重症の小児患者、「助かる命が救えない」
■施設が足りない
小児救急をめぐっては、重篤な小児を受け入れる「3次救急」の不備が問題となっている。全国214か所の救命救急センターは「小児を含むすべての重篤な救急患者を24時間体制で受け入れる」とされているものの、小児救急の専門病床があるのは、2007年12月1日現在でわずか6か所(19床)しかない。
一方、小児医療を専門に扱う「こども病院」など、大型の小児施設は全国に約30か所あるが、重篤な小児患者の集中治療を行える施設(PICU)を持っているのは、08年3月末現在で15施設。小児救急の整備が急がれるが、「小児医療の不採算性」が大きな壁になっている。
北九州市立八幡病院の副院長で、小児救急センター長を務める市川光太郎委員によると、同院の年間外来患児数は約4万5000人(時間外2.5万人)、年間の入院患児数は約2600人だが、03年から06年の4年間にICU(集中治療室)に入った幼児は約80人だという。
少子化で小児医療が不採算部門となり、小児科病床を削減したり閉鎖したりする病院も出る一方で、小児科医の過酷な労働環境も問題となっている。
現在、重篤な小児患者は集中治療室(NICU、PICU、ICUなど)以外の小児病棟などで、人工呼吸などの集中治療を受けている場合が多いという。また、救命救急センター専用のICU(集中治療室)で、重篤な小児患者が成人と混在して集中治療を受けていることも問題になっている。重篤な小児患者に対する専門的な集中治療を行えないことが、幼児死亡率の悪化につながっているとの指摘もある。
こうした中、厚労省は3月に「重篤な小児患者に対する救急医療体制の検討会」を設置し、重篤な小児患者の集中治療を行える施設(PICU)の整備に向けて2回にわたり議論を重ねた。
3回目を迎えた4月23日の同検討会で、厚労省は「小児救命救急医療の今後の整備(案)」を示した。その中で、「重篤な小児救急患者に対する救命救急医療を小児救急医療体制の中に位置付ける」としたほか、小児の救命救急医療を担う医療機関として、「小児救命救急センター」(仮称)の整備などを打ち出した。