怒れ!日本国民 |
|
投稿者: 川口恭 | 投稿日時: 2008年07月07日 19:52 |
その2
インターベンション学会の3番目として寺野彰・独協医大学長の発表を紹介するつもりだった。
そのご報告をやめることにして、でもなぜか寺野先生は登場する。
以前チラっと書いた厚労省が日本版FDAみたいなものを作ろうとしている件。
毎度おなじみのCBニュースに上・下に分けて面白い報告がされていたので
今日は、私も傍聴に行ってみたのである。
その座長が寺野先生である。
行かなきゃ良かった、と心から思った。
蒸し風呂のような部屋で2時間のはずが3時間半以上かかって
まあ、それでもちゃんとやっていれば文句はなかったのに
私にも宿題が溜まっているのに
こんなにヒドイ進行をされては、書かないわけにいかないではないか!
本日が4回目。
概算要求の前に当面の中間とりまとめという議事進行。
過去3回を見ておらず、どんな背景があるかよく分からないので
逐一報告は余裕があったらする。
今日のところは、まず、特にヒドイと思った場面のみ再現する。
福田衣里子委員(薬害肝炎原告団)
「P9にファーマコゲノミクスが云々という表現があるけれど、今まで3回で全く議論していないのに、突然出てきて意味が分からない」
堀内龍也委員(日本病院薬剤師会会長)
「薬剤の作用を遺伝学的に検証するもので大切」
寺野座長
「議論していないのに出てきたのはおかしいということは分かる。ただ、今後の課題として書いておくということでご理解いただけないか」
福田
「中間とりまとめに入れなきゃいけない理由があるのか」
清水勝委員(西城病院理事)
「こういう項目があるから人が必要ということで項目が上がっているというのだろう」
水口真寿美委員(弁護士)
「安全対策にどれだけ活用できるかは、これからの検証が必要だろう。ここで無理して入れる必要があるのかと思う。あまりにも楽観的すぎる」
寺野座長
「実際に組織の質量について議論していないのは事実。その点が足りなかったことは反省している。しかし、ではファーマコゲノミクスが不要かというと、専門家は必要だと言っているので」
山口拓洋委員(東大特任准教授)
「細かい議論は確かにしていない。ただ専門的な立場で参加している者として言うならば、欧米では有効に活用されているもので、それについてウソを言っているわけではない」
高橋千代美委員(日本製薬団体連合会安全性委員会委員長)
「遺伝子解析は確かに進んでいる」
友池仁暢委員(国立循環器病センター病院長)
「このことに危惧の念が出たということを議事録にしっかり残しておくべきでないか。遺伝子情報は究極の個人情報とも言われており、何の議論もなしに欧米でやっているから右へ倣えで導入するというわけにはいかない」
寺野
「ここは予算確保のために必要なので」
間宮清委員(サリドマイド福祉センター事務局長)
「私にもファーマコゲノミクスは何のことだか分からない。委員として、ここに座っている以上、判断しなければいけないのだと思う。それが何なのか勉強会をするか説明を受けるかしないと判断できない。山口委員の言うように欧米で有効活用されているのなら、ぜひ、その辺を説明してほしい」
大熊由紀子委員(国際医療福祉大大学院教授=元朝日新聞記者)
「8月に全く検討会を開かないというのは勿体ないから勉強会を開いたり、機構の見学会を開いたりしては」
寺野
「夏休みもあるから、そんなに簡単ではないと思うが、いずれにしてもこういった一つひとつの項目を全部入れなくてよいとすると概算要求の根拠がなくなる」
泉祐子委員(薬害肝炎原告団)
「中間とりまとめに入れるかどうかについては福田委員と同じ意見。勉強会をした後に入れるということを決めるのならいいが、組織を作るにも膨大なお金が必要なはずで、もう少し勉強してからにしたい。私もゲノム検査に関しては欧米に文献なども読んでみたが、欧米でも完全に確立しているわけではなく、いろいろ議論はあるようだ。今回は外していただきたい」
寺野
「別の表現もあるのだろうか」
友池
「薬剤に対する感受性としてはどうか」
堀明子委員(帝京大学講師)
「学問分野の例示なんだと思う。未確立だから入れないという考え方になるのは誤解で、むしろ副作用の出やすい人が事前に分かるなど、患者さんを守れるから遺伝子的なことをやるのだ」
