潜在助産師の実態?助産師増加数と養成校卒業就業者数に約1000人の差-産婦人科医会

投稿者: 熊田梨恵 | 投稿日時: 2009年10月24日 21:52

 日本産婦人科医会(寺尾俊彦会長)が公表した、助産師の数に関するデータが興味深かったので紹介したい。養成校からは毎年約1300人の助産師が卒業して医療機関などに就職しているが、全体で働いている助産師の数自体は平均で前年比約300人程度しか増えていない。定年で辞めていく人もいるとみられるが、同会の神谷直樹常務理事は多くが"潜在助産師"になっているとして「家庭に入っているのではないか」との見方を示している。(熊田梨恵)

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コメント

 熊田さん、こんにちは。

 まず、記事中のグラフですが、どこまでが医会のデータでどこからが厚労省のデータ(衛生行政報告例だろうと思います)なのかが、一見して分かりません。

 通例、この手のグラフを描く場合には文中あるいは各々のグラフの下端右側にデータソースを明記するしきたりになっています。ご配慮いただければ幸いです。

 大半は衛生行政報告例のデータだろうと思いますが、データ分析上は3つの問題があります。

 一つめは病院従事助産師の少なからぬ割合が助産業務を行ってきていないということです。普通の看護師としての業務に従事あるいは兼務しています。これでは助産師の過大推計となり、現場の窮状を正確に把握できなくなるリスクを生じます。

 以前はこの兼務の割合のデータが公開されていましたが、現在は公開されて居ません。誰かにとって不都合があるのであろうと思います。

 もうひとつは卒業年次別あるいは年齢別データでの分析が必要であるということです。そもそも看護師の離職率が高く、記事中でも医会理事が推測されているように離職を新入職が追いかける状況はあり得ると思います。

 しかし、何らかの離職対策を考えるのであれば、対象となる離職者の理由の調査が必要ですし、調査内容を決定するためにはそのライフサイクルを知らねばデザインができません。

 最後に生産性の問題があります。通常、被用者として働く場合には年におよそ200回出勤します。安全を考えると複数の分娩を一人の助産師が平行して介助するのは好ましくありませんが、しかし手空き時間があまりに大きくなることも好ましくありません。相談相手のいる若い間に、充分な経験が積めないからです。

 データを下にした議論が為されるようになってきたことは、これまでの「べき論」の神学論争と違って効果的対策が立案される可能性を高めるものであり、非常にうれしいことです。

 しかし、データ分析には現場の現実との摺り合わせによる解釈が必要で、数字の一人歩きで机上の空論が却って現場を混乱させることは回避しなければなりません。現場には最早そんな余力はないからです。

>病院従事助産師の少なからぬ割合が助産業務を行っていない
>普通の看護師としての業務に従事あるいは兼務しています

中村先生のおっしゃる通り、助産師としての資格があるにも関わらず、看護師としてしか働いていない病院助産師は多いと思われます。

一例にすぎませんが、私の勤務先は産婦人科医不足のために3年以上もの間、産婦人科が休診していました。
その間も、当院の助産師たちが遊んでいた訳ではありません。産婦人科病棟は内科病棟として利用され、助産師さんたちは内科患者の看護をする看護師として忙しく働き続けていました。産婦人科医がいないのなら助産師外来をやったらどうか、という話も外部からありましたが、看護師としての業務で手一杯の彼女たちの実態を知る身には、それは無理な話だと思っていました。地域の救急病院として、妊婦の救急車搬送に同乗したりしたこともあったようです。産婦人科休診中も彼女たちが看護師と勤務し続け、転勤も退職もしなかったおかげで、複数の産婦人科医が着任した後まもなく当院の産婦人科は再開できました。

今の時代、個人で(助産師のみで)助産院を開業する助産師と、診療所や病院で(産婦人科医師と共に働く)助産師の資格を何か違う形にしてもいいのではないか、と考えています。医師と共に働く助産師の時代を経てから、助産師として開業する資格を与えるとか。
病院勤務の助産師はチーム医療の大切な一員です。個人開業助産師と病院勤務助産師は、社会的使命も役割も、助産師自身の意識も大きく違っているような気がします。

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