重症の小児患者、「助かる命が救えない」
■集約化しても医師がいない
中澤座長は「今まで小児救急は『3次救急』として成人と一緒だったが、既存の位置付けでいいか、『小児救命救急センター』という名前はどうか」と、意見を求めた。
山田至康委員(順天堂大浦安病院救急診療科教授)は「小児の救命救急センターをつくるべきで、これをメーンに掲げることが必要」と賛成しながらも、「すぐにできるものではないので、これと並行して、現在の救命救急センターに小児専門の病床を設置することが必要。この2つの流れを進めるべき」とした。
阪井裕一委員(国立成育医療センター総合診療部長)は、「大人と子どもが一緒よりも子ども専門の救急の方が救命率がいい。小児の3次救急はPICUに集約する方向だ」として、PICUの整備に賛同した。
田中裕委員(順天堂大医学部救急災害医学教授)は「救命救急センターにトレーニングを受けた専従の小児科医がいれば、重篤な小児の救命は可能。集約化も重要だが、トレーニングを受けた小児科医がどこにでも配備できれば進むだろう」と述べた。
しかし、小児科医の不足が深刻化する中、さらに小児救急の専門能力を身に付けた医師を全国214か所に配置することは可能だろうか―。
中澤座長は「施設と医師、どこで育てるか。『こういう(小児救急という)専門分野があって、高い意義がある』ということを小児科医たちにイクスポーズする機会が少ない。逆に、トレーニングした者が『来たい』と言うか、この辺で意見は分かれると思うが......、いかがだろうか」と、さらに意見を求めた。
杉本壽委員(大阪大医学部救急医学教授)は「小児救命救急センターをつくろうという話はいい。ただし、現実の問題として、PICUを果たしてどれだけの小児科医がやるのか。言い換えれば、(受け入れる)『キャッチャー』として、実際に何人の医師がいるかを考えないと現実化しない」と述べ、こども病院など小児の専門病院に小児の集中治療室を併設することを同時に進めていく必要性を訴えた。
その上で、「ニーズに対してどれだけ応えられるか。これはかなり限られているから、やはり"並列"していかないと、助かる患者が死んでしまうのを止めることは難しい。われわれの目標は、亡くなる小児をいかに助けるか。そのためには、今、持っているものでどういうことをやったらいいのか」と指摘した。
これに対して、宮坂勝之委員(長野県立こども病院院長)がやや難色を示した。「杉本委員と全く同じで、こども病院が小児の救命救急センターを持つのは当然。しかし、『明日からやります』と言われても、現実には小児科医や小児の外科系の先生の意識は、まだ教育段階というのも事実だ」
その上で、宮坂委員は次のように述べた。
「交通事故で多発外傷の患者(幼児)が来た場合、(長野県立こども病院で)扱えないことはないが、それよりは隣の救命救急センターに行っていただいた方がいい。または、うちでまず診て、それから送る。(当院は)信州大学(医学部附属病院)と関係が良いので、『どちらが先に診た』ということは、あまり文句が出ない。しかし例えば、そういう患者さんがまともな脳外科医もいないところにまず行ったのはどうしてか、という議論になるとなかなか先に進まない。まとめると、子どもの専門病院に小児の救命救急センターができるような方向づけは必要だという結論と、現実に救命救急センターとどうやっていくかという2つに整理するといい」
委員からの意見を受け、中澤座長は「今まで、PICUをつくるという話が中心だったが、『小児専門病床』にもいくつかの形がある。まずは入り口や骨格を固めてから中身をつくる形で議論したい。教育や研修などの問題もある」とまとめた。