自民党のPRビラで妊婦健診に火ダネ
08年度補正予算から妊婦健診14回分の費用を完全助成する交付金が盛り込まれた。しかし交付金を別用途に流用し、一部補助しかしていない自治体も多い。自民党が「完全無料」と広報しているために、「無料じゃないのか」と苦情をねじ込まれる産科医院から「何とかしてほしい」と悲鳴があがっている。(川口恭)
妊婦健診は健康保険の適用されない自費診療。費用は医療機関や時々の内容により異なり、1回1万円弱程度のことが多い。推奨される間隔で受けると全部で14回になる。
国はこれまで1人あたり特に大事な5回分にあたる約54,000円を地方交付税で自治体に渡してきた。これが10年度までの時限措置で補助金と交付金が増額され、平均的な14回分にあたる1人あたり約118,000円になった。
ただ、地方交付税は「紐のつかないお金」で自治体が使い道を独自に決められるため、妊婦健診に全額充てられるとは限らない。実際、日本産婦人科医会が2月に支部を通じて調べた際には、完全無料化されていたのは1自治体しかなかった。多くの妊婦が金額は減ったものの自己負担をしているのが現状だ。
ところが、自民党が制作した08年度補正予算を解説するパンフレットの3頁目には、「妊婦健診(14回分)が無料化されます」としか書いておらず、このパンフレットを元に有権者に成果を触れ回っている議員や候補者がいる。
自民党が、選挙民と窮乏する自治体との両方に良い顔をしたツケが、ただでさえ妊産婦との信頼関係構築に細心の注意を払っている現場の産科医院にかぶさってきている。
同様の「交付税」を使った医療関係施策としては、総務省が09年度予算で「がん検診」向けの交付金を08年度の649億円から1300億円へと倍増させているが、このお金が本当に検診に使われるか懐疑的な見方も強い。