文字の大きさ

ニュース〜医療の今がわかる

臨床研修検討会6その2


矢崎
「この研修制度ができあがった時、1万6千人分の人件費を確保して処遇することができたので、もの凄く大きな費用がかかった。それができたのは世論の力が大きかったと思う。よい医師を育てるためという世論の後押しもあって、政治家の皆さんが相当の支出を認めてくださって具体化した。プログラムの弾力化がメインの見直しとして必要であることは承知しているが、質の担保を伴うものでもなければならない。その意味で、第三者的に評価する対象として、受け入れ病院やプログラムだけでなく到達目標をしっかり評価するシステムもないといかん。2本立てで、一つはシステムも含めたプログラム全体、もう一つは個々の研修医を評価するようなシステムが要るのでないか」

高久
「文言の中に入ってるんじゃないか」

矢崎
「おっしゃる通りだ。ちょっと読み取りづらかった」

舛添
「嘉山先生の地域枠の件。和歌山県立医大は地域枠はあるけれど、募集は全国からかけているという話だった。どういう工夫をするかにも関わるのでないか」

嘉山
「私も和歌山県の例は承知している。その県からと限ると質が下がる。全国から募集すれば、それはない」

能勢
「関連で。我々は地域枠をもっと認めてくれとお願いしている。それは大学や地域によっても違うのだろうが、地元の行政が自分たちの医療をどれだけ確保できるかということで自活していこう、そのために大学の力を借りようということで。それが定員内か定員外かという議論はあるだろうし、奨学金を与えたり与えなかったりいろいろな考え方もあるだろうが、どんな形の地域枠でもいい、地域に定着する方法を考えたいということ。ぜひ続けていただきたい。レベルに関しては、医師国家試験をパスすればいいのだから、それで担保されると考えている」

吉村
「大熊委員の選択必修科目を2科目以上に増やせという意見だが、臨床研修は医師養成の1プロセスに過ぎず、それだけで生涯を通して働けるようになるわけではない。私の経験から言っても、医師免許を取ったばかりの時が一番モチベーションが高い。2年間ぐるぐる回っているうちにそれが落ちてきちゃうのは問題なので、だからあまり増やしちゃわない方がいいと思う。
内科は臓器別の内科じゃなくて全身。救急も小児を含めた1次。地域医療研修はコモンディスイーズ。
施設の条件に関しては、後期の研修まで一貫してできないといけないと思う。初期研修はたくさん取っておいて3年目には絞るというのがよくあるが、3年目で放っぽり出されてしまうと中途半端で心配になる。ぜひ一貫して後期研修を受けられるようにしてほしい。そのために、ある程度の規模は必要だと思う。ただ総合医の養成は必ずしも大病院である必要はなく200床から300床程度でしっかりしたプログラムを持っている所でも構わないだろう。
もう一つ、大学の研修医だけ見ていると厳しいけれど3年経ち5年経ちするとスタッフとして大学をまた支えてくれるわけで、そこが枯渇している、それに伴って中堅どころの負担も増しているという関係にある。大学の研修医の充実ということも大きなポイントだろう」

大熊
「この2年間だけで一人前になれると誤解している人が言われたが、もちろんそんなことを思っているわけではない。最初から専門だけだと鉛筆のように細くてグラグラになっちゃうから、土台を固めようということなんで。それから在宅はコモンディスイーズだということもおっしゃったが、コモンディスイーズのことではなくて、先生方は古いから経験ないと思うが、患者さんの家にお客さんとして行く、それを学ぶことに意味がある。そもそもコモンディスイーズを学ぶのであれば大規模な病院より小規模な方が向いてたりする。細かく分かれちゃってたりするより。くれぐれも大規模ということが条件にならないように。
それから派遣じゃない配置だということだったけれど配置にしても強制的に置くこと。いまだにお金のやりとりがあるというような話も聞く。育てた人を外へ出す病院は大学病院等と書くのでなく、大学病院及び研修指定病院と書き改めてほしい」

舛添
「そろそろ行かなければならないので、今までの感想と今後のことについて。塩谷大臣はもういないけれど、最終的には出てきたものを両省で実行に移していくことになるので、よろしく頼むとのことだった。とりあえず感想。私が大学で教えてた時に、教養過程というのをやるんだけれど、今日のような議論を聴いていると、教養過程がいいのか悪いのかという議論を聴いているようだ。教養過程なんか無駄だ最初から専門過程をやった方がいいんじゃないかと思いながら、しかし法律家になるにしても、歴史を知り自然科学をやっておくのは意味があるというような。なかなか結論が出にくい話だなと改めて思う。それで、せっかく両省でやっているので、今回はあくまでも臨床研修の見直しに過ぎないけれど、どういうお医者を育てるのかという大きな理念の中に是非位置づけていただけると、これをきっかけに今後も卒前卒後を通したものが考えられる。両省でバラバラにやっているのでは国民のためにならない。連携をさらに強めていきたい。介護分野なんかは経済産業省と一緒に研究していることもあって政府全体でやるように省庁の壁をなくしていきたい。そういう思いをまず申し上げておきたい。
それからご意見を聴いていると例えば選択必修1個がいいのか2個がいいのか、正直どちらが正しいか判断しかねる。立場によっても違うと思う。大きな方向付けを出して、これについてはさらに議論が必要だというような形で残していただいたら、そういう形でおやりになったらいかがかと思う。がんじがらめにするんじゃなくて、こういう意見もあった、こういう意見もあったというような形の少数意見的なものも書き留めておいていただければ。
最大の問題は政府が国家が枠を決める、悪い言葉で言うと強制する、それが許されるとすると、どういう理念とどういう説得があるのかということがあるのだろう。日本国憲法では職業選択の自由もあるし住居を選ぶ自由もある。何科の医師になろうが、鳥取がイヤで東京に来るという人を止めることはできない。だがしかし今の医療崩壊という現状を見た時に公共の福祉の観点から、こういう所まではいいだろうと。例えば地域枠なんか。例えば地域のタックスペイヤーが出す奨学金だったら地域に還元してもらうというような話なら成り立たないか。私も基本的に強制は避けたいという気持ちはあるが、どこまでなら国民が納得できるのか、最終的には国民のコンセンサスを得る必要がある。非常に難しい問題はあるが、できればこの感想めいたことを全て満たすようなおまとめがいただけるとありがたい。高望みが過ぎるかもしれないが。
あとは高久先生以下、皆さんにお任せする。ただ今回こういう形でご議論いただいたことでメディアもきちっと報じてくれたし、国民のこの問題に関する理解が随分進んだと思う。一定以上の年齢の方々と話をすると医師の教育というと白い巨棟の話が今でも出てくる。だから国民の皆さんに医師養成のことが関心持たれて大分埋まってきていると思うので、あとは国民的議論につながればと申し上げて退席する」

  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
loading ...
月別インデックス