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点眼は1滴で十分、間隔と順番が大事~大人も知りたい新保健理科㉓

吉田のりまき 薬剤師。科学の本の読み聞かせの会「ほんとほんと」主宰
 先月号に引き続き、今回も眼のお話をします。点眼と目の構造について考えてみましょう。

 医師から1回に1滴だけ点眼すればよいと言われても、2、3滴点眼している方はいらっしゃいませんか。1滴では眼の全体に行き渡らないような気がして、多めに点眼したくなるそうですが、実際はたった1滴で十分なのです。それは、眼が一度に貯留できる量と、1滴の量とを比較すればよく分かります。

結膜に袋がある

 目薬は、簡単に言えば、角膜や結膜という部分を経由して、眼球に吸収されていきます。

 このうち結膜は、名前の通り、瞼と眼球を結ぶ膜です。眼球が動きやすいよう、ピンと張った膜ではなく、緩めになっており、小さな袋状になっている部分があります。結膜嚢と呼ばれます。点眼した目薬は、眼球の前面にある角膜や結膜に広がると共に、この結膜嚢に入り込み、徐々に眼球の奥まで薬が届けられます。

 この結膜嚢はとても小さく、20~30μLしか入りません。一方の目薬は、種類によっても異なりますが、1滴あたりおよそ30~50μLです。そのため、2、3滴点眼してしまうと、明らかに容量オーバーになり、溢れてしまいます。勿体ないですね。

瞬きを何度もしない

 では、その溢れた目薬は、どこへ流れて行くのでしょうか。まずは眼からこぼれて眼の周りの皮膚に付きます。そのままにしておくと、場合によっては皮膚が炎症を起こしたり色素が沈着したりすることがありますので、必ず清潔なガーゼやティッシュでそっと拭き取るようにしてください。

 もし、こぼれなかったとしても、安心していてはいけません。実は鼻涙管から鼻の方に流れていった可能性があります。この場合、鼻から喉の奥を通っていくため、大袈裟な言い方ですが、目薬を飲んでしまうことになります。そうなると、薬が全身に回り、全身に作用することになり、良からぬ影響が出る可能性もあります。

 特に、緑内障の治療では、交感神経β受容体遮断薬(β遮断薬と書かれていることもあります)と呼ばれるカテゴリーの点眼薬があり、注意が必要です。成分は異なりますが、β受容体遮断薬は内服薬としても使われており、心臓や気道に影響する恐れがあるのです。

 点眼薬が鼻涙管に流れないようにするには、点眼後、静かに眼を閉じ、目頭をそっと1分ほど押さえておきます。その時、何度も瞬きをしないことが重要です。瞬きをすることで眼の表面を洗ったり潤したりしているので、涙が出てきて、薬と一緒に目頭にある鼻涙管の方へ流れてしまうからです。簡単なことなので、ぜひ心がけてください。

複数なら間隔は5分

 それでは2種類の点眼をする場合、どうすればよいのでしょうか。医師や薬剤師から、「1つを点眼してから5分空け、それからもう1つを点眼してください」と言われていませんか? 必ずそうしましょう。

 前述の結膜嚢のことを思い出してください。小さな袋ですね。そこに続けて2種類を入れたら、最初の目薬が後の目薬によって追い出されてしまいます。結膜嚢から眼球に薬が移行していくためには、ある程度時間がかかり、結膜嚢の涙液が完全に置き換わるには5 分くらい必要なことが分かっています。

 さて、その5分ですが、どれくらいでしょうか。一般社団法人 日本眼科剤協会のサイトに「点眼間隔の5分ってどのくらい?」というページがあります。ぜひご活用ください。私自身、何もしないで5分待つのはつらかったのですが、このサイトを知ってから鼻歌を1曲歌うことにしています。

順番は液性に合わせて

 最近の目薬には、色々なタイプの液性があります。水溶性、油性、懸濁性(溶けてはいないが水溶性の液に混じっている)、さらに点眼時は液で点眼後にゲル化するという物まで登場しています。ゲル化することで薬の成分が留まる時間を長くし、持続効果を狙っています。

 これらが複数処方された場合、点眼順が重要になってきます。大抵は医師が順番を指導してくれますので、必ず受診時にお尋ねください。後で薬剤師に訊けばよいと思っている方もいらっしゃいますが、薬剤師は薬の液性に基づいた適切な順はお話できますが、診察をしていないため、患者さんにとって最優先で改善すべき症状が何かを適切に判断できないことがあります。

 ちなみに、液性に基づいた順番ならば、皆さんも知っておかれるとよいと思います。油の膜が張った所に水を落としても弾かれてしまいますね。また、ゲルでは液の吸収のされ方が変わってくるのも予想できますね。眼でも同じことです。それゆえ、水溶性→懸濁性→油性の順、そしてゲル化する目薬は医師が指示した時間に点眼し、点眼後は充分に時間を空けて他の目薬を使用するというのが一般的です。

 目薬を、内服薬のように気にする必要のないものと思っている方が多いようですが、眼の仕組みや液の状態を知ることで、効果を上げ、副作用を減らすことができます。たった1滴ですが、適正に服用し、眼を大事にしたいものです。

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