周産期・救急懇談会2(ハイライト)

投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2008年11月20日 20:59

こんなにたくさんの委員が資料を出した会が今までにあっただろうか。
座長を除く12人がそれぞれ提出して
その他に参考人3人も当然ながら資料を提出している。


いろいろな地域でいろいろな立場の人が様々に工夫していることが
よく分かって大変勉強になったのと
こんなに現場が多様な以上
厚生労働省にできることは、何か一律の基準を押しつけることではなく
それぞれの努力を支えることしかないんじゃないかと改めて思った。


非常に盛りだくさんで、すぐに逐語報告というわけにはいかないので
(前回の分も溜まっているし)
とりあえずハイライト。


(その1)
田村
「今回、大臣が一般救急体制のない総合周産期母子医療センターは廃止するまではないにしても、センターを名乗る資格がないというようなことを発言したやにマスコミ報道されたので、ぜひここで確認したい。長野県のセンターは子供病院に併設されたもので、NICU車が全県飛んで歩いて場合によったら病院に連れ帰ってくるという取り組みで搬送をコントロールしている。また県内の周産期医療関係者、助産師や看護師などの教育の中心的役割を果たしており、さらには退院できない子供のために慢性養育施設まで作って取り組んだりして、10年連続で新生児死亡率が全国平均より低かったのは長野県だけということで、新生児救急を全国トップレベルまで持って行っている。母体の救急はたしかにないけれど、そのように大事な役割を果たしているセンターもあるのだということを、しっかり認識していただきたい」


ちょうど直後、海野委員が産科婦人科学会・救急医学会の合同提言を説明している時に、大臣登場。しばらく議論を聴いていた後で
「昨日、墨東と杏林2件のご主人と会った。その時に色々言ったんだけれど、今日の話との絡みで言うと、本当に病態判断できるのかというのが問題になってくるんだろう。今あるセンターを潰せと言っているのではないけれど、大学病院だったら全部揃っているという時に、国民の視点から見てラストリゾートとしては救急もあるのが当然でないか。そのために現状で改善できることはないのか。沖縄子供病院に行った時には、彼らは一切拒否しないんだと言っていた。しかし、そのためにはNICUのストックが必要だというような提案もされた。保育器が足りなくなったから持ってきてくれる、そんなことにならないか、と。この辺り、どうなんだろうか。あえて今発言したのは、昨日の私の発言が誤解されているといかんと思ったから」


しばらく議論が別の話題に行った後、海野
「機能分離といった時に大臣の発言にもあったが、実は総合周産期母子医療センターといっても色々な役割を持っているところがあって、それぞれ違っている。その中で母体救命については機能明示がされてこなかった。今後は都道府県のシステムの中で明示して、そのように動けるようにするということなんだろう。それと同時に、一次のところで、この患者さんは待てるのか待てないのか見極めることが本当に大事で、そのための研修体制も今後よりよいものにしていくためにはどうしても必要だろう」


(その2)
岡井
「情報について周産期と救急とを統合するという方向性に異論はあるか」


田村
「情報を統合することには異論がない。しかし、その情報を都道府県単位に留めておくのはやめていただきたい。先ほど青森県はうまく言っているという話だったが、その背景には新生児科が4人しかいなくて、しかも部長以外はNICU経験が1年未満という、そんなことだから網塚先生(部長)は月の半分以上泊り込んでいる。そんなギリギリの状態でやっているところをそのままにして、全て受けると簡単に言われると大変なことになる。少なくとも総合周産期母子医療センターについては国から補助金が出ているのだから、都道府県ではなくて国民全体に責任を負うべきだ。前回も言ったように、東京都の情報が東京都だけでしか見られないのではなく、少なくとも道州制の範囲程度では見られるようにしてほしい。ある意味、東京があるから埼玉の周産期医療は発達してこなかった。行政が安心してしまっていた。もし周辺の県の患者が締め出されることになれば、東京は守られることになるのかもしれないが、周辺はボロボロになる」


岡井
「地域完結がベストだが、それが無理で強行すると成績が悪くなるというなら元も子もない話。ダブルセットアップで地域完結をめざしつつ、広域連携も考えるということになるのでないか」


海野
「救急医療のネットワークは広域じゃない。単純に一緒にできるか」


有賀
「つまり、救急が全県一区で運営されているところは、まだ全国の半分くらいしかない。残りは各消防本部単位だ。厚生労働省から調査をかけると、都道府県を通じて尋ねることになるから、あたかも全県一区でやれているように見えてしまうが、総務省から調査をかければ各消防本部こんなに正直に言ってくる。全県一区で周産期と救急を合同でできるのは大きな都市だけだろう。小さな都市は違う」


岡井
「地方の特性に応じていく必要があるということか。しかし、ここは全体のグランドデザインを描くところだから」


必要なことから出発しないで
検討会がグランドデザインを描くところ全国一律のことをやる
というのは本末転倒だ。


大臣以下の厚労省と事務局、その意を受けた座長が
何か打ち出さないといけないと強迫観念に囚われているのだとしたら
大変危険なことで、むしろ以下の方がよほど大事だと思う。


阿真
「正直申し上げて、先生方はお母さんたちがどれ位不安に感じているかご存じなのかと思いながら、議論を伺ってきた。多くのお母さんたちが不安を感じている。今までだったら私の所になんか連絡を取ってこないような一般のお母さんたちがどんどん不安を訴えてきている。ただ、不安を不安として終わらせるのでなく、医療が大事なものなんだと気づいてもらう大きなチャンスだとも思う。その意味で、私達に何ができるのかということを考えてきた。今日は発言できなかったが、次回ぜひお時間をいただきたい」


次回に期待。
(了)

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コメント

>厚生労働省にできることは、何か一律の基準を押しつけることではなく
それぞれの努力を支えることしかないんじゃないかと改めて思った。

仰るとおりでしょうね。
多くの関係者がそれぞれ現場で工夫して地元のニーズに応えている、その知恵と工夫と努力の現実をまずは謙虚に聞くという姿勢が重要なのでしょう。

報告の続きを期待しています。

>KHPN先生
これから徐々に復元作業をしていきます。

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