「慢性期医療に質の評価導入を」―武久日本慢性期協会会長が中医協分科会で要望
2010年度診療報酬改定に向けて療養病棟などの包括評価について議論する中央社会保険医療協議会(中医協)の「慢性期入院医療の包括評価調査分科会」(分科会長=池上直巳・慶大医学部教授)で7月8日、武久洋三委員(日本慢性期医療協会会長)は在宅復帰率や医療区分改善率など、慢性期包括医療に対する「医療の質の評価」の導入を提案した。武久委員が議事録に残る形で成果主義を要望したのは初めてだ。(熊田梨恵)
武久委員の発言内容は次の通り。
「前回出した医療区分調査の中で、入院時医療区分の平均値よりよくなった患者は退院しており、悪くなった患者が亡くなっているという非常にクリアなデータをお示しした。回復期リハビリ病棟で重症度と在宅復帰率で、「回復期リハⅠ」「Ⅱ」と分けたように、診療の質の評価ということが、私がここの委員として参加していない時に決まったものだが、私もやっぱり医療療養、慢性期病床といえども診療の質を問題にせざるを得ないんじゃないかと思っている。
我々医療人としては、入院してきた患者さんをできるだけ早く適切に治療して、早く良くするというのが当然の理念。そういうことをきちっと真面目にしている病院に評価が高いというのは皆さんのご意見も同じと思う。
ここで提案したいと思う。回復期リハビリ病棟に診療の質を入れられたということもあり、慢性期医療についても、在宅復帰率。例えば、医療区分の改善率。すなわち入院した時の医療区分が3だったのが、3か月なら3か月見て、1とか1.5とかいうふうに軽快してきた人の割合が悪化した人の割合よりもある程度多くなれば評価するとか、方法はいろいろあると思う。それとか平均在院日数とか。そういういろんなことで、医療療養の中でも評価をして、よく頑張っているところには何らかの評価を与えるような仕組みをお考えいただければ、我々も現場からそのような努力をしていただけるように会員に徹底してまいりたいとも思っているので、慢性期医療の診療の質の評価ということで、6か月間の評価【編注】をお示ししたという段階で、我々としても、そういう方向にいくことにやぶさかではないということをお伝えして、私の報告を終わらせていただく」
【編注】武久委員が資料として提出した「慢性期医療の診療の質の評価―集計結果」の意。療養病棟に入院する患者への医療ケアについて6か月間の評価を集計したもの。
これまで開かれた2回の分科会では、慢性期包括入院医療の質の評価についての検討が積み残しになっていたとして、事務局が実施した「2008年度慢性期入院医療の包括評価に関する調査」の報告などを聞いてきた。事務局は「質の評価」を議論する方向性を示しており、委員もそのレールに乗ってはいるものの、これまでは分科会自体の在り方などの議論に多くの時間が割かれ、具体的な中身には踏み込んでいない。
武久委員が言及した回復期リハビリテーション病棟への成果主義導入については、2008年度診療報酬改定で、「回復期リハビリテーション病棟入院料1」に、「重症患者15%」、「居宅等復帰率60%」という基準が設けられた。ただ、この基準ができたことで回復期リハビリテーション病棟では入院判定時の患者の選別が進んでいるとされ、特に在宅復帰の見込みが少ない重度の脳卒中の後遺症の患者などの行き場がなくなっているとして批判の声が多い。
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