カテキンがまた大注目ですね。

投稿者: | 投稿日時: 2009年10月23日 13:21

このところインフルエンザ対策として、緑茶に含まれる抗酸化成分「カテキン」が注目を集めていますね。先日はヨーグルトが売り切れるかも、なんて話をしましたが、この緑茶は何かにつけて出てくる気がします。ダイエットもそうですし、もっと前、十数年前からは、抗がん作用についてかなり関心が高まっています。


今回のインフルエンザへの効果についても、今月に入って相次いで研究や商品が報道されています。

日付の早い順にざっと報道を振り返ると、

●インフルにカテキンの力 県立大グループが「感染抑制」化合物合成 「静岡の茶に習う」治療薬可能性も
(2009年10月15日 静岡新聞)

●ヘルシーリポート:緑茶カテキン 新型インフル対策に こまめに緑茶うがい(2009年10月17日 毎日新聞)

●徳島文理大 新型インフルに カテキンが効く?(2009年10月22日 読売新聞)

●カテキンパワーでインフル予防を 前田製茶が「うがい茶」商品化(2009年10月22日 長崎新聞)


徳島文理大の研究報道によると、「新型やAソ連型などのA型ウイルスは、増殖に不可欠なRNAポリメラーゼという酵素を持ち、人間や豚の細胞中のRNAという物質を切断して新しいウイルスの材料にしている。(中略)酵素分子の表面にある複雑な形のくぼみに、カテキン分子がすっぽりと入り込むことがわかった。くぼみの中にはRNAを切断する『刃』があるが、カテキンがふたをし、働かなくしていた」ということで、カテキンでインフルエンザウイルスそのものをやっつける、というよりは、活動を制限させるように働き、感染抑制効果が期待できるようです。


ちなみに、確か最初にカテキンが私のなかで意識されたのは、まだ中学、高校くらいのころでした。カテキン入りの缶ジュースが伊藤園から売りだされ、当時めずらしかったシークワサー果汁入りというのに惹かれてよく飲んでいました。私自身、その頃はカテキンの効能自体にはあまり関心はなく、どうして伊藤園がカテキン入りを特に謳っていたのか、覚えはないのですが・・・。その後、ポリフェノールの一種として「体の酸化を防ぐ」とか、「胃がんの一因となるピロリ菌の除去に有効」、などという話を聞くようになり、カテキンの名前は広く意識されるようになりました。特に緑茶の抗がん効果(例えば「緑茶飲用と胃がんとの関連について」「緑茶飲用と前立腺がんとの関連について」など)はちょくちょく発表され、近年もカテキンの抗がん剤への応用研究が進んでいるようです(例えば「緑茶ポリフェノールを利用した新規抗がん剤の開発への期待!」京都大学2008年11月26日http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2008/081126_1.htm など)。


そんな中で、今回の抗インフルエンザ効果も出てきた、というわけです。薬として実用化するにはまだ時間がかかりそうですが、以前から言われていたように(このブログでもコメント欄で教えてくださった方がいました)緑茶でのうがいの効果は興味のあるところです。実は思い出すとたまにやったりするのですが、やったほうがいいだろうなあ、と思いつつきちんと習慣化できていないのは私のいけないところ。うがいの効果は持続性がひっかかるところでもありますが、上記の毎日新聞や長崎新聞の報道からすると、一定の効果が上がっているといえそうです。カテキンが喉の粘膜上にある間は効き目がありそうなので、そうなると、人ごみでカテキン成分の入った緑茶飴などをなめていてもいいのでは?という気がしてきます。(そもそも飴をなめていること自体も、唾液で常に喉を洗い流すことになってよさそうに思えるのですが、どうなんでしょうか?)


そういえば、長男の保育園で流行っていた新型インフルエンザは、峠を超えたようです。日々数人ずつ患者が増えていたのですが、昨日から減少傾向の様子。お蔭様で長男のクラスではそれらしい子はいなかったようで、息子もなんとか無事でした。とはいえ前回も書いたように息子は別の軽い風邪にかかってきて私にもしっかりうつしてくれたので、私のほうはこのところ咳に悩まされています。主人は全然平気らしいので、弱い風邪のはず。子どもより私のほうがゲホゲホやっている有様です。妊婦は本当に用心しないといけないんですね。インフルばかり気にしていましたが、これではだめですよね。

うーん、やっぱり今日から緑茶でうがいしてみようかな、というところです。

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コメント

「バイオラバーで抗癌効果」と同じくらいの胡散臭い話だと私には思えます。

どうしてお気楽に、シャーレの細胞実験と、人体の薬理効果まで真っすぐ結びつけるのでしょう?

インフルエンザの予防に「うがいが効果的」と誰が言ってましたか?

