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ニュース〜医療の今がわかる

与謝野馨・前内閣官房長官・インタビュー

世界一の医療制度守るには、「国民の割り勘」を増やすことも必要

――昨年10月に下咽頭がんが見つかり、国立がんセンター中央病院で13時間にわたる切除・再建手術を受けたと『文藝春秋』で拝読いたしました。患者体験のある政治家として伺いたいのですが、現在の日本の医療はうまく行っていると思いますか。

我々が昔読んだ話として、お金がないから医者にいけないとか、貧しさゆえに医療を受けられないとか、そういう悲しい話がたくさんありました。でも今はそうではない。

日本の医療の素晴らしさは、すべての人が平等に最前線の医療を受けられる。それが一番の特徴だと思います。過疎地の医師不足とか個別には問題がありますけれどね。原則としてすべての人が費用の心配なしで受けられる素晴らしい医療制度。私は世界一の医療制度だと思っていますよ。

それからね、少しの金額を個人負担したなと思っていたら、後に区役所からお金が戻ってきました。なんと手厚いシステムになっていることかと思いました。

日本の医療は富める者、貧しい者で受ける医療に差がない。お金の心配をしなくて良い、本当に素晴らしいと思います。

――医療スタッフの質は、どのようにご覧になりますか。

患者として接した看護師の方々は、勤務条件も良くなくて、昼間の勤務から夜になったりして大変だなと思いました。でも出会った看護師さん達は、患者さんのためという使命感に燃えてやってくださっている。こういう若い人たちが存在することは、日本の救いだなと思いましたよ。

――そのスタッフの勤務条件が医療費の削減で悪くなっていると言われています。

結局、開業医と勤務医とを比べると現実において開業医の年収の方が多いですよね。開業医の果たす役割は非常に大きいのだけれど、しかしながら勤務医の年収が低すぎるのは直さなければならない、と思っています。勤務医の過酷な勤務条件は直らないにしても、収入の面で開業医と差があるのは望ましいことではない。

――差があるのは望ましくないから、開業医を下げるということになるのでないか、と業界では警戒する声が上がっています。

医療費というのは放っておくと年5%上がるんですね。1%は高齢化の分で1%は高度化の分ということで説明がつきます。しかし残りの3%はうまく説明がつかない。

日本の制度が、あまねく全ての人に同じ医療を提供しているのは優れていますけれど、いろいろな歪みを直していかないと、それでなくても高齢化で保険医療が苦しくなってしまいますからね。せっかくこんないい制度つくって、少なくとも大病をしたとしてもお金がないから治療が受けられないという昔の悲劇はなくなった。この制度を守る必要があると思います。そのために必要があれば、国民の割り勘を増やすことも考えないといけないんじゃないですかね。

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