泉
「それは十分分かるし、そういう論文もあった。しかし先生方が分かっていることを今この場にいる全員が分かっているわけではない。だから分かりたい。分かるまでの時間、勉強する時間がないのか。この委員会で今書きこまなければならないことが分からない。意味も分からないのに同意しなければいけないのか」
森嶌昭夫座長代理(日本気候政策センター理事長)が座長に発言の許可も取らずに突然割って入る。以後、勝手に場を仕切る仕切る。座長がいるのに座長代理が勝手をして、一体この検討会はどうなっているのか。
「我々の中間とりまとめの段階の仕事は、いいか悪いかは別にして、再発防止のための行政を実現するのに必要な概算要求のために中間とりまとめをすることだ。泉委員の話は、概算要求をブロックすることになる。検討した結果やる必要がないというのなら、その段階で削除すれば良いので、とりあえず予算要求だけはしておこうという話だ。それをブロックしてまで仰るのか。書くな、書くなと言うと、その項目がなくても概算要求できるならいいが、また概算要求できなくても構わないというのなら結構だが、予算要求できないと困るというのなら出させてはどうか。(中略)ブロックする気がないのだったら、自分たちの言い分が通らない限り絶対に譲歩しないというようなどこかの政党のようなことを仰るのでなければ、今回は認めていただけないか」
立派な恫喝である。
泉
「概算要求ができないのか。ブロックするつもりはない。自分で調べたけれど分からなかったから知りたいということなので、後者の方だ」
これぞ無理が通れば道理が引っ込む。
過去に3回も開いていて
全く議論に出ていないことをとりまとめに書くなという主張のどこがおかしいのか。
説得するならまだしも、恫喝してまで通してしまった座長代理の行動は
ことが税金の使い道だけに犯罪的だと思う。
薬害再発防止の美名のもとに、いったい何をやっているんだ!
(ここから9日に記す)
過去を見ないで言うのは心苦しいのだが
検討会を4回やって、この中間とりまとめになったということは
話をシンプルにすると
薬害の再発防止策を検討 → 予算が必要と(とりあえずの)結論
ということになる。
つまり
予算が足りなかったから薬害が防げなかった という点は一致したということ。
では、何の予算が足りなかったのかの話はしたのだろうか。
どうも第4回の議論を聴いている限り見えてこない。
そもそも審議会・検討会慣れしてない委員たちの間には
「自分たちがダシに使われているのでないか」との警戒感が最初から見え隠れしていた。
まず冒頭に大熊委員が
『はじめに』の文言に「事実に即して」と
『事務局の提案』を論じたと、『事務局の提案』の6文字を挿入するよう主張した。
同様に『はじめに』の文言を、こう直せ、ああ直せと議論百出した時
(冒頭に書いた座長代理の恫喝の前)に高橋医薬食品局長が
「この中間とりまとめは4回分の議論をまとめていただいたもの。全部の文言を入れようとすると膨大になり過ぎてとりまとめにふさわしくない」と述べたのに対して、泉委員がこのように噛みついている。
「たしかに色々と入れると局長の言うとおり格調は高くないかもしれないが、この文章自体、事務局からいいただいたもの。委員会の意見として直せというのなら、反映されるべきでないのか」
その時も森嶌座長代理が突然割り込んできて傍若無人に演説した。どの位、傍若無人だったかというと、演説の途中で舛添厚生労働大臣が遅れて入室してきたのだが、委細構わず演説を続けた。よほど大事な話だったらしい
「この委員会が何のために開かれているかというと『はじめに』の冒頭3行に書かれている。今のところ、たった4回しか開いていない。我々はとりあえず当面予算を出すためのサポートをするのが仕事。たった4回でこの3行全部をすることはできない。これで終わりにしちゃうなら、こんなことで誤魔化されるのはおかしい。しかし今はまず予算編成に間に合うように中間とりまとめをすることが必要で、そのことが今後、再発防止のための1ステップとしての人員増につながり、厚生労働行政改革のための1プッシュになる。検証については秋以降にやる。再発防止のためのあり方を全面的に展開しているわけでない。