医療情報を提供するお立場にあるという責任を持ってください
いい加減な情報であれば、あれば有害です。無い方がましです。

カテキンがRNAポリメラーゼを阻害するようなところまでどれだけ到達来るかどうかもわかりませんからね。まだまだ一般誌が報道するようなレベルの情報じゃないのにな~というのが私の感想です。

堀米さん、お気を悪くなさいませんよう。
あなたは、ジャーナリストの科学リテラシー(あるデータが発表されたときに、それをどれだけ科学的に批判的に吟味し報道できるか)の格好の実例・・・良くも悪しくも。すなわち、国民の科学教育がこうなら、いくら医師が診察室で説明しても、スタチンよりもセサミンを選ぶ患者は減らないのも納得。いや、私の説明がたぶん悪いのでしょうが。噛み砕いているつもりでもまだ努力不足と反省。
すみません、決して個人攻撃をするつもりではないのです。始めから謝罪しております。お気を悪くなさらなず、今後も、医師集団にずけずけ本音を言っていただきたくお願いいたします(皮肉でなく)。
(・・・カテキンでうがい、というのは冗談のオチであって、本気じゃないですよね。RNAポリメラーゼの分子構造の一部にカテキンが結合する、という報道 ⇒ カテキンで「うがい」したらインフルエンザが予防できる、ということになる、その思考過程に、すみません、どうしてもついていけないので、・・・すみません、ユーモアのセンスがないのかも。あのう、ワクチンはちゃんと受けてください。お願いします。)

お茶カテキンは疫学データ、治験、試験管内、実験動物レベルといった多角的な視点に基づく検討から、がんに対して有効であることが示唆されております。ウイルスに対する効果については、いくつかの報告がありますが、まだ不明な点が多いのも事実です。ただ複数施設でお茶を使ったうがい等の効果が現れているようです。必要以上に新型インフルエンザを恐れる必要はないとは思いますが、人々の不安もまた理解でき、運が悪ければ急速な転帰をとることも考えれば、ワクチンの接種順位がかなり後に回されている人たちにとって自衛・予防手段は切実な問題であろうと想像できます。もちろん現段階でお茶を使ったうがいを公的に推奨することはありえませんし、それで「防げる」と断言することなどできるはずはありません。それでも先のような研究が進んでいるものを「ばかげている」と一蹴するのも少し乱暴かと思います。そういう意味でバランスの取れた報道は必要ですが、お茶はどの家庭にもたいがいある手近なものですから、試してみても悪くはないのではと思います。

皆様、率直なご意見ご指摘をありがとうございました。

臨床の立場からは、予防接種等に比べて効果の明らかでないものについて、効果を示唆するようなことをこうした場で言及するのは考えられないことなのだろうと思います。そしてもちろん、基礎研究の結果は実用したときの有効性とは別物といってもよい場合が、かなりの割合を占めることかと思います。ただ、そうした専門の立場とは別に、実際にお茶でうがいをすることで一定の効果を感じている人々が、ひとところでなく方々に大勢いる、という報道が相次いだのです。これについては私個人としても、大変興味深いと思っています。

当然、それは「医学情報」ではありません。「おばあちゃんの知恵袋」レベルの話です。その点についてははっきり明示する必要性も、改めて自覚しました。ただ、科学的に未知数・未解明であることは、間違っていることとも違うはずです。基礎研究レベルの話を一足飛びに実生活に持ち込むような勇み足報道には気をつけつつ、こちらはむしろ逆の方向から、つまり日常生活に立脚し、そうした可能性を秘めた「知恵袋」情報にも触れていきたいと思っています。

(「生涯」は「生涯いち医師」の途中で送付してしまったミスです)
「ばかげている」と一蹴する、とは申しておりません。分子レベルと臨床を即結び付けて実践しようとするのは非科学的態度である、と申し上げております。しかも、臨床試験では有意差はなかった(傾向があっただけ)と文中にあるのです。
お茶でうがいするのは、おそらく無害と思われるので、なさるのは自由です、もちろん。
ビタミンCが風邪に効くかどうかも、有名なノーベル賞科学者のポーリング博士の仮説、それが実証されなかったこと、など、いろいろ紆余曲折があって、まあ、ビタミンCは飲み過ぎても尿に出ていくだけですのでご自由に、という空気でしたが、限定的ながら効果があることになってきています。要するに、そのときそのときのデータがすべて、ということです。
現時点では、カテキンのうがいが有効とのデータはありません。
でも、こういう議論を繰り広げると、いつも、科学的にものを言うとなにか「素人相手に大人げない」みたいな空気が反応としてあります。いいじゃない、信じる者は救われるんだから、と。
患者さんが、医者よりも民間療法で病気を治したい気持ちはもちろん理解できます。医者には風邪は治せないので、大きな口は叩けません。患者さんが、「あの医者の出した薬よりもお茶が効いた」と思うことで気分が良くなって免疫力が高まるなら、それもよし。しょせんインフルエンザで医者がかなり無力なので。

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