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梅村聡の目㉙ 政治は携帯電話と同じ 便利に使ってほしい

皆さん、携帯電話の仕組み、人に説明できますか? ほとんどの人はできないと思いますけれども、説明できないからといって携帯電話を使わないなんてことないですよね。政治も、携帯電話と同様に皆さんがよりよい社会を生きるため使う道具なので、使わないのは勿体ないです。

 これは、とある小規模な市民集会に参加して、言っておく必要を感じたことです。

 5月26日午後、前回ご説明した大阪・中之島公会堂での2回目の大集会を終えた私は、新大阪駅近くの会議スペースにお邪魔しました。

 国会議員をもっと知ろうという趣旨の集会で、私の他にもう1人、公明党の衆院議員が参加していました。市民側の参加者は20~50代、公務員、サラリーマン、経営者、学生など、職業や年齢もバラバラの11人。

 そんな少人数を相手に国会議員が2人も? と驚いたかもしれませんが、この連載で何度も書いてきたように、真っ当な政治家は市民と対話したいと思っています。ぜひ気軽に、政治家に声を掛けてみていただきたいと思います。

 主催者の一人は元々の知人。彼女が友人と政治の話をしていた時に「ここで政治家の文句を言っていても始まらない、直接話そう!」と私を思いついたそうで、その場から直接メールしてきました。

政治家は使うもの

 集会は、一般参加者の自己紹介から始まりました。

 そこで皆さんが口々に「これまで政治に関心がないまま生きてきた」「全く考えてこなかった」などと反省するように言うことが、政治を特別なものと勘違いしているようで、とても気になりました。

 「政治」という言葉を「携帯電話」に置き換えてみたら、どうでしょう。

 携帯電話の中身は私にも分かりません。どういう仕組みで電源が入り、タッチパネルを操作できるのか、メーカーの技術職の方でもなければ、普通は知らないと思います。

 でも1日に何回も電話して、メールして、フェイスブックして、と使いこなしています。それで事足りていますし、罪の意識なんかないはずです。

 なぜ対象が「政治」になった瞬間に、中身を知らないことを罪深く感じてしまうのでしょうか。仕組みを知らなくても、生活を豊かにするために使いこなせれば、当座は十分でありませんか? 単純化すれば、「政治は皆さんがよりよく生きるための道具」であって、仕組みを知るより、使いこなす方がはるかに大事なのです。

 もちろん「政治の仕組みを説明してくれ」と言われたら、私たち政治家の側はいくらでも説明しますが、まずは「使う」ことに参加して習熟してもらった方が面白いと思います。

 とはいえ、普通の生活をしていると、政治家と触れ合う機会はなかなかないかもしれません。結果として、政治家とどう付き合ったらよいのか分からないということなのだろうと思います。

国会へ行こう

 だったら、まずは「国会へ行く」というのは、いかがでしょう。皆さんはハードルを高く感じていると思いますが、私の事務所に連絡していただければご案内できます、という程度の話です。

 特にお勧めなのは、予算委員会の傍聴です。

 礼儀や作法は、静かにさえしていれば、そんなに気にしなくて構いません。「お茶席」に1回試しに行って、お抹茶飲んで、お饅頭を食べて、してから礼儀作法を覚えても充分なことと同じです。

 もし寝ている議員がいたら、国会議事堂を出た後に、ツイッターやフェイスブックで「〇〇議員、爆睡」と投稿すれば良いと思います。国会議員に緊張感のないことが、最大の問題なのですから。

 今、日本で既得権を持っているのは、なんだかんだ言って国会議員です。一度党の候補者になったら、不祥事を起こすか、定年を超えて活動できなくなるか、落選を繰り返してアウトと言われない限りはその党の候補者であり続けます。

 で、緊張感のない議員は、投票率の低い方が身内の票で勝てるので、できるだけ一般の皆さんが関心を持たないように持たないように行動します。投票率100%になったら、お尻に火が着いて、みんな大騒ぎします。

 僕が関わったある選挙で、内部向け資料に「民主党は逆風だから、浮動票を狙わずに固定票を固めよう」と書いてあって、怒ったことがあります。逆風の時こそ、身内だけ固めるのではなく、関心のない人の所へ行って「うちピンチなんだけど来ませんか」と新規顧客を呼ばないといけません。新規顧客を呼べないような店は、常連が去ったら終わりです。でも今の国会議員は浮動票を恐れています。緊張感を持って、新規顧客の開拓にチャレンジできるようにならないといけないと思います。

 新規顧客と言えば、投票率の低い若者層に、いかに働きかけるかです。よく若者が政治に無関心だと言われますが、私はそうは思いません。ちょっと話してみると、想像している以上に政治に興味があることが分かります。

 彼らの悩みは、自分たちに関心を持ってもらえていないという、社会からの疎外感です。若者を次世代の担い手として育てていこうという視点が抜け落ちていることを、敏感に察知しているのです。だから、「あなたたちに関心を持っているよ」というメッセージを出すだけで、全然違います。若者世代に実利を回すという以前の話です。だから私は、若者を集めた「学生隊」をつくり、彼らと行動しようと思っています。

 集会では、みっちり2時間、意見交換することができました。数日後、参加者の一人の方がインターネット上の交流サイトで「国会って一般人も中に入れるんだよ! 霞が関ツアーを一緒にしてくれる方募集中!」と書いているのを見て、とても嬉しくなりました。

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