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がん医療を拓く⑭ 難治にさせる理由 探して遺伝子解析

 同じ部位にできたがんでも、再発や転移に至る場合と至らない場合があり、前者では予後が大変厳しくなります。この両者は遺伝子レベルで何が違うのかを探る「難治がんプロジェクト」が、がん研究会で進行中です。

106-2.4.jpg 有効な治療法のないがんや、進行していて根治的治療を取れないがんは、「難治(性)がん」と呼ばれます。ただし、それは原発部位によって一律に決まるものではなく、どの部位のがんでも、根治か寛解に持ち込めない限り、遅かれ早かれ転移や再発、治療抵抗性などにより「有効な治療法がない」状態、つまり難治がんとなります。転移したり再発したり治療抵抗性が出てきたりするがんは難治だ、と表現することもできます。

106-2.5.jpg この再発や転移のしやすさ、治療抵抗性の獲得しやすさが、遺伝子レベルでの差異によって起きているものだとするなら、その差異を見つけることには大きな意味があります。診断時にそれを見て、予測される進行具合に応じた治療方針や観察間隔を設定することができ、結果として予後も違ってくることでしょう。差異を標的とした治療薬開発だって夢ではありません。

全エクソンを解析

 この差異を見つけるべく、がん研究会で、様々な難治がんの遺伝子解析を行う「難治がんプロジェクト」が進んでおり、同有明病院の山口俊晴副院長率いるチームでは、主に大腸がんの肝転移症例について2011年から5年計画で解析を進めてきました。

 大腸がんは、肝臓に転移しやすく、さらに肺へも転移しやすいことが知られています。そして、その3カ所はいずれも切除手術を行うことが可能なので、がんの組織が手に入るわけです。

 患者の同意を得て病院で採取・凍結したがん組織(検体)を研究所で遺伝子解析し、出てくる結果と患者プロフィールと照らし合わして解析します。

 現在、集めた検体の「全エクソンの読み取りが終わって、情報解析に入っています」と、研究所がんゲノム研究部の森誠一・主任研究員は説明します。エクソンとは、DNAのうちタンパク質の設計図となる部分で、DNA全体の約1%を占めます。

 「エクソンに変異があれば異常なタンパク質の産生に直結する可能性があります。現在の技術でゲノムをすべて解析するのは時間とお金がかかり過ぎるので、がんにつながる変異を見つけるにはエクソンに絞る方がむしろ効率的と言えます」

 読み取ったエクソンに変異(塩基配列の変化)が起きているかどうかは、東京大学医科学研究所のスーパーコンピューターを利用して調べています。

 その作業が今年度いっぱいかかる見通しで、来年度から、いよいよ転移・再発などに重要な変異の同定に入る予定です。

現代の神器・シーケンサー

 森主任研究員がエクソン読み取りに用いたのが、次世代シーケンサーと呼ばれる装置。
 人類が初めてシーケンサーでヒトゲノム解読に成功したのは、2003年のこと。その時は13年、3000億円が費やされました。しかし、装置の改良が急速に進み、最も高性能の次世代シーケンサーを用いると個人のゲノム解析が数日、数十万円で済むようになっています。さらにあと数年で、1時間、数万円もあれば可能になるとも言われています。
 この次世代シーケンサーがあったからこそ、難治がんプロジェクトが可能になったとも言えます。


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