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集約化か、救命救急センターの活用か―重篤小児の救急医療

大内専門官(右).jpg 「緊急に行うべき取り組みは、現在ある医療資源を活用して、重篤な小児救急患者を受け入れる『超急性期』の医療を確実に提供する体制を構築すること」―。小児救急の集約化をめぐって揺れた厚生労働省の「重篤な小児患者に対する救急医療体制の検討会」は5月29日、同省が示した中間取りまとめ案を大筋で了承した。重篤な小児救急患者を24時間体制で受け入れる「小児救命救急センター(仮称)」を全国に整備する方針は一歩後退したが、集約化への道筋は残している。(新井裕充)

 小児救急をめぐっては、重篤な小児患者を受け入れる「3次救急医療体制」が課題となっている。2009年4月1日現在で全国に218か所ある救命救急センターは、「小児を含むすべての重篤な救急患者を24時間体制で受け入れる」とされているものの、小児救急の専門病床があるのは、07年12月1日現在でわずか6か所(19床)しかない。

 このため、厚労省は3月に「重篤な小児患者に対する救急医療体制の検討会」(座長=中澤誠・総合南東北病院小児・生涯心臓疾患研究所長)を設置し、重篤な小児患者の集中治療を行える施設(PICU)の整備に向け、これまで4回にわたり議論を重ねた。

 同検討会では、「重症の小児患者を救命する3次救急医療体制を整備する」という総論部分では意見が一致しているものの、「小児救命救急センターの全国整備」について解釈が分かれている。

5月29日の重篤小児検討会3.jpg 全国約30か所の小児専門病院に小児救急を整備していくべきという立場と、全国に218ある救命救急センターに小児の救急医療を普及させてセーフティーネットを充実すべきとの立場が対立している。

 厚労省は5月13日の前回会合で「中間取りまとめ(骨子案)」を示したが、同様の議論が繰り返されて意見集約に至らなかった。

 5回目を迎えた5月29日の会合で厚労省は、「緊急に行うべき取り組み」と「将来的に進むべき方向性」の2つに分ける考え方を提示。「緊急に行うべき取り組み」は、現在ある医療資源を活用して、重篤な小児救急患者を受け入れる「超急性期」の医療を確実に提供する体制を構築することとして、「集約化」の方針を一歩後退させた。

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