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消防側が医療側に乗り出す"転換期"-救急搬送・受け入れルールに、有賀徹昭和大教授

 昭和大医学部の有賀徹教授は2日、都道府県に策定が義務付けられた救急患者の搬送・受け入れルールについて、これまでほとんど医療側のみで議論されてきた医療提供体制について、消防機関側が医療機関側と同じテーブルで議論し、医療提供体制の構築に乗り出すという"転換期"をもたらすものになるとの見方を示した。(熊田梨恵)

■搬送・受け入れルールについての詳細は、こちら
 
 国内で頻発する受け入れ不能問題を解消するため、10月30日に施行した改正消防法は都道府県に救急患者の搬送・受け入れルールの策定を義務付けている。有賀氏は、国が示したルール策定の指針となるガイドラインの作成にも関わり、東京都でルール策定の具体的な業務を行っていく委員会の委員長も務めている。
 
 このルールを策定するためには、医療機関側は消防機関に対して、どんな患者なら受け入れることができるかという患者の状態像や、受け入れ可能な時間帯や曜日など実際に対応が可能な要件を示さなければいけないことになる。ホームレスや薬物中毒の患者などいわゆる"ブラックリスト"への対応など、現場レベルのルールで対応してきたケースについても議論せねばならず、搬送実績をデータ化していく必要に迫られる。有賀氏は、「消防側から医療機関側の"クオリティ"を出せと言っているということ。このルール策定は、『医療』を『電気』や『水道』と同じ、地域のインフラストラクチャとして把握していく、ということに発展する話。救急業務と救急隊が地域のインフラストラクチャをする、ということ」と述べた。
 
 ただ、「改正消防法は消防機関に(ルールの)遵守を義務付けているが、医療機関には『ルールを尊重するよう努める』という、協力するという趣旨。"お願い"ベースでは何も起こらない。そういう問題をはらんだまま進むことになる」との懸念も示した。

 
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