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行政監視委員会

 鈴木議員「医療事故は複雑なので専門的な機関を作ることは結構だが、それは一体誰のためのものなのか。ぜひ患者のためという本旨に基づいて制度設計を行ってほしい。誰のためという部分を間違えると屋上屋を重ねるというか、医師法21条の警察への届け出義務も残って、仮に第三者機関への届出義務なんかかけてしまうと、そんなことは考えていないと思うが、警察からも第三者機関からも立ち入り検査を受けることになって、手続き上の落ち度があった場合に両方から訴追リスクがあっては、何のためにこういう議論をしていただいているのか全く分からない。検討会で行政処分のありかたについても検討するとなっているが、民事訴訟、刑事訴追がある中で、さらに行政処分が強化されたら、結局、萎縮医療・保身医療がひどくなってしまう。結果として一番困るのは患者さんだ」

 もう質問ではなく、厚労省に対するクギ刺しである。そして、伊吹文科相が深く何度もうなずく。こういう光景は珍しいと思う。何についてクギを刺したかといえば、医師法21条を現状のままにして行政処分だけを強化するのではあるまいなということである。今後の検討会でウオッチする論点になるかと思う。鈴木議員は答弁を求めないまま、対話型ADRへと質問を移す。

「司法の限界というか枠組みがどこまで医療に入るのかは難しい。医療従事者と患者・家族との間に濃厚な信頼関係が必要。その意味で対話型ADRについては検討会で議論されるのか」

 医政局長「死因調査や臨床経過の評価を行う専門機関が設けられておらず、結果的に民事・刑事の手続きに期待されるようになってきたわけで、今般の死因究明制度が構築され事実関係が明らかになれば、医療機関と患者の話し合いも促進されるものと考えている。また調査報告書の活用や当事者間の対話の促進などによって民事紛争解決の仕組みを探ることも検討課題になっている」

 相変わらず第三者機関ありきの答弁からは一歩も出ない。実に不思議な話ではあるが、その目的・必要性を国会できちんと開陳できないような組織に、そもそも予算がつくもんなんだろうか。鈴木議員は最後に大臣にも念押しをする。

「大臣、この問題に関しては、患者さんを含む医療関係者が大変な関心を持っている。制度設計のいかんでは、医療崩壊が食い止められるか、さらに進んでしまうのかの岐路に立っている。現場の医療者たちも非常にここ1年で問題意識を深めており、たとえば、現場からの医療改革推進協議会ワーキンググループは、5716人の賛同書名をつけてパブリックコメントを寄せた。学会なども多数の意見を出しており、どれも真剣に厚生労働省へ声を寄せている。ぜひこうした議論を重く受け止め遺漏なきようご対応願いたい」

 柳沢厚労相「どのパブリックコメントも真剣な意見であると受け止めており、今後十分踏まえて、なかなか難しい問題ではあるが、何とか取りまとめを一定の筋の通った体系的なものとしてまとめることに努めたい」

 大臣はこの問題について、まだ余り説明を受けていないのでないかと思うが、恐らく少しだけ事務方の用意した答弁から踏み込んで「筋の通った体系的なもの」というお土産をくれた。これも今後検討会をウォッチする際のポイントにしたい。

 この後、鈴木議員は、抗がん剤のDPC適用の問題と築地市場の移転問題について質問を行い、あっという間に45分が過ぎた。この傍聴記を書くにあたって、参院ホームページで質問を何度か聞きなおしたが、実にホレボレする論理構成である。誰のことも難詰したわけではないが言うべきことは言っている。惜しむらくは、野党議員なので、官僚がノラリクラリと逃げた時に、決定打を放てないことだろうか。

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