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火だるまになっても「概ね了承、座長一任」~医道審医師臨床研修部会

 医師の卒後臨床研修制度見直し案について検討してきた医道審議会・医師臨床研修部会が23日開かれた。この見直し案は、先週まで募集されていたパブリックコメントで各方面から強い批判を浴びており、この日の会議でもいくつかの点に関して複数の委員から繰り返し再検討を求める意見が出た。だが最終的に、この日から部会長になった相川直樹・慶應義塾大学名誉教授が「概ね了承された。ご意見の反映については一任いただいてもよろしいか」と辻褄を合わせた。(川口恭)

パブコメ1.JPG パブリックコメントには、全部で1241件の意見が寄せられた。3000人近い賛同署名を集めた『医師のキャリアパスを考える医学生の会』のものも1件としてカウントされている。この日の部会で配られた資料では左のようにまとめられ、




見直し1カ所.JPGパブリックコメントを受けての実質的な修正も左の赤字の1カ所に留まった。厚労省が努めて大枠に影響を与えるものではないように扱おうとしたことが伺われる。だが、部会委員たちの心境には変化があったと思われ、注文が相次いだ。

 意見の口火を切ったのは山下英俊・山形大病院院長。
「未だに納得できないのが、都道府県の定員上限枠。本当に先ほどの説明で説明責任を果たしているのか。なぜこの数字になるのか分からないので改めて説明してほしい。試算によれば大きな変化がある。大きく減る所には一生懸命やっている病院が含まれている。どういう理由で切られたのか納得がいくか、質ではないわけだから、だったら質の検証は今後どうやってやるのか。現時点では、この導入は時期尚早、改正から外すべきと考える」
 真っ向から異論を唱えた。ただ、山下院長は一貫して「正論」を述べ続けており、ここまでは予想通りだった。

 事務局の田原克志・医師臨床研修推進室長
「定員に上限枠を設けたのは、研修医の大都市集中が変わらないという指摘を受けたから。なぜこの数字になっているか分からないと言われるが、上限を定める際に人口と医学部定員から設定してはどうかと考えた。患者側のニーズからと医師養成のサプライヤー側からと両方の視点、いずれも大事だから両方採用した。ほかに面積あたりとか離島とかの要素も考慮しており、我々としては合理的な設定だと考えている。大きく減る所があるとのご指摘だが、こういう視点で考えた時、都会の病院は減らさざるを得ない。質の検証がないという点は、臨床研修指定病院に認定されている時点で一定の質が確保されている。あとは研修医が個人として合うかどうかで病院が選ばれているのだと考えている」

山下
「そういう議論をするなら、まずデータを出すべきでないか。それも過去からの推移があって議論するのがサイエンスだろう。研修指定病院は質が担保されているというけれど、それを示すデータもない。研修の質の検証をやってきたかと言えばやってない。いいという保証がない。これは国民の医療に直結する話。少なくとも全国医学部長病院長会議では、現在の研修指定病院の質の保証は不十分だと言っている。それに対する反論はされていないではないか」

田原
「データについては、これまでも都道府県別のものは臨床研修制度の始まる前と比較したものは示している。それによれば東京や大阪、京都といった所が100人以上減らしていたが、そういう客観的な指標とは別に、現在の人口や学生定員から見た時に多いか少ないのか必要なデータは示していると思う」
 官僚が共産党の国会質問に対して答弁しているのかと錯覚するような木で鼻をくくったような答えだ。これまでは、山下院長が突出していた印象で、後に意見が続かなかったのだが、ここからが予想と違った。

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