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お酒で赤くなる人 骨折しやすい ~それって本当?

アルコールに弱い体質の人は、骨が弱くなりやすいそうです。

専任編集委員 堀米香奈子(米ミシガン大学環境学修士)

 前回に続き、骨が弱くなる話です。「少しの飲酒で顔が赤くなる体質の人は、普段の飲酒習慣に関わらず、骨が弱くなりやすい」と、今年3月、慶應義塾大学整形外科の宮本健史特任准教授たちの研究で明らかになりました。

骨折リスク2.5倍

 「お酒ですぐ顔が赤くなるのは、遺伝的に、アセトアルデヒド分解酵素の活性が欠損しているか、弱まっている人です」と、宮本特任准教授。

 アセトアルデヒドは、胃や小腸で吸収されたアルコールが肝臓で分解されて、最初に生じる物質です。毒性があるため、速やかに無害な物質に分解できないと、顔が赤くなるだけでなく、吐き気や動悸、頭痛、眠気などを起こし、翌日も二日酔いに苦しみます。

 その分解酵素の遺伝子は大まかに3タイプあり、
●正常型:アセトアルデヒドを速やかに分解、酒豪型
●不完全型:ある程度は飲めるけれども顔が赤くなる
●欠損型:ごく少量の飲酒でもつらい思いをする
という具合です。

 今回の研究では、大腿骨近位部(太ももの付け根)骨折を起こした92人と、骨折もなく骨粗鬆症でもない48人に分けてこの遺伝子タイプを調べたところ、不完全型や欠損型は骨折者に多く見られ、骨折リスクは正常型に比べて2.48倍高くなることが明らかになったのです。

 「以前から、大腿骨骨折は家族歴がある、つまり遺伝性があることが知られています。親が大腿骨骨折していると、本人のリスクは家族歴のない人の2.3倍。アルコールに対する体質は、その要素の一つであり、判断材料と考えられるでしょう」と宮本特任准教授は話します。

骨芽細胞が働かない

 ところで前回、「タバコが骨を弱くする」という話をしました。禁煙を妨げるニコチンが、自律神経を刺激して破骨細胞を増やし、骨粗鬆症も助長していたのです。

 アセトアルデヒドも破骨細胞を増やすの? と思ったかもしれません。しかし骨で起きていることは、ニコチンの場合と大きく異なるようです。

 カルシウム貯蔵庫でもある骨の新陳代謝(リモデリング)には、破骨細胞が古い骨を壊す「骨吸収」と、骨芽細胞が血中成分から骨を造り上げる「骨形成」が、バランスを保って繰り返されていく必要があります(2015年5http://lohasmedical.jp/e-backnumber/116/#target/page_no=8号「骨粗鬆症」特集参照)。

 もしも、破骨細胞は正常でも骨芽細胞の働きが低ければ、差し引きで溶け出すカルシウム分が多くなります。結果的には破骨細胞が増え過ぎるのと同じく、骨が弱くなります。

 宮本特任教授たちは以前の研究で、アセトアルデヒド分解酵素を無活性にしたマウスでは、骨芽細胞の働きが滞っていることを発見。今回、人も同じことを確かめたのです。

 なお、骨芽細胞中には、アセトアルデヒドと結びついた過酸化脂質が過剰に溜まっており、そうした骨芽細胞に抗酸化物質を添加したところ、働きが回復しました。

タバコや香料にも

 以上のことから、お酒に弱い人が、無理して飲むのは、骨にも悪いと分かります。ただし、飲酒しなければ大丈夫かと言うとそんなことはなく、実はアセトアルデヒドはアルコ―ルの代謝物として以外にも様々な形で体内に入ってきます。タバコの煙からは高濃度に検出されますし、果実や果物ジュース、野菜、乳製品、パンなどの食品にも含まれています。また、フルーツのような香りがあり、香料として加工食品に使われてもいます。

 ですから、お酒に弱い人は「飲酒習慣に関わらず」、骨が弱くなりやすいことになります。ご注意ください。

 なお、アセトアルデヒド分解酵素が正常型の人でも、一度に大量に飲酒すれば代謝が追いつかず、一時的には骨芽細胞の働きが低下すると考えられます。骨のためにも、飲酒はほどほどが大切ですね。

(コラム)ビタミンEに期待

 アセトアルデヒドによって機能不全を起こした骨芽細胞に添加したら、機能回復効果が見られた抗酸化物質は、ビタミンEです。

 ただし、ビタミンEは破骨細胞を活性化させる可能性があることも、実験で観察されています。
 「いずれにしても摂り過ぎは禁物。日本人はとかく極端に走りがちですが、ビタミンEも、サプリメントなどよりも、ゴマなど食物から摂取するのが安心でしょう」と宮本特任教授は念を押します。

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