妊婦の搬送コーディネーター、年度内開始に向け議論―東京都
東京都は今年度中にも、受け入れ先が見つからない妊婦の搬送先について、東京消防庁内に配置された助産師が調整する「搬送コーディネーター」をスタートさせる予定だ。都の周産期医療協議会は、今年1月から多摩地区で助産師によるコーディネーターを実施している杏林大附属病院の話を聞きながらディスカッションした。委員からは「ベテランでなければ消防庁内でコーディネートするのは難しい」などの意見が上がった。(熊田梨恵)
国内で相次いだ妊婦の救急受け入れ不能問題を受け、搬送先が見つからない場合の調整役を担う「コーディネーター」を設置する自治体が出てきている。
札幌市では、昨年10月から市の夜間急病センター内に二人の助産師を「情報オペレーター」として配置し、救急搬送の受け入れ調整を行っている。札幌市の資料によると、助産師は夜7時から翌朝7時の間に対応し、それぞれ6つある2次、3次救急病院に電話して産科やNICUの空床情報を確認。各病院は「〇」(空床あり)、「△」(満床だがやりくりできる)、「×」(受け入れ不可)で回答する。また、救急隊からの搬送先に関する問い合わせにも対応する。このほか、医療機関にかかるべきか否かの判断がつかないなど、患者からの相談も受け、必要に応じて医療機関の受診を勧めるなどのアドバイスも行っている。
東京都も、昨年秋に起こった妊婦の救急受け入れ不能問題を受け、搬送コーディネーターの設置に乗り出した。
ここでは、今年度中にコーディネーターの運用を開始するとしている、東京都の議論の内容を紹介する。
....................................................................................................................................................................
東京都の周産期医療協議会は、24時間体制で重篤な症状の妊婦を受け入れる「スーパー総合周産期センター」設置に関する議論とともに、搬送コーディネーター設置の検討も開始していた。
加えて、猪瀬直樹副知事が昨年秋から実施してきた、周産期医療体制整備プロジェクトチーム(PT)も協議会に提言を提出しており、従来の周産期医療情報システムに頼らない「母体・新生児搬送コーディネーター(仮称)」の設置を要望。PTが札幌市で視察した情報などを参考に、コーディネーターに調整を依頼する際は、患者情報が分かりやすく記載された患者情報連絡票を使うことなどを求めていた。
こうした中、昨年度の協議会は次の事項を決定していた。
・コーディネートの対象...従来の周産期医療システムの対象である母体搬送と新生児搬送。「スーパー母体搬送」ケースは調整しない
・搬送調整の流れ...原則として、総合周産期母子医療センターが調整しても、管轄区内での受け入れが困難な場合に、コーディネーターに搬送先選定を依頼する
・コーディネーターの職種...原則として、助産師または同等の知識を有する人
・設置場所...東京消防庁内が望ましい
・PT提案への対応...コーディネーターの応需情報の把握(吸い上げ方式)については、都の実情に即して実施を検討
今年度内は、制度開始に向けてのマニュアル作成など具体的な運用方法や、搬送困難ケースの情報収集や検証の方法などについて議論する。
協議会は5月21日に開いた今年度の初会合で、搬送コーディネーターの運用に関する議論を開始。約400万人の人口を抱える多摩地区で、唯一の総合周産期母子医療センターである杏林大学附属病院は、既にコーディネーターとして助産師を配置し、搬送先調整を実施している。委員は杏林大の現状をヒアリングしながら議論した。
- 前の記事これ以上 千葉を崩壊させない
- 次の記事回答率が上がると、開業医の報酬が下がる?