DPC、「調整係数」廃止で大混乱?
■調整係数の廃止、「医療の質低下につながってはいけない」
4月10日のDPC評価分科会で厚労省は、「DPCにおける今後の課題についての検討」と題して、▽DPC対象病院への参加と退出のルール▽調整係数廃止後の包括評価点数の在り方―の2点について論点を示した。
「DPC対象病院への参加と退出のルール」では、(1)DPC対象病院の条件を満たせなくなった場合の取り扱い(2)「一定のルールの下に、自主的に」DPC対象病院から出来高病院へ退出する場合のルール(3)一度退出した病院が、DPCへの再参加―の3点を挙げた。
「調整係数廃止後の包括評価点数の在り方」では、「DPCでは、入院初期に手厚くなるように包括評価しているものの、救急疾患などにおいては入院初期の医療資源投入量が包括評価点数を上回る場合があることが、以前から指摘されている」として、新たな点数の設定について意見を求めた。
同日の分科会では、「新たな機能評価係数」の選定に関する議論が2時間近く占めたため、「DPCにおける今後の課題」の本格的な議論は次回に持ち越された。
「DPCにおける今後の課題」について、同日の分科会で出された意見は次の通り。
【西岡会長】
これ(DPCにおける今後の課題)に関して、どうぞ。
【齊藤壽一委員(社会保険中央総合病院名誉院長)】
DPCの参入、退出、再参入というのは大きな問題なんだろうと思うのですが、なかなかその実態がイメージしにくいので、この次の(分科会の)時に、不適切な参入があると、どういう不都合があるのか、比較的、退出してしまったときに、病院の意図で退出してしまったときに、どういう不都合が発生するのか、それから再参入の場合もそうですが、基本的なデータが集まりにくいとか、そういう基本的な問題は重要だと思いますが、そのほかに地域医療とか、医療政策の中であんまり勝手に出たり入ったりすると、どういう不都合が発生するのかというあたりの議論がぜひ知りたいなぁーと思うんですよね。
それ以外は、あんまり不都合がなければ、私のイメージとしては、病院の意図がかなり重んじられてもいいのかなという気もしないではないですが。そんなところです。
【西岡会長】
これ(退出、再参入)は、(3月25日の中医協)基本問題小委員会に出席した時にも、少しお話が出ていたのですが、「出来高の方がいいから(DPCから)出ようか」とか、「包括(DPC)の方がいいから戻ろうか」とか、そういったことが起こってくる可能性も出ております。「そういうことは絶対許せないような形にした方がいいんじゃないか」というご意見は出されております。
【齊藤委員】
それを許すとどういう不都合が発生するのか、そこが......、ちょっと知りたい。
【西岡会長】
実際には、調整係数その他を、そのたびごとに計算しなければいけなくなりますし、それと、年度の途中で調整係数をつくるというのは、少し事務的に不可能に近いということもあるのではないかと。
【齊藤委員】
十分な準備期間とかですね、そういうものは当然、どっちにするにしても必要だと思うんですが、「本質的に好ましくない行為なのかどうか」というところは慎重に考えた方がいいのかも、という気がします。
【西岡会長】
はい、ありがとうございます。
【相川直樹委員(財団法人国際医学情報センター理事長)】
「調整係数廃止後の包括評価点数の在り方」で、(厚労省から)救急の説明がございましたが、これにも関連するんですけれども、救急の現場ですと、いろんな患者さんが来て、外来でですね、CTなりMRIなり、いろんなものをやった上で、鑑別診断をして、一晩入院ということになりますが、外来のものも包括に入ってしまう訳ですよね。
そうすると、結果的には、非常に重症な患者さんを考えて、いろいろなことを否定するために、鑑別診断をするためにいろいろな投資をしているにもかかわらず、結果的には非常に軽症な患者さんで、1日か2日入院して帰る。こんなこと、かなり多いんです。これが、やはり評価されていない訳ですよね。
今までは、調整係数としてある程度評価されてた訳ですけど、そのようなことも考えていかないと。じゃ、「外来では適当に投資」っていうのですか、「いろんなことをしないで」というような、医療の質の低下につながってはいけませんので、ぜひ、その分は評価していただきたい。
【西岡会長】
それからですね、(相川委員から)ご意見をいただいたところですが、先程の2の項目(調整係数廃止後の包括評価点数の在り方)のところで、実際には、今までのDPCでひとくくりにしている中で、やはり不都合なことがあるんじゃないかというご指摘を(小委員会で)頂いています。
例えば、話題になっている病理医の検査なんですが、病理を一生懸命にやってらっしゃるところも、診断料は外に出ている(出来高になっている)のですが、(病理)標本を作る方は中に入っている(包括払いになっている)ということで、病理検査をやる施設もやらない施設も点数が同じだということになってしまいますと、医療の質そのものが問われてしまうということがあります。
そのことに関して、松田(晋哉・産業医科大教授が主任研究者のDPC)研究班では、いろいろご検討もいただいているように思うのですが......、(発言を)お願いいたします。
【松田研究班・藤森研司参考人】
調整係数の廃止に関しまして、診断群分類をもう一度見直す時期に来ているんだろうなというのが、研究班の考えです。ですから、調整係数というのは、診断群分類のつくり方と包括範囲の設定に、実は非常に大きな影響を受けるんですね。例えば、高額薬剤をどう扱っていくのか、あるいは輸血が現在(診断群分類番号の)97(その他の手術)に入っているんですが、ちょっと異質なものが入っていますので、そこをどういう風に整理していくのか。
あと、(慢性)腎不全の透析が、かなりのものについて、"引っ張っている"(入院の目的が他の疾病でも、人工透析をすると、最も医療資源を投入した傷病名が慢性腎不全となる)ということもございますので、そこをどうやって整理していくのかということも含めて、ぜひ分科会でご検討をいただきたいなと考えてあります。
併せまして、包括範囲の中で、若干、不整合がございます。例えば、「画像診断管理加算」は出来高でできているんですが、「検体検査管理加算」の方は包括になっていて、ちょっと部分的に合わないところがあります。
あるいは、(手術中に組織の細胞が癌細胞かどうかなどを判定するための)「術中迅速病理組織標本作製」という、"ドクター・フィー"っぽいやつが包括に入っているというのもありますので、(診断群分類の見直しも)併せてご検討いただければと思います。
【西岡会長】
ありがとうございます。実態としては、そういうところも大きく浮き彫りにされてきたという状況です。これについても、またご議論をお願いできればと思っております。何か、事務局(厚労省)、ございますか?
【保険局医療課・長谷川課長補佐】
特にございません。
【西岡会長】
あ、そうですか。そういたしましたら、今日は前の方の項目(機能評価係数の絞り込み)で、予定以上に時間を取ってしまって、(DPCにおける)今後の課題については、簡単なご意見を聴くだけに終わったのですが、次回はさらにこれを詰めさせていただきたいと思います。
時間になってしまいましたので、本日の議論はこれまでとさせていただきます。事務局から何か連絡事項などございますか。
【長谷川補佐】
事務局からでございます。次回の日程につきましては、追って連絡させていただきます。以上です。
【西岡会長】
それでは、「平成21年度第1回診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会」を終了させていただきます。本日はお忙しい中、ありがとうございました。(散会)
※「新たな機能評価係数」の選定に関する同日の議論は、「インセンティブを大きな病院に」をご覧ください。