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ニュース〜医療の今がわかる

これ以上 千葉を崩壊させない


――お話を伺っていると全国的な話で、千葉県で括る理由もなさそうですが。

もちろん全国共通の課題ですから、よその地域とも連携していきたいと思っていますが、千葉県に住んでいる以上、まず千葉県の問題からやろうということです。Think Globally Act Locallyです。先ほど申し上げたように、千葉ならではの状況もあります。

――千葉ならではの状況を、もう少し詳しく教えていただけますか。

千葉県は620万人も人口があるのに、医学部が千葉大1カ所にしかありません。隣の東京都は人口1千3百万人いても医学部も13ありますから、その差は大変なものです。その千葉大1つで地域医療の施設から高度先進医療の施設まで、県内の公的病院ほぼ全部を支えてきました。ところが臨床研修制度開始までは、研修医が毎年180~200人程度入っていたのに、制度開始後は80人も入らないようになってしまったのです。卒業生も3割しか残りません。当然のこととして公立病院に千葉大から人が来なくなった。それが5年間続いたことによって、公立病院は限界近くまで人が足りなくなっているんです。

銚子市民病院だけではなく、態勢縮小や崩壊の危機が論じられている公立病院もいくつもあります。新型インフルエンザ騒動は、成田赤十字病院にもボディーブローのように効いているはずです。このままだと3年もたずに、悲惨な状況が起きるでしょう。今のところ何の対策も取られていません。

県立病院には病院事業管理者がいて、しかも雇用条件は県の規則で決められているのに、医師を確保するのは病院長の責任なんです。県立佐原病院の院長だった5年前、臨床研修が始まれば医師が減少することを見越して、医師定員26人のところ一時的に28人雇ったら、県から文句が出て苦労しました。雇える時に雇っておくべきなのにねえ。その時、銚子市民病院には38人の常勤医がいて羨ましく感じた思い出があります。それが、あっとういう間にあの状態です。壊れ始めたら早いんです。

――千葉県出身者として背筋が寒くなります。

悪い話ばかりではありません。千葉県には医療資源はあるんです。亀田総合病院と旭中央病院という全国から医師が集まる臨床研修指定病院が2つもあります。それから、がん領域に関しては、国立がんセンター東病院、放射線医学総合研究所という世界に冠たる施設がありますし、千葉県がんセンターも含めて研究施設の集積もあります。国際空港も持っています。人口が多いですから、それなりに税収もあります。きちんとした医療政策さえあれば、崩壊を食い止められると思いますし、それだけでなく医療産業が興って経済を支えるような素地は十分にあるとも考えています。

ただし、あまり時間的な猶予はありません。医療資源とは、設備ではなく人であり、単なる人ではなくチームです。医師や看護師だけいてもチームになりません。受付の人や会計の人や掃除の人まで全員引っくるめたものがチームです。そういうチームを作るのには時間がかかる一方で、一度壊したら一気にゼロに戻ってしまいます。今頑張っているチームを維持できるよう早急に手当てをしないといけません。まずは、そこが一番大事です。

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