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ニュース〜医療の今がわかる

臨床研修検討会3

矢崎
「初期臨床研修の報告書を取りまとめた時は私がやったので、これを何とかいい方向に持っていかないといかんと思っている。大学の方のお話を伺っていて、少し申し上げたい点がある。医療の形は、社会や時代のニーズに応じて変わるもので、その意味でそれ自体が不確実性を含んでいて、柔軟に変更できるように制度設計することが必須だろう。報告書にも5年を目途に見直すと書いてあるので、見直すことはどんどんやったらいい。

ただ気になったのは、平出先生が医師の養成は単なる実務家の養成ではないと断言したことで、臨床研修制度導入の思想というのは、タワーマンション型の専門医がいくらいても診られない領域の隙間が空いてしまって医師不足が埋まらないから、富士山型の専門医を養成してほしいという社会からの要望に応えたのであって、必ずしも実務家を養成しようとしているわけではないということ。報告書の当時も大学にとって大変な負担になるということは分かっていて、学生の教育も診療も研究もしなければいけないところに乗っかってくるから極めて大きな負担になるから、ぜひこれを真剣に議論してくださいとお願いをしてきた。

プログラムが細切れとか、メンターがいないとか、裁量がないとかいうのは、診療科が林立している大病院がそういう傾向にあるんで、研修医たちにアンケートを取ってみると、総合診療科や総合診療棟が機能しているような病院ではそうでもない。小さい病院だからいいわけではないというのはその通りだが。

何にせよ、初期研修だけ議論していると色々な問題が解決できない。キャリアが分かる研修になるためには後期研修まで一体化したシステムないと無理。初期は全国のものをまとめた情報があるけれど、後期にはそうしたシステムがない。学会で対応しているところもあるのだろうが。そういうシステムが必要でないか。

大学病院が地域の病院とコンソーシアムを形成しているという話、もう一歩踏み出して、地域ごとに研修の内容、キャリアパスを含めた深度の深いもの形成してもらいたい。そのためには大学のパターナリズムでやれと言うのではダメで、きちんと相談しながら作らないと難しいのでないか。

いずれにせよ後期研修の枠組みを早急に作っていただいて、その情報を集約していただいて、後期研修先を決めるというのは、医師にとっていよいよ就職先を決めるということであり、その重要な時期に初期の経験が連続して生かされることが大切だ。今ある臨床研修に、後期をつないでいただきたい」
3回分なんだろうか、ずいぶんと大演説だった。が、すぐ噛みつかれる。

下條
「大学がパターナリズムと仰ったが、ウチのは全て地域の病院の方からお願いされたものだ。地域が一体となって必死に地域医療を守ろうとしているのであって、それをパターナリズムと言われては心外だ。そういう発言は取り消していただきたい」

矢崎
「そうなったらいけないということを言っただけで、大学の派遣機能も大事だが、研修を受ける身のことも考えてほしいということで、大学がいけないとかそういうことではない。誤解があると思う」

福井
「共用試験は医療教育改善の大きなステップだ。パスした方々にはぜひ仮免許のようなものを出して医療行為ができるようにしてほしい。また、文部科学省、厚生労働省も、そのことを国民に発信していただいて、学生が医療行為をするのが当たり前という環境づくりを進めてほしい」

高久
「文部科学省の検討会でも、そんな意見がずいぶん出ていた。その通りだと思う」

福田
「そこが課題であることはたしか。ただし、どのレベルで合格させているのかを現在調査しているが、CBTの問題はエッセンシャルなこと。それを50点で合格させていたとしたら、国民がどう思うか。判断は大学にお任せしているが、もう少し高いレベルで合格させるとコンセンサスができたなら、そういう話も出てくるだろう。現状は大学によってかなりの差がある。そこをどう担保するか。

関連して申し上げたいのは、国家試験の問題が難し過ぎるということ。専門医のレベルを超えているものがある。それは作成している先生方の意識の問題。共用試験が同じテツを踏まないようにしなければならないのだが、大学の先生方には、国家試験の問題が専門医のような狭い領域に入り込んでいることの弊害がいかに大きいか考えていただかないといけない。

ゆくゆくは福井先生のおっしゃるようなことにしたいが、その時に法的根拠をどうするのかは難しい。広く患者さんと目線を合わせる姿勢でやるべきだろう」

武藤
「この検討会の委員になってから、色々な所から資料を送りつけられるようになった。皆さんもそうだろう。そんな中でけしからんなと思うのが、2年を1年に短縮することが決まっているそうだがそれには反対だというものが結構あって、この場でそんなことをディスカッションしたことは一度もない。1年短くするにあたっては1年前倒しで学部教育のうちにやっておくというのが大前提だ。その辺のことはマスメディアもきちんと伝えてほしい。

それはそれとして、身の回りにいる若い指導医に臨床研修についての意見を聴いてみた。彼らは余り役に立ってないという意見だった。なぜかというと、自分の志望と全く関係ない診療科ではまじめにやらないからムダが多いそうだ。平出さんの所で最初に志望の科を回っても、2年目に同じ現象が起きるのではないか」

高久
「その辺り齋藤先生」

齋藤
「実は、皆さんの言っていることと現行制度とあまり差がないのでないか。現行でも8ヵ月の選択期間がある。大学の専門コースもある。進化しつつある。2年を1年にするのは大変なことだが、2年目をフレキシブルにすることについては意見の差はないんじゃないか。基礎医学の振興については、文部科学省のとか他のところで議論すべきだろう」

唐突に入り込んで来た。できレースか? と思わせる発言である。

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