ワクチンの安全性も気になるけれど・・・

投稿者: | 投稿日時: 2009年11月01日 00:45

ようやく11月に入り、妊婦の新型インフルエンザワクチン接種の予定時期が近づいてきました。もちろん受ける気でいますが、このところその安全性について気になる報道も出てきています。

●【新型インフル】妊婦は注意、接種ワクチンに保存剤含む場合も
(2009年10月30日 産経新聞)

●厚労省、新生児の先天異常を調査 妊婦のワクチン接種開始で
(2009年10月31日 47NEWS(共同通信))


ただ、今一番ため息が出るのは、そのことだけではないのです・・・。

と、まずはその「ため息」については後に回すとして、安全性の問題について。


上記3つのうち前の2つの報道はどちらも妊婦へのワクチンの影響について言及していますが、両者の意味合いはまったく異なります。前者は初期に出回るワクチンがバイアルと呼ばれる容器に入っていて、1回使い切りでないために保存剤が含まれていることの懸念を指摘しており、後者はワクチンそのものが胎児に与える影響について今後調査を進めるという厚労省の方針を報じたものです。


私自身も長男のときは年末出産予定だったので季節性のインフルエンザを受けていますし、周囲の妊婦さんたちも皆そうでしたので、今回もとくに抵抗なく季節性インフルのワクチンを接種してきました。もちろん、以前もこのブログで、一部にはワクチン接種の必要性自体に疑問をもっている専門家の存在もご紹介しましたし、基本的に必要以上にインフルエンザそのものを恐れる必要はないのかな、と思っています(子供の急速な重篤化以外は)。それでも何らかの事故にあう可能性よりも、何事もなくインフルエンザを予防できるメリットのほうが今の私には大きいと判断したのです。それと同様に、今回の新型インフルエンザワクチンについても、大きな不安感はありません。素人考えでも、季節性インフルエンザのワクチンと比べて、ものすごく大きな違いがありそうには思えないからです。


というわけで、後者の報道については、やっていただくことはぜひやっていただきたいのですが、その結果が出るまで接種しないなどというわけにもいかず、気の長い話だなあ、などとのんきに思ってしまうのでした。ただ、それにしても、いまさらそんなことを言い出す厚労省も厚労省だなあ、とも・・・。調べてみると、10月18日に開催された薬事・食品衛生審議会安全対策調査会で、ワクチンの添付文書(接種上の注意)の改訂が決定されたようです。

●改訂前:
6.妊婦、産婦、授乳婦等への接種
妊娠中の接種に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には接種しないことを原則とし、予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種すること。

●改訂後:
6.妊婦、産婦、授乳婦等への接種
妊娠中の接種に関する安全性は確立していないので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には予防接種上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ接種すること。なお、小規模ながら、接種により先天異常の発生率は自然発生率より高くならないとする報告がある。


つまり、「接種しないことを原則とし、」を削除して、「なお、小規模ながら、接種により先天異常の発生率は自然発生率より高くならないとする報告がある。」を付け加えたんですね。しかしそれでもなお、調査が不十分なために「妊娠中の接種の安全性は確立していない」との表現は残し、今回の調査に乗り出すことにした、ということらしいです。妊婦も接種するよう積極的に奨励し、優先接種順位を第2位にもってくることを早々に決定した後で、あわてて形を整えようとしているような感じで、なんだか苦笑してしまうのでした。確かに感染症というのは突然に降って湧いたように出てきてバッっと広まるものなので、そういったことが事後的になるのは致し方ないものなんですが、インフルエンザに関しては別に目新しい病気ではないのですけれどね・・・。


さてそれに対し、保存剤の話はかなりひっかかっています。厚労省のホームページでも10月29日に改めて「妊娠されている方へ」という資料が発表され、その中でもチメロサールの入っていないワクチンの接種の段取りが説明されています。その中にもやはり11月中旬になる、しかも産科・婦人科のみで、母子手帳の提示が必要と書かれています。たしかにもともと妊婦は11月中旬とは言われていました。しかしそもそも9月18日の時点で厚労省は、このチメロサール入りのワクチンについて見解を出しており、「妊婦に対しては、保存剤を使用しない製剤(北里研究所の0.5mLシリンジ製剤)を選択できるよう、供給体制を整備するとともに情報提供を行う」としています。しかも妊婦の接種順位がかなりの上位にくることは、当時からすでに議論が進んでいたはずです。ところがその後9月末になって、効率の観点から生産量の半分を10mlバイアルでの供給とする方針を決定してしまいました。それによって、早期に出回るワクチンは10mlバイアルばかり、となってしまった、ということでしょうか・・・?


しかしすでに、妊婦への前倒し接種を決めた県も続々出てきています。実際、とある地方に住む妊娠中の友人も、さっそく予約を入れた、と言っていました。そうしたぎりぎりの時期になって、「11月中旬になれば保存剤が入っていないワクチンが手に入ります」と言い出すのもどういうものか、と思わずにいられないのです。さほど問題ないなら(だろうなあ、くらいに思っているのですが、どうなのでしょうか)、いっそ「とくに問題ないです」と言ってしまってくれればいいのに、と。それが「保存剤が入っていないものも手に入るようになりますよ」と言われれば、「じゃ、そっちのほうがきっと言いに違いない」「入っていたらやっぱりまずいんじゃないか」と考えるに決まっています。実際のところどの程度キケンなのかはわからないのですが・・・。


ところで、冒頭の3つ目にあげた感染者からの献血でできた血液製剤の問題ですが、これについては以前もブログで輸血血液の不活化についてちょこっと取り上げたのですが、公的には相変わらず何も動きはないのでしょうか。感染が見つかって回収できた分だけこうして発表されているわけですから、実際にはどれくらいすでに出回っているのか・・・。出産では輸血が必要になることも十分ありえますから、私にとっても無関係でなく(もちろん交通事故など考えれば誰にとっても無関係ではありませんが)、今後ますます気がかりです。


と、つらつらと書き連ねてくるうちにかなりの長文になってしまいました。冒頭で書いた「ため息」については、次回にさらっと持ち越したいと思います。

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コメント

人類初めての体験ですので、現在進行形の妊婦さんが次から次へと発表される政策に不安が募るのも当然です。これからデータを集めるということはまさに堀米さんもそのうちの一人。自分がデータとなり後世の役に立つ(僕の前に道はない。僕の後に道はできる・・・)といえば格好は良いけれど。生まれてきた赤ちゃんに、将来いろいろな話ができますね。「あなたの妊娠中に新型インフルエンザが流行って大変だったのよ・・・」と。元気な赤ちゃん誕生を、このブログ読者みんながお祈りしています。

生涯いち医師さま

激励をありがとうございます。妊婦になると、自覚している以上にものの見方や感じ方が違ってくるものですね。そうでないときにはもっと楽観的だったりするものが、必要以上に気になったり不安になったり。ふと冷静になって、そんな自分に我ながらあきれつつ、このブログでは正直な気持ちを書かせていただいています。もしかしたら私と同様かあるいはそれ以上に、右へ左へ定まらないお上の議論や発表、報道に、たびごとに反応し一喜一憂している人たちもいるかもしれない、なんて思いつつ・・・。おそらくはそんなふうに一喜一憂する必要はないのでしょうが、国民をそういう気分に陥れてしまっている時点で、何かがおかしいな、と思うのです。

なんて、また考えすぎなのかもしれませんね。でも、アドバイスいただいたとおり、こうしたことも含めて、いつか生まれてきた子供に話してみたいな、と思います。

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