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高血圧はいけないの? ~健康情報しらべ隊①

身近な健康話、突き詰めて確かめたことはありますか? 視点を変えると、違う理解につながるかもしれません。
文・堀米香奈子 本誌専任編集委員。米ミシガン大学大学院環境学修士
 「食塩はできるだけ減らした方が体に良い」。そんなの知ってる、と思いますよね。

  食塩の摂り過ぎは、心臓や血管の細胞に悪影響を及ぼすとされ、さらには胃がんや骨粗鬆症、喘息などとの関連も指摘されています。そして何と言っても「塩分過多は高血圧を招く」。今や常識に近い話です。

  実際、世界52カ所万1人を対象とした大規模研究で、尿中のナトリウム排泄量(食塩摂取量と相関します)と血圧を24時間測定した結果、食塩摂取が多いほど血圧上昇は大きい、との結論になりました。

  しかし実は最近まで、食塩の過剰摂取がなぜ血圧を上昇させるのか、詳しい仕組みは分かっていませんでした。

  食塩を過剰に摂取すると、本来ならその主成分であるナトリウムが多く尿に含まれ、体の外に排泄されるよう、腎臓が調節機能を発揮します。ところが、日本人の3~4割では、食塩の過剰摂取によってこの機能が低下してしまうらしいのです。

  ナトリウムが体内に過剰にあると、これを薄めようと水分が引き止められます。血液の量も増えます。血圧は、血管を内側から押す血液の圧力ですから、血圧が上がるのです(ちなみに水をたくさん飲んでも血流量が増え、一時的に血圧は上がります!)。  

 ところで、なぜ「高血圧は良くない」のでしょう?

  歳をとれば上がる

 そもそも食塩とは関係なく、誰でも加齢と共に血圧は徐々に上がっていきます。血管の傷み、つまり動脈硬化が進むからです。

  血管がしなやかでなかったり内部が狭まったりして流れにくくなると、血液が通る際、より大きな圧力がかかるようになります。これで血管がさらに傷むという悪循環です。

  この悪循環を放置すれば、脳の血管が破れたり詰まったりする脳卒中や、血流の悪くなった心臓が壊れてしまう虚血性心疾患、腎臓の毛細血管がダメになって老廃物の排泄が滞る腎不全など、命に関わる事態に加速度的に近づいてしまいます。

  つまり高血圧は、それ自体が血管を傷める悪循環をひき起こすので「良くない」ですし、歳相応以上に血管が傷んだ高リスク状態のサインなので「良くない」のです。

生活習慣病とは

  さて、高血圧は、生活習慣病の一つです。ただし本人に自覚は薄いので、大昔から病気だったということではなくて、医療の進歩に伴って「歳相応以上にリスクが高くなった状態」が分かるようになり、病気扱いされることになったというものです。 

 あくまでも「高リスク状態」なので、一定ラインを超えたら即危険、それ以下なら安心、という性質のものではありません。実際、正常値と異常値の線引き自体も、変更が繰り返されてきました(コラム参照)。

  そのリスクを高めるものの多くは生活習慣です。生活習慣病と呼ぶくらいですから当たり前ですね。 

 ですから、もし高血圧と診断されても、数値を下げることばかりに囚われず、生活習慣全体を見直す良い機会、と捉える方が本質的。高リスク状態という現実をどうしたいか、そのためにどんな方法を選ぶか。医療や薬も、その手段の一つでしかないのです。

  そういう意識を持たないまま、「とりあえず薬はちゃんと飲んでます」(暴飲暴食してるけど)(どんな薬かよく知らないけど)、なんていう人も珍しくないのでは? そうして少しずつ薬の量だけが増えていき、血圧は下がっても別の生活習慣病が進行していたり、副作用によるQOL低下が大きくても薬を飲み続けていたり、ということになりかねません。 

「お任せ」でいいの?

  もちろん、自分で考えるのは「難しそう」「面倒」とか、「考えたくない」といった理由から、医療にすべて「お任せ」にするのも選択肢の一つです。でも、丸投げでなく、どこまでプロに委ねるか、人は意外と日々の生活の中でも判断しているものです。 

 例えば髪型。頻繁に美容院に通う人もいれば、自分で切ったり結んだりして済ませる人もいます。美容師に細かく注文する人もいれば、やはり「お任せ」の人もいます。  家のメンテナンスも同じ。普段の掃除と整理整頓が徹底しているほど良い状態が保てますが、それでも年月と共に汚れたり傷んだりしてきます。掃除や片づけ、修繕ばかりに時間や労力を費やしていられませんし、古くなるほど素人ではどうにもならない事態も増えますから、やはりどこかでプロに頼むことになります。ただ、どの段階でどれだけ任せるのか、判断は人により様々です。

  いずれも個々の価値観や経済力、家庭の事情といった状況に合わせ、時にはプロの力を借りながら、継続的にある程度の状態に収めていく、という点は、生活習慣病への対応と同じです。生活習慣病にしかない判断材料としては、命に関わるかもしれないことや、費用を自分で全額払うのではなく税金など公費でも面倒を見てもらえることぐらいです。

  というわけで、まず生活習慣を見直し、主体的に血圧コントロールに努める道を選択した場合、減塩は身近(簡単とは言いません)な手段の一つです。冒頭の「食塩はできるだけ減らした方が体に良い」の後ろには、こんな理屈が隠れていたんですね。


  さて、せっかく理屈が分かったのに冷や水をかけるようですが、実は「減塩しても血圧が下がらない」人もいます。次回に続きます。

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