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DPC、「調整係数」廃止で大混乱?

■「調整係数」と「新たな機能評価係数」との関係分析を

「新たな機能評価係数」から落ちた10項目.jpg 「DPC」は、診断群分類ごとに入院基本料や注射、検査、投薬などに対する報酬を1日当たりの定額払いにする包括支払方式で、高度な医療を提供する82の「特定機能病院」を皮切りに2003年度からスタートした。

 DPCへの移行に伴って病院の財務状況が悪化するのを防ぐため、診断群分類に基づく報酬が前年実績を下回らないよう病院ごとに「調整係数」が設定されているが、2010年度から段階的に廃止されることが決まっている。
 現在、調整係数の廃止に伴って新たに導入される機能評価係数の選定作業が進んでいるが、中小規模の病院が取りやすい「在宅医療」「重症度・看護必要度による改善率」「医師の日・当直体制」など10項目は、データの把握が困難との理由で既に"落選"している。

DPC対象・準備病院の病床規模4月10日分科会.jpg 「DPCに入れば儲かる」との掛け声もあって拡大を続けてきたDPCだが、「調整係数の廃止」と「新たな機能評価係数」によって、「DPCから落ちこぼれる病院が続出する」との指摘もある。

 このため、3月25日の中医協・基本問題小委員会では、厚労省が示した「DPCにおける今後の課題案」について議論し、(1)「一定のルールの下に、自主的に」DPC対象病院から出来高病院へ退出することを可能とする(2)調整係数の廃止に当たっては、激変緩和のために段階的な措置を講じる―の2点を合意した。
 しかし、「調整係数の廃止」と「新たな機能評価係数」との関係は不透明なままになっている。

 4月10日のDPC評価分科会で、池上直己委員(慶應義塾大医学部医療政策・管理学教授)は「これまでの調整係数が全く間違いであったということはなく、病院としてのコストとしては妥当な係数だった」と指摘した上で、次のように要望した。

 「調整係数は実際の病院のコストを反映した係数だったので、(新たな機能評価)係数と、現在の各病院に付いている調整係数との関連を分析していただきたい。そして(両者の間の)関連が、ある程度あれば(新たな)指数として妥当とみなす以外には検証の方法はない。調整係数の廃止を来年度から全面的に行うのか部分的かにかかわらず、現在は調整係数で支払われているので、激変緩和をする点からも、現在の調整係数との関連性に基づいて(新たな)指数としての妥当性を分析していただきたい」

 これに対し、宇都宮企画官は「個別の病院について、今まで調整係数で『これぐらい』担保されていたのが、(新たな)機能評価係数によって同じだけのレベルで入れ替わるという発想はない」と回答。「あくまでも地域医療の貢献や高度な医療の提供など、今まで議論されたいくつかのポイントに沿ったような機能を持った病院がきちんと係数を獲得できること。そこの部分は、医療の質の観点から外せない」と述べた。

4月10日DPC評価分科会.jpg 池上委員は「調整係数と全く同じものを調整係数としたら新たな機能評価係数にはならないので、個別病院ごとの全く同額を保証することはあり得ない選択」としながらも、次のように繰り返した。

 「調整係数は個別病院のコストに基づいている訳だから、それを何らかの機能に置き換えることが目的であるとするなら、これまで行ってきた費用保証を全面的に否定しないのであれば、それ(調整係数が果たしてきた費用保証)を肯定するという前提に立てば、統計的には、調整係数と新たな機能評価係数との間には一定の関係がみられることが、それがすべての条件とは言わないが、かなり大きな要件になるのではないかという気がする。新たに(候補として)提示された機能評価係数と、既存の調整係数との関係を分析した結果をご提示いただきたい。その点はよろしいか?」

 宇都宮企画官は「非常に難しい計算になると思う」と困惑。「われわれとしても、従来の調整係数と全く整合性のないものという考えではない。その辺については考えさせていただきたい。ただ、段階的に廃止することになったので、調整係数もいきなりゼロではなく、ある程度は残るので、どの程度残すのかということによってもまた変わってくる。具体的にどうするかは、もう少し時間をいただきたい」と回答したが、池上委員がさらに追及した。

 「こだわるが、(調整係数を)半分残すか、3分の1とか4分の1残すということと関係なく、新たな係数として算定した場合に計算できる総報酬額というのは出るのか。それから、調整係数に基づいて出した総報酬額はデータベースから計算できると判断しているので、新たな機能評価係数に基づいたシミュレーション結果と、現在のそちら(厚労省)で持っているデータから得た調整係数を用いた結果との統計的な関係を提示していただきたい」

 宇都宮企画官は「努力する」と一言。西岡会長は「たぶん今後の流れの中で検証しなくてはいけないと思っている。そうでないと、新たに出てきた項目(候補)がどれぐらいの重みがあるのかが全く分からないので、これからの作業の中で出てくるんだろう」と議論を納めた。

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