「外来縮小」の施策はなんだったのですか。

投稿者: | 投稿日時: 2009年04月16日 13:47

2008年度の診療報酬改定で、病院勤務医の負担を軽減すべく、いろいろ施策がとられたことは頭の片隅に記憶しています。たしか産科ではハイリスクの分娩に加算する措置がとられたような・・・(ほかにもいくつかあったのかもしれませんが、詳しいことはきちんと把握していませんでした)。

今日のニュースでは、そうした施策の効果が、現場の医師にもあまり実感できていないことを示すものでした。


加算した=お金が投じられた、にもかかわらずその効果があまりないなんて・・・。ちょっと聞き逃せないことです。どこに問題があったのか、気になります。そこで今日はこのニュースについて見ていきたいと思います。


まず、2008年の診療報酬改定で一定条件をみたせば加算される項目について以下の3つが加点されたことは、なんとなく記憶にありました。
1.「入院時医学管理加算」
2.「医師事務作業補助体制加算」
3.「ハイリスク分娩管理加算」

3はなんとなく字面からわかりますね。あとの2つをざっくり言えば、1は入院体制の整備に関する加算、2は“医師の事務作業を補助する職員”=メディカルクラークをおくと加算されるというものらしいです。


しかしこの3つとも、結局は条件が厳しすぎたようですね。それによって効果が思ったように現れなかったのでしょうか(当初から言われていたように思いますが・・・)。だったらまた今度、条件を見直せばいいんでは? と単純に考えるのですが、違うんでしょうか。

(一方、加算を受けることになった場合でも、2に関して現場の医師の当惑が伝わってくる「医師事務作業補助者とのバトル」などというコラムも発見しました・・・。これは時間が解決しそうですね。)


しかし、それ以上に私が気になったのは、別の改定ポイントです。

記事で言えば特に、「病院の外来患者を減らすため、診療所の早朝・夜間診療に加算を設け、夜間の救急患者らを診療所に振り向けることを狙った。さらに、地域の中核病院の勤務医の負担を軽減するため、外来患者を減らす取り組みをした場合の点数を倍に引き上げた」というところ。


・・・全然よくわかりません!!
①診療所の朝や夜間の診療報酬が上がると、患者が皆そちらに行こうと思うようになるということですか? 
②中核病院が外来患者を減らそうとすれば、外来患者はそんなに減るんでしょうか?

一体どういう仕組みで、①や②が達成されるのか、あるいはそう考えたのか、そして実際のところそのために各病院では何を行っているのか、そのあたりをどなたかご指導いただけないでしょうか。しかも結局、記事によれば「業務負担が増加した理由」には、外来診療でも「患者の増加」が真っ先に挙げられているのです。上記の「外来縮小」に対する評価の仕組みは何だったのかと思わずにいられません。


なんだか外来を縮小することばかりが先立っていて、やっぱりこの議論でも患者は不在なんだなあと残念です。いきなり病院が外来を縮小したときに、本当に近くの診療所が朝・夜、診てくれるのか・・・その辺が全然わからないし、不安になってしまいそうです。

もちろん、患者のモラルの低下も問題ですし、そいういうことからいえば外来は今より縮小されても、大丈夫なのかもしれません。ただ、議論の方向性が「先に縮小ありき」になっていて、「こうこうこうして、こうすると、病院の外来に来ている患者さんが診療所に流れるから、そしたら外来は縮小できますよね」というふうには聞こえてこない(もちろん考えている方々はいるんでしょうが)のがどうもしっくりいかないのです。


医療政策の話をなさった委員の先生もいらっしゃいましたが、中医協の部会=診療報酬の話をする場である以上、やれるアプローチが限られているから仕方ないということなのでしょうか。医師の負担軽減のためには、診療報酬でのアプローチも重要なのだろうと思いますが、それだけで達成できることでもないですよね。それにしては、どうも他との連携プレーになっているようには見えないというか、足並みの悪さを感じてしまうのでした。

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コメント

>病院の外来患者を減らすため、診療所の早朝・夜間診療に加算

おそらく、一般診療所では早朝や夜間など時間外の体制ができていないから、「診療所は、もっと長く営業してくださいね。そのための加算です。」ということでしょう。

しかし、そう簡単に患者さんの割り振りをできるものではありません。日本人はブランド志向が強すぎるのか、大学あるいは総合病院に頼りすぎです。大学で外来をしていたときつくづくそう思いました。必要なのは国民全体の意識の変換でしょう。
でも、少しずつ変わってきています。かつてはマスコミに登場するのは大学の先生ばかりでしたが、一般紙やTVに大学の先生ではなく一般病院や診療所の医師が登場してきています。

堀米さん 
病院の負担が楽になるのはたしか以下のようなロジックだったはずです。

(1)診療所に患者がまずアクセスするようにと、紹介状をもたない初診の患者には病院できめた料金を徴収してよい制度がある
(2)昼間は、診療所があいているので、初診の患者は高い病院よりも安い診療所へ流れるルートができた
(3)夜も診療所があいているようにすれば昼間と同じく診療所へ患者が流れるはず。
(4)そこで早朝夜間を診療時間として標榜すれば加算を出してやれば診療所が夜間開いているようになるだろう

実際には(1)の病院が金を多くとるというのがなかなか実践できてません。

これもまた貧乏人にたいしてはアクセス制限をかける医療ですね。

>日本人はブランド志向が強すぎるのか、大学あるいは総合病院に頼りすぎです。

実際にやられているのは、同じ病気で同じ薬をもらえば(医師会員の経営している施設の売り上げが高くなるように)開業医の方が高くつき総合病院のほうが安くつく、という価格設定ですね。
患者が開業医にかからないのはブランド志向だけではなく、実利の問題もあるということです。

前々回の改訂で、病院の再診料を安く設定し、病院から診療所へ患者を誘導しようとした。ところが患者の流れはなく失敗。かえって再診料の安い病院が選択されたのではないかという論調でした。
しかし、病院57点(現60点)、診療所71点、その1/3で50円弱
この再診料の差は、医療機関選択の基準になりうる額なのでしょうか?
日本人の意識の問題の方が大きいような気がするのですが。

まずは、Anonymousさま、基本的なところをありがとうございました。(1)は、そういえばそうだったなあ、と思いましたが、そこがこの考え方の出発点だったのですね。

そして、一内科医さま、Pさま、人々の医療機関選択の基準(病院志向の理由)は診察料なのかブランドなのか、という点、興味深い問題ですね。

世の中には風邪程度でも大学病院を受診する人もいると聞きます。おそらく全体からすればほんの一部なのでしょうが、集まってきてしまえばそれなりの数になるのでしょうね。でも、大学病院の待ち時間の長さは有名なこと。なのになぜでしょうね?まったくわかりません。あの待ち時間を考えれば、軽い疾病なら、ブランドもちょっとした割安感も、吹き飛んでしまうと思うのですが。

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