報酬改定議論に必要な調査項目が足りない-中医協慢性期包括評価分科会
2010年度診療報酬改定で慢性期医療の評価に関して議論する中央社会保険医療協議会(中医協)の「慢性期入院医療の包括評価調査分科会」(分科会長=池上直巳・慶大医学部教授)。改定の議論の大元となる調査について、事務局は分科会に諮らずに独自の判断で実施したが、次期改定の主要項目である「医療の質の評価」に関する項目が不十分だった。分科会として報告をまとねばならない時期が目前に迫るためやり直しもできないが、委員からの指摘を受けた事務局は「追加調査の必要があれば、ご指示あれば検討します」と逃げ口上。調査の位置付けに疑問を呈した委員に対しては「ご議論できないということでございましょうか」と開き直った。(熊田梨恵)
中医協の下部組織になるこの分科会は、国が06年度診療報酬改定で導入した、患者の疾患や状態によって診療報酬に差をつける「医療区分」や「ADL区分」をつくった組織だ。2008年度診療報酬改定の前には、区分の妥当性などを検証するための「2006年度慢性期入院医療の包括評価に関する調査」を実施し、2007年夏頃にまとめた報告書の内容は、医療区分の評価項目の見直しや療養病棟入院基本料の評価の引き下げなどに反映されている。
今年度のこの分科会の主要テーマは、前回の報告書で検討課題として残されていた、慢性期包括医療への医療の質の評価の導入になる。このため、前回と同様に調査を実施するならば、その議論に必要な調査項目を揃える必要がある。事務局となる保険局医療課は「議論に必要なデータになるから」という認識の下、独自の判断で調査を実施していた。しかし、前回改定で見直された項目に関する調査は抜けているなど、内容は不十分。椎名正樹委員(健康保険組合連合会理事から指摘を受けた事務局は、他の団体が医療の質評価に関して「関係機関等でされていると聞いていた」と逃げ口上で、「追加調査が必要という指示があれば検討する」との返答にとどまった。
一方で、前回の議論を受けて、事務局が独自の判断で実施した今回の調査の位置付けについて疑問を呈した大塚宣夫委員(医療法人社団慶成会青梅慶友病院理事長)に対しては、「ご議論できないということでございましょうか」と開き直った。
委員と事務局のやり取りを紹介する。