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今や月経問題は深刻 受診の背中を押そう~大人も知りたい新保健理科⑰

吉田のりまき 薬剤師。科学の本の読み聞かせの会「ほんとほんと」主宰
 昔に比べて、女性が子宮や卵巣の問題を抱えやすく、しかも発見されづらくなっています。非婚化、晩婚化と出産回数の減少が影響しています。

 昔に比べて出産回数が減少しているということは、その分、「月経の回数は増えている」ことを意味しています。月経とは、受精卵を着床させられるよう厚くなった子宮内膜が、妊娠しなかった場合には剥がれ落ちることで起きます。

 妊娠して出産すると、その後2年(1年くらいの場合もあります)月経のない時期があります。もし3年おきに5回出産した人ならば、妊娠期間も含めて3年×5回の15年間月経がなかったことになり、月経が毎月あるものとして計算するならば180回の月経がなかったことになります。2回出産した人でも48回です。

 逆に、出産経験がない女性は、排卵し、子宮の内膜を厚くし、厚くした内膜を身体から押し出すという月経の作業を、その分だけ多く行っていることになります。その回数の増加分だけ、子宮や卵巣に生じる不具合の確率も上がると考えられています。

子宮を休める

 もちろん回数の増加だけが疾患の原因ではないので誤解しないようにしていただきたいのですが、休まることなく月経が続くことで、疾患の症状が重くなり、治療が必要になってくることもあります。

 例えば子宮内膜症といって、内膜に似た組織が子宮の外に出来る疾患です。その膜も月経時に同じように剥離し、出血します。その際に炎症を起こし、痛みます。時には周りの腸とも癒着してしまいます。

 かなりの痛みになるのですが、単に月経が重いだけだと思い込み、しかもキャリアウーマンで日々忙しく痛み止めで辛うじて対処しているような人がいます。本当は子宮内膜症という病気なのに、周りも本人も分かっていないのです。

 子宮以外に出来た膜からの出血が完全に体の外に出ないうちに次の月経がきて、どんどん古い血液が卵巣にたまってしまう疾患もあります。血液の色がチョコレート色に見えることから、チョコレート嚢胞(のうほう)と呼ばれています。

 どちらも昔から存在していた疾患ですが、出産で月経のない期間があれば、その間は子宮外の内膜も出来ず、重症化しないうちにリセットされるので、昔は問題になることも少なかったのではないかと思います。

 現在の医療では、ホルモン剤であるピルを使って偽妊娠状態の月経のない期間を作り出すことで、子宮外の内膜も作られないようにするという治療が行われています。何度も出産していた昔の方と同じような状態にする、と思っていただければよいでしょう。

医療と接点がない

 問題は、そのように良い治療法があったとしても、本人が受診しなければ始まらないということです。

 女性の多くが結婚し、出産し、しかも出産回数が多かった時代の女性は、20代や30代前半のうちに一度は出産のため産婦人科を受診する機会があったことでしょう。月経に不具合を感じていたなら、その際に相談もできました。

 ですが、最近は産科と婦人科が分かれていたり、レディースクリニックという名称になっていたりはするものの、出産経験のない若い女性にとって(産)婦人科受診は、まだまだ敷居の高いものです。その結果、疾患の発見が遅れる、ということになってしまいます。

 加えて受診を勧めるべき周囲の大人までが、「昔はそれくらい我慢してきたのよ」、「毎月毎月生理のたびに寝込んでいてどうするの?」、「リラックスして気分転換するようにすればじきに治るわよ」などと言葉をかけてしまったら、いよいよ受診しなくなってしまいます。治療のタイミングを逃すと、妊娠しづらい体になってしまうこともあります。昔とは状況が違うのだということを理解していただいて、つらそうだなと思ったら受診を勧めてください。

 もちろん、痛みがヒドくても病気でないこともあります。内膜を外に押し出すときに痛みを感じさせるプロスタグランジンが産生され、人によって痛みの感じ方が異なるからです。個人差なのか本当に病気なのか、それは医師に判断してもらうしかありません。

学校教育も内容不足

 学校教育では、高校保健の教科書に避妊法について書かれており、具体的に低用量ピルも掲載されています。学習する高校生も、今の大人たちも、低用量ピル=避妊用という認識が強くあるようです。ですが先ほど説明したように治療に必要になることもあります。なかなかその辺りの偏見が根強く、低用量ピルに限らず、ホルモンに関係する薬全般に抵抗感があるようです。

 10代の学習なので妊娠の仕組みや避妊についての学習がまず大事かとは思いますが、卒業してから女性の健康について学習する機会はなかなかありません。女性のライフスタイルも変わってきているので、女性ホルモンに対する考え方や月経時のトラブルについても学習する機会があればと思います。

 今回は20代、30代の月経トラブルについて書かれた本を紹介します。2015年6月号(ロハス・メディカルのサイトで電子書籍を読めます)で取り上げた書籍にも、女性の各ライフステージで起こりやすい疾患が掲載されていますので、併せてご覧になってください。

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