これ以上 千葉を崩壊させない
3月末まで千葉県がんセンター長を務め、この程『医療構想・千葉』というシンクタンクを設立する竜崇正氏にインタビューした。(川口恭)
りゅう・むねまさ●1968年、千葉大学医学部卒業。92年、国立がんセンター東病院手術部長。99年、千葉県立佐原病院院長。2005年、千葉県がんセンター長。
――『医療構想・千葉』とは何ですか。
医療に関するシンクタンク的ネットワークです。医師や患者という立場を超え、医療現場から声を出し合い、熟議し、実効性のある医療ビジョンや政策提言を打ち出して、政治家、行政、マスコミに伝えていきます。政策提言するだけでなく、もし医療をないがしろにする政治家がいれば、「選挙で落とすぞ」という強いメッセージも出していきたいと考えています。
――なぜ、つくろうと考えたのですか。
銚子市民病院のことなど皆さんもご存じと思いますが、千葉県では全国を先取りするような形で医療崩壊が進んでいます。私は、その大きな原因が過去8年の堂本県政にあると考えたので、森田健作氏が当選した3月の知事選に出馬しようかと真剣に思い詰め、記者クラブで会見までやりました。会見後に全候補が私の政策を取り入れると約束してくれたので出馬しなかったのですが、結局のところ知事選で医療は争点にならず、しかも私の政策が実行に移されるメドも立っていません。私を応援しようと集まってくれて、この間の経緯を眺めていた医師、看護師、患者体験者、学生といった方々の間で、もはや自分たちで何とかするしかないと機運が盛り上がってきて、結成することになりました。そういう学生さんやボランティアたちで、13日のシンポジウムの準備はどんどん進んでいます。
問題を解決するには、内輪で文句を言っているだけではダメです。最終的には政治を動かさなければならないし、政治は投票によってしか変えられない。投票を変えるような国民的議論を起こすには、まずマスコミを巻き込まなければならない、そういう連鎖を起こすにしても、最初に現場が声を上げない限り、何も始まらないでしょう。
現実問題として、何らかの組織のあった方がマスコミに取り上げられやすいというのもあります。3月まで私は県の医療職トップとしてポジションパワーを持っていたので、個人として情報発信できましたし、マスコミにとってニュース価値もあったと思います。でも4月からは、そういうわけにいきません。一方、県職員の立場では、県の方針に異を唱えるようなことは非常にやりづらかったのですが、これからは自由に発言できます。裸になって、もう一度同士の人たちと一緒にやっていきたいと思っています。