民主党 予防接種小委員会 「あれれ」な報道も・・・

投稿者: | 投稿日時: 2012年04月11日 15:46

昨日、第2衆議院議員会館で「民主党 厚生労働部門 医療・介護ワーキングチーム内 第5回 予防接種法小委員会」が開かれました。

予防接種制度の見直しに向けて、厚労省では予防接種部会が2009年からこれまでに21回開催されています。それとリンクするのがこの与党の小委員会という理解でよさそうです。

ちなみに予防接種制度の様子は以前、このブログで少しだけ報告させていただきました。

この予防接種部会、以前から継続して傍聴を続けている人に言わせると、前回までに出ていなかった論点が突然、厚労省側から提示されることがあったのだとか。それがなぜかという答えが、どうやらこの予防接種法小委員会にあったようです。昨日の小委員会には委員長の仁木博文議員、医療・介護ワーキングチーム座長の柚木道義議員のほか、梅村聡議員や、足立信也議員、福田衣里子議員、その他数名の議員が出席。そこに厚労省からも健康局結核感染症課長の正林氏ほかが同席して、予防接種部会での議論を報告しました。この報告に基づいて、この小委員会での討議が進められ、そこで得た結論や宿題を正林氏らが持ち帰って、調査をしたり、予防接種部会にぶつけたりする、というわけです。


昨日は、以下の点などが話し合われたそうです。


●B型肝炎ワクチン(HBV)を定期接種1類に分類する方向性があるが、すでに母子感染対策は公費で行われ、効果が上がっている。一方、性交渉による感染については、そもそも性交渉のだいたいの開始年齢の頃まで、赤ちゃんの頃に接種したワクチンの効果が持続しているのかが疑問(正林課長によれば「論文が1つしかない」とのことで、急に調査して分かるものでもないので、不明とするしかなさそうです)。


●ワクチンの末端価格を厚労省も把握できていない。把握しているのは、製造メーカーの希望小売価格だけ。実際にいくらで取引されているかは分からない(治療薬ではないので診療報酬制度の世界の外にあるため、把握できない)。卸業者が儲かっているのか、製造メーカーが儲かっているのか。ただ、卸は一般的には生き残りが厳しいのが現状。


●評価・検討組織(日本版ACIP)のありかた、財務、人選について。仁木委員長の理想としては、3条委員会レベルの位置づけに持っていきたいが、予防接種委員会の発展形でいいのではないかという委員も。アメリカのACIPでは決議に拘束力があり、予算がつくが、どうしたらそのようなものにできるか。地方が実施する場合、法定受託金でやるのか、自治事務としてやるのかという問題とも絡む。


昨日は珍しく議員の出席率が普段よりは高かったそうで、その場で与党としての案がまとまるところまでには至らず、次回に持ち越しとなりました。そのあたりはニュースでも報告しています。


ところで、タイトルにも書いたように、この小委の内容を伝える報道を見て「あれれ」と思ってしまいました。

民主小委、定期接種化「できるだけ多く」- 5月上旬にも与党案(2012年4月11日 医療介護CBニュース)


(あれれポイント1)

「WHO(世界保健機関)が推奨しているワクチンは、できるだけ多く対象疾病に組み入れるのが小委員会の総意」と述べ、8種類のワクチンの定期接種化を目指す考えを示した。

・上記のとおり、「HBVは要らないんじゃないか」という議論があったはずです。

・ロタについては、まだきちんと議論されていません(資料によれば、「アメリカ以外では導入(日本で言えば定期接種化)されていない」という話でした)・・・

(あれれポイント2)

予防接種部会では、子宮頸がん予防、ヒブ、小児用肺炎球菌の3種類を定期接種に位置付ける方針を決めているが、ほかの4種類は、財源との兼ね合いもあり不透明な状況。

・予防接種部会では7種類すべて定期接種化という方向性が打ち出されていて、財源に関してはペンディングだったはず。財源がどうのこうのという話は、むしろ小委員会の扱うマターでは?


その他、上にも書いたように評価・検討組織の話が焦点になっていたのですが、まったく触れられていません。(まあ、触れないということは間違っているわけではないですが・・・)


恐らく、小委員会終了後の記者へのブリーフィング(仁木委員長らからの記者への状況説明、レクチャー)に基づいて書いたもので、仁木委員長の願いであり目指すところなのかもしれません。また、国民の健康という利益を考えれば、予防接種は1つでも多く定期接種化されるに越したことはありません。しかし、上記のような内容が「総意」として示されたことはなかったはずです。

また、ポイント2について、まず理解しておく必要があるのが、何のための予防接種部会で、何のための予防接種法小委員会か、ということかと思います。予防接種部会は、厚労省がわざわざ専門家・有識者を集めて開く以上、科学的(医学)、社会的(医療)側面から予防接種法や制度の改正について審議するためにあります。他方、与党が開くこの小委員会は、有識議員が集まって予防接種部会での議論について、政治的側面からのすりあわせを行う場所であるはずです。要するに、財政面の調整などを考慮するところですよね。そう考えると、ポイント2の「あれれ」感が少しお分かりいただけるのではと思うのですが・・・。

いずれにしても、より多くのワクチンが定期接種化されることは、一母親として私も望むところです。そういう意味では、仁木委員長の言うところの「総意」はありがたい話です。ぜひ実現するように願っています。

(4月12日 午後0時40分 情報源に不利益を与える記述があったため、一部を修正しました。修正文責・川口)

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