「重篤な小児患者に対する救急医療体制の検討会」第4回
■消えた「小児救命救急センター」(仮称)
意見交換では、小児の救命救急医療を担う医療機関の要件を中心に議論したが、意見を集約できなかった。
委員の間では、重症の小児救急患者を24時間体制で受け入れる「小児救命救急センター」(仮称)の整備を推進する意見と、既存の救命救急センターに小児の集中治療室を徐々に整備していくべきとの意見があり、議論が錯綜している。
厚労省は4月23日の前回会合で、小児の救命救急医療を担う「小児救命救急センター」(仮称)の整備を打ち出したが、今回の骨子案では、「小児救命救急センター」(仮称)の文字が姿を消した。
救急医療体制の整備をめぐるこれまでの動きを振り返ると、同省の医政局指導課が2007年12月から08年7月にかけて、「救急医療の今後のあり方に関する検討会」を開催。その中で、「ER型救急」のモデル事業の提案などを通じて救急医療の拠点化・集約化を目指したが、"箱物行政"に対する批判などを受けて頓挫(とんざ)したという経緯がある。
同検討会の昨年7月30日の中間取りまとめでは、「医療機関、第二次救急医療機関については議論を行ったが、方向性を十分に示すところまでには至らなかった」とした。
しかし、次につなげる布石は打ってあり、「特定の診療領域を専門とする医療機関や高度救命救急センターのあり方についても重要な課題であり、引き続き、議論を行っていく必要がある」と書き残した。
このような経緯から、「重篤な小児患者に対する救急医療体制の検討会」は、医政局指導課長による「救急医療の今後のあり方に関する検討会」の作業部会という位置付けで、今年3月4日に設置された。
医政局は、「小児の3次救急」に"ギア"を入れ替えて、救急医療の拠点化・集約化に向けて再び走り出したように見えたが、険しい道のりが続いている。
同検討会では、「重症の小児患者を救命する」という総論部分では一致しているものの、「小児救命救急センターの整備」という"箱物"による解決に反対し、現在の医療資源を活用しながら進めていくという"現実路線"の意見が根強くある。
重症の小児患者を受け入れる医療機関の要件をめぐる議論では、都道府県の圏域を越えて小児救急を専門に扱う「小児救命救急センター」(仮称)を念頭に発言する委員と、「既存の救命救急センター」に小児救急を普及していく立場から発言する委員との間で、意見がかみ合っていない。
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