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ニュース〜医療の今がわかる

観測気球

 昨日、日経新聞の朝刊1面トップに、こんな記事が出ていたのをご存じだろうか。

 これに対して、厚生労働省の武見敬三副大臣が、わざわざ記者会見を開き「事実無根」との発表をしたという

 この経緯に関して様々な憶測が飛び交っているが、メディアの在り方としても非常に興味深い事例と思う。

 まず前提として
・中身は厚生労働省がいかにも考えそうなこと
・建前上、厚生労働省に提案する権利はあっても決定権はない
の二点は押さえておきたい。

 で、この記事であるが、一面トップで展開するからには、省内の中医協担当者の間で会合があって方針が取りまとめられ、それを局長クラスの人間が了解しているというあたりまでは、ファクトがあるはずだ。この程度のファクトもないのに書いたとすれば飛ばし(捏造)である。大臣・副大臣は基本的にお飾りだから何も知らされていなくても不思議はない。

 そして担当者の会合があったことと、その中で何が方針として固まったかということとは厚生労働省内部の人間が知らせない限り日経新聞記者が知るはずもないのである。

 厚生労働省は「厳重に抗議した」と言うが、捏造なら抗議ではなく訂正要求でなければならない。そして全くの事実無根であれば、日経新聞も記事を撤回しなければならない。だが依然アクセスできる。こう考えてみると、厚生労働省の幹部クラスの人間が日経新聞に書かせた観測気球記事でないかとの匂いがプンプンする。実際に政策を実行に移す前に非公式に公表して反響を探ろうという類のものだ。

 たまたまそれが、医師会を支持基盤とし参院選を控えた武見副大臣の逆鱗に触れたため抗議のポーズを取っただけのことだろう。

 何といっても官僚にとっては、このように新聞を使うことは大変メリットがあると思う。しかし使われる新聞は果たしてどうなのか。特に今回の場合、官僚だけで通る話でないことは百も承知のはずなので、結果的に虚報となることを知りつつ、紙面展開した可能性が極めて高いと思う。記者は一面トップの特ダネが書けたと大威張りだろうが事実を正しく伝えていないのであるから、読者に対して極めて不誠実である。

 将来振り返ったとき、その虚報紙面をいったいどう説明するつもりなのか。日経新聞に限らず、そういった観測気球記事が数多く目につく。もっと大切な報じられない事実がたくさんあるのに。将来の視点から自分たちの行いを観ることのできないようなメディアは見苦しいし、社会に害悪を与える。

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