検診率向上は、一筋縄ではいかないですよね。

投稿者: | 投稿日時: 2009年11月14日 02:12

ちょっと前になりますが、こんな報道があり、気になっていました。

●がん検診、受診率3~4割台と低迷…内閣府調査
(2009年10月31日 読売新聞)


今日、日本人男性の2人に1人、女性でも3人1人が、一生のうちにがんにかかるといわれます。それでもがん検診の受診率は半分にも満たないのですね。しかし自分のことを考えてみても、そろそろ危険な年齢に差し掛かっているにもかかわらず、毎年積極的に各種がん検診を受けようとまでは考えていないのが本当のところ。反省しつつも自分なりに理由など、いろいろ考えてしまいました。

まず上記の報道を振り返ると、がん検診の重要性は97.4%もの人が認識しています。にもかかわらず、「たまたま受けていない」「いつでも医療機関を受診できるから」「必要性を感じないから」といった理由で、未受診となっている人が6~7割にも上るというのです。


ためしにほかの資料もないかあたってみると、

●「がん検診受けたことない」女性は66%、理由は「タイミングが分からない」から(2009年11月2日 日経ウーマン)

そして数年前の調査ですが、
●東京都のがん予防・がん検診の現状
(2007年 東京都がん対策推進協議会)

といったものが見つかりました。


これらの資料でも、検診を受けない理由としては、「検診を受けるタイミングがわからない」「今のところ体に異常がみられず必要性を感じない(毎年はとくに不要)」「お金がかかる(補助対象者となっていない)」「時間がない(仕事がやすめない)」「どこで受診すればいいか分からない」といった理由が上位を占めています。


私は個人的に、「タイミング」そして「費用」の理由が自分にも特にあてはまると感じました。それともちろん、「必要性」の実感がやはり薄いことは認めざるを得ません。必要性について、頭でわかっていても実際にはわかっていない、心から実感できていないからこそ、ずるずると受けないままにいままできてしまったのだし(=タイミング云々)、費用を惜しんでしまう。もし検診でがんが早期に発見された場合のメリットはそんな費用とは比べ物にならないはず、逆に検診を受けなかったがために発見が遅れて後悔する度合いも、その費用どころではないはずなのに・・・。


しかしそんな私でも、つい先日、子宮がん検診を受けました。妊娠したこともありましたが、ちょうど区から検診の無料クーポンはがきが届いていたのです。実は2年前の前回は、受けないと、と思いながらも長男出産と仕事再開で実家に超長期にわたる里帰りをしていたため、住民票とは別のところに住んでいる状態で、結局受けることができませんでした。それについてはかなり「しまった」と思っていたので、今回は早速利用しました。


上記東京都の調査にもありますし、周囲の話を聞いてもそうですが、実際のところがん検診を受けるきっかけとなるのは、市区町村や職場による実施か、もしくはその費用助成ではないでしょうか。これは本来、好ましいことではない、とは思います。結局、誰かがお金を出してくれるから受けに行ってもいいかな、というくらいのもの、自分のためのはずなのにとても無責任な話です。それでも高齢社会から超高齢社会となっていくにあたり、医療費削減には早期発見、早期治療は社会全体にとっても重要なこと。だったらこうした公的あるいは職場での検診が充実してくれるのは、悪くないなと思うのです。問題はその自治体や企業の財政ということでしょうか・・・。


ただ、あとは「時間がない」「仕事がある」という問題をどうクリアするか、というのもありますよね。実際、公的ながん検診は集団検診スタイルというより、医療機関に委託されている場合が多いかと思います。しかしたいていの医療機関は日中の昼間に検診を行いますし、待ち時間等を含め所要時間も決して少なくありません。働き盛りの年代は、ちょうど、がんにかかる率が高まってくる年齢で、しかもまだ若さもあってがんの進行は早く、より早期発見が重要になる年代でもあります。しかし時間を融通できない職種や多忙の人も多いわけですから、検診を受けやすくする工夫がほしいところです。実際、自己負担の検診を行っている医療機関では、夜間も受付・実施するなど、患者を集める策を練っているという例もよく聞きます。


とはいえ、検診を受けやすくする工夫を医療機関側の対応に求めるのも、公的な助成による検診となればおかしな話です。仕事のために時間がつくれない、といっても、がんになれば仕事もできなくなるかもしれません。発見が遅れればなおのことです。それを思えばやっぱり後悔先に立たず。時間を意識してつくるしかないのかもしれません。ということで話がもとにもどってきてしまいましたが、「必要性」を各自がいかに実感するかが大事ということになるんでしょうね。そのために行政は、たとえば大腸がん検診アピールのために「Tokyo健康ウォーク」などといったキャンペーンを行ったりしています。先日は1800名が集まったとのこと。しかし、そうした報道さえ日々の多くの事件等にかき消されがちで、知名度や、なにより実効性は私から見てもかなり疑問です。実際、先にも知名度の高いピンクリボンキャンペーンでさえ、検診率上昇につながっていない、ということが発表されました。ただ単に存在が知られれば受ける人が増えるというものではないんですね。


というわけで、検診率の上昇はなかなか手ごわい課題といえそうです。・・・なんて他人事みたいに言っていますが、私もだんだんにきちんと受診を考えていかねばいけません。最低でも、子供が大きくなるまではなんとかがんばらないといけませんから、ね。

<<前の記事:たばこ税 やっぱりぐんと上げてほしいな、と。    特許切れ薬もっと安く コメント欄:次の記事>>

コメント

がん検診以前にすべきこと;禁煙、B型肝炎抗原抗体・C型肝炎抗体検査、B型肝炎ワクチン、HPVワクチン(性的活動年齢に達する前の女性)
がん検診の項目;40歳以上;胃癌(上部消化管内視鏡)
        50歳以上;大腸癌(便潜血、大腸内視鏡)
        50歳以上の男性;前立腺癌(PSA)(高齢者の適応は本人と話し合って慎重に決める)
        性的活動のあるすべての女性;子宮頸癌(PAPスメア)
        40歳以上の女性;乳癌
残念ながら、がん検診の意味のない癌がほとんどであること、腫瘍マーカーは、前立腺癌(PSA)と慢性肝炎のある人の肝細胞癌(AFP)のふたつ以外は検診には無効であること、など、がん検診の限界も啓蒙することも必要です。       
  

私は医師会で、胸部レントゲンの読影と上部消化管読影のお手伝いをしています。当地域では参加者が比較的良好で、毎月1,000~2,000名のレントゲンが集まります。
啓蒙も大切なのですが、アクセスの問題は重要で、一昨年までは「誕生日の月」に受信券が送られわかりやすかったのですが、メタボ検診の前後何ヶ月とか、集計するために年末までとか、これに合わせるために期間限定になってしまったために受診者が減少しているように見受けられます。

また、ガン検診に限らず、予算を縮小するためなのか、心電図検査や貧血検査は疑わしい証拠がある者に限られ、内容が縮小される傾向にあります。

将来の望ましい医療・健康を考えれば、保険証を持っていてもいなくても、一年に一回は好きな時に行って、不安がある項目は好きなだけ健康診断を受けられるようにするのが理想でしょう。
(もちろん、回数制限や検査予約、検査内容の考察などは必要でしょうが)

今回のメタボ検診は、IT企業など周辺業者の仕事を増やしただけで、医療のためにも住民のためにもなっていないような気がします。

コメントを投稿


上の画像に表示されているセキュリティコード(6桁の半角数字)を入力してください。