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人生を豊かにするための歯科医療をめざす。--山本雅通歯科医師の流儀 ~ハート・リング通信㊹

ハート・リング運動専務理事 早田雅美
 東京・神田で、お父様より継いだ歯科診療所の院長をしている山本雅通歯科医師のお話を伺う機会がありました。タレントの福山雅治さんに似た長身クール。「患者さんを家族と考えよう」を基本方針にしていて、いつも笑い声の聞こえる歯科医院としても話題だそうです。

 10年以上定期的に通ってくださっていたご夫婦がいらっしゃいました。気風のよい江戸っ子といった感じのご主人と、大変に仲の良い奥様。その奥様の姿をしばらく見ないなと思ったら、認知症になって施設に入所されたとのこと。施設入所後は専門的な口腔ケアをほとんど受けていないとお聞きしたので、ぜひお連れください、と言いました。

 久しぶりにお会いした奥様は、はじめのうち、いくらお願いしても口を開けていただけません。しかし、昔のことなど様々に話題を変えて話しかけたり、好きな童謡をスタッフと歌ったりしているうち、いつしか表情は和らぐようになって、入れ歯の治療だけでなく、保存できない歯の抜歯や、永くおいしく食事をしていただくための口腔ケアを続けたりできるようになりました。

 認知症は治せませんが、口腔ケアを続けるうち、次第にお顔の表情が若返ってきて、おいしく好きな食事を摂れる力を回復され、ご主人やご家族の皆さんも喜ばれていました。

 噛むことは、認知機能や歩くスピード、ひいては健康寿命を長くする効果があると言われています。ある高齢者施設では、歯科の先生が積極的に口腔ケアに介入した結果、風邪をひくお年寄りが減りました。

 脳梗塞などに代表される様々な疾病でも、介護を受ける立場になられた方に、専門的な口腔ケアを怠らずに続けることで、食を通じて生きる意欲や喜びを復活されるケースも多数見ています。口の機能が不完全だと、人はついつい炭水化物や甘いものを口に運ぼうとします。歯が悪くなるとつい食べさせやすい柔らかい食事へ誘導されてしまうことが多いように思います。噛む、飲み込むなどの能力を専門的に評価したうえで、肉や野菜などをしっかり噛み合っている奥歯で咀嚼することが、全身の健康維持にとって非常に重要なのです。

 人の尊厳とは、究極に突き詰めれば最後まで自分の口で好きなものをおいしく食べ続けられることだと考えています。

 「食べられるようになった人の元気回復」。この部分で、私をはじめ歯科医師はもっと多くの人の人生に元気を与えて差し上げられると確信しています。

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