行政全部の話は年度末までに仕上げることで、今のところは市販後の安全対策にしぼって、逆に言えばそれしかやっていない。そのことを今ハッキリ座長の意向として、『政府や厚生労働省でしっかり』と要望するのではなく、中間とりまとめではこれしかやらないのだから、これからどこまでやるつもりか、最終的に政府・行政に対して踏み込むのか、国民に対して責任を取るつもりか、大臣が抜本的にやると仰っているのだから、我々はこれだけの責任は負います、予算を出してお終いと言うな、それだけのことはやらせろと誓うことこそ、中間とりまとめの役割でないか。(中略)せっかくこれだけの人が集まって議論しているのだから、委員会が責任を持って宣言することこそ必要でないか。ここは300人か2000人か知らないが、まず人を増やすことを優先しよう」
ちなみに冒頭の3行とはこちら。
『本委員会は、薬害肝炎事件の発生及び被害拡大の経過及び原因等の実施について、多方面から検証を行い、再発防止のための医薬品行政の見直し等について提言することを目的として設置された委員会である。』
寺野
「座長の苦労を御理解いただきありがとうございます。中間とりまとめの限界はご理解いただきたい。そうでないと収拾がつかない」
ちなみに、この森嶌発言の中身に対しては、大臣が退席前に「実は自民党のプロジェクトチームからもこの件に関しては提案されている。今後もいろいろな提言がなされるだろう。ただ、ここできちんと議論した結果は重い。政府にこうしなさいという指示でよろしいか、と」と述べている。微妙である。
当初の予定では中間とりまとめの文面を詰めるはずだったのだが、まったくまとまらず最終的に森嶌座長代理が「文章が事務局ではなく私がまとめる。それについて、ここはどうしてもという方は座長に連絡してほしい。それを容れるかどうかは座長に一任いただきたい。文章を座長でなく私がまとめるのは、自然科学者より人文科学者の方がまとめがうまいから。中間とりまとめに関しては、厚労省の立場からするととにかく概算要求のために必要なんであって、それ位のサービスはしてもよかろう、これから秋にかけて色々と要求するのだから」と強引に引き取った。
演説したからには『厚労省改革宣言』に期待しよう。期待が裏切られたら、座長代理が委員を務める審議会・検討会は全部傍聴に行かなきゃ。
<<前の記事:怒れ!千葉県民 インターベンション学会報告(3):次の記事>>
コメント
寺野先生というより、典型的な役所の根回しの失敗(怠慢)でしょうね。
遺伝学的影響が疾病・薬剤効果に大きく影響することは明白ですから、真意を説明しておけば反対は出なかったのではないかとも思います。さもなくば正攻法でちゃんと議論を尽くすかです。
医師・患者関係も同様ですが、コミュニケーションの希薄化が基本問題にあるのではと考えますが、事前調整すらできない役所っていったい何の仕事が出来るの?
という気がします。
全く、官僚とそっくりな予算要求姿勢である。実効性も不明確なまま、自分たちのテリトリーを便乗拡大する機会と捉え、取りあえず概算要求しようなど。
ファーマコゲノミクスはまだまだ基礎研究の段階で、欧米といえども、安全性の評価に取り入れているとは言い過ぎだ。援護者の発言でも、それぞれの主張の内容にズレが見えている。研究は必要だから、医科学研究所なりに予算を充てる工夫をすべきであり、新機構を作るとしても、福田委員が主張するように、確実なところから積み上げることが重要だと思う。
その辺を熟知しているからこそ、財務省は医療費削減を厚労省に強要し、厚労省は唯々諾々とこれに従っているという次第。
これでは本当に予算が必要だと論駁できない。
そもそも国や企業とタメを張れる組織は作れないものなのでしょうかね。
「国に任せるのは危ない」という東大の先生の意見には賛同しますが、一方でバックに企業がついた組織も独立性と言う点では永続性に疑問が残ります。
時には国に対し提言を行い、いざとなれば企業の製品出荷にまでストップをかけられる様な強力で公正な組織の形態は?
いずれにせよ、じっくり議論を尽くしてもらいたいものです。
どう総括したものか、かなり悩みましたが
たとえ医薬品審査、安全対策の強化が必要だとしても
専門家が言っているんだから黙って従いなさいだと
結局、薬害を生んだ構図と変わらないような気もするのです。