったと思います。それらを選べなかったということです。

 争点が一つなら政党は二つで済むかもしれませんが、争点が二つになれば政策で選択するためには政党数は四つ、争点が三つなら政党数は八つ必要ということになります。

 今回も12もの政党が乱立し、一部の立候補予定者は少しでも有利な所属政党をめざして、移動を繰り広げていました。小選挙区制度では「5%の浮動票」をめぐる壮絶なバトルが展開され、一歩間違えればポピュリズムです。

 「浮動票」をめざして、政治家はその時々のトピックに飛びつくようになってしまい、俯瞰した視点で日本に必要な政策を考えにくくなります。結果として例えば外交問題など、国にとって必要な政策が疎かにされる危険性があります。日本が国際社会で生きていくには、外交力を鍛えることが必須であり、最近のアメリカや中国、東南アジアなどとの関係を見ていても、日本は力不足です。広い視野を持ち腹の据わった政治家が育ちにくい小選挙区制は、日本の国益を損なっているとも言えるのです。

無意味な慣習やめる

 こうした問題の解決には、中選挙区制の方が適していると思っています。お金がかかり過ぎるなら、お金の使い方に制限をかければよいのであって、選挙区を狭くする必要はありません。

 現在の選挙のやり方には、たくさんの無駄があります。政策も語らず、名前と年齢だけ言って走り回る街宣車もそうだと思います。以前なぜ街宣車が必要なのかと訊いたら、「梅村聡が元気だと伝わればいい」という答えが返ってきました。意味があるのでしょうか。

 また、選挙期間中はインターネット上でホームページ等の更新を行えなくなります。選挙運動では証紙のついたチラシしか配布できないのですが、ホームページの更新は証紙の付いていないチラシを何枚も配布することと同じだと言うのです。おまけにチラシを新聞折り込みで配布するのはよいけど、ポスティングは駄目。理由はよく分かりません。このように、選挙には、おかしな慣習や理屈がたくさんあります。

 本当に政策を選べるようにするには、候補者を1カ所に集めて、「このテーマについてどう思うか」と質問し、やり取りをインターネットでいつでも見られるようにするとよいと思います。テレビでの討論だと後から検証できないので、インターネットの方がよいでしょう。それなら、そんなにお金はかかりません。

 日本には「政治と宗教お断り」という文化があります。しかし、今回の選挙期間中、新聞に「政党や知名度ではなく、人柄や能力などで選ぼう」といった投書が掲載されていました。政治や選挙に関心を持つ国民が増えてきたと思います。このタイミングに合わせて、政治側が選挙制度やルールを変えていけるかどうかだと思っています。中選挙区制度を実現するための国会議員連盟もありますから、少しずつ動いていくと思います。

コストと時間が必要

 今回の政権交代を見ながら、一体この国はどうなるのかと思われる方も多いと思いますが、そもそも民主主義は、コストと時間がかかるものです。民主主義で実現できないこともあれば、絶望することもあります。そういうことも含めて、独裁政治や軍政より民主主義がよいというのが先人たちの知恵のはずです。一度やってみて駄目だったら失敗したと思うのではなく、その都度考えて、修正して、改善する。そのプロセスの積み上げが大事だと思います。

 市民がもっと政治に関心を持ち、生活の中で自然に政治集会やデモになじみ、普段から政治について考える姿勢を養っていける社会にしたいものです。

 政治家自身も、自分の考える政策や日頃の成果を、雑誌に連載するなどして、きちんと知らせていくことが大切です。そうできる政治家でなければ、国民側からも選ぶことが難しいと思うのです。

 今回の選挙から見えてきたものは何だったのか、読者の皆さんにもそれぞれ考えていただき、今後の政治に注目していただければと思います。

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