「なぜ必要な調査項目実施しないか」「予算の制約上です」―厚労省の慢性期医療調査に相次ぐ指摘
2010年度診療報酬改定に向けて厚生労働省が実施した慢性期入院医療に関する実態調査。しかしその内容は、本来なら同時期のデータとなるべき部分は揃っておらず、必要な調査項目は予算不足で実施できなかったという。このようなことで医療機関にとって正しい評価につながる診療報酬改定のための議論ができるのだろうか。(熊田梨恵)
7月8日の中医協の「慢性期入院医療の包括評価調査分科会」(分科会長=池上直己・慶大教授)には、昨年度に厚労省が実施した「慢性期入院医療の包括評価に関する調査」の、「コスト調査」と「レセプト調査」の結果が報告された。6月11日に開かれた前回会合では、「施設特性調査」と「患者特性調査」結果が示されており、分科会として議論するために必要な調査が出揃ったことになる。分科会はこの調査結果をもとに議論し、結果を上部組織である中医協基本問題小委員会に提出する。慢性期医療の政策に関する基本的な方向性はそこで決められる。この調査は今後の慢性期医療の方向性や医療機関経営を左右する重要なデータだ。
しかし、分科会に諮らずに事務局判断で実施されたこの調査については、委員から内容に関する不満や、データの不備についての指摘が毎回相次いでいる。
■5月27日第一回分科会-「慢性期医療への『質の評価』導入と、足並み揃わぬ中医協」
■6月11日第二回分科会-「報酬改定議論に必要な調査項目が足りない-中医協慢性期包括評価分科会」
今回も椎名正樹委員(健康保険組合連合会理事)からの指摘に対して、事務局の歯切れの悪い返答が続いた。
事務局と椎名委員とやり取りを紹介する。
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*レセプト調査と患者特性調査の時期がずれているため、データが比較できないことに関する指摘
[椎名正樹委員(健康保険組合連合会理事)]
今、分科会長から三つのデータが出ていると。それで時期がずれていると言う点なんですけども。事務局に確認したいんですけども、患者特性調査はいつの時点の調査か、まずそれをお尋ねしたい。
[事務局、佐々木健・保険局医療課課長補佐]
患者特性調査は平成21年3月の調査ということです。レセプト調査は1月ということです。
[椎名委員]
そこでなにゆえその時期がずれているのか。なぜ合わせなかったか。多分18年度調査は同じ時点でやっているはずですけども、その点いかがでしょうか。
[事務局]
それは調査を開始した時点ということで、月を揃えるということで実施を予定しておりましたけども、調査票自体かなりボリュームがありますから、病院の負担ということもありまして、調査時期というものを調整した関係上、レセプトはもらうだけですので、単純に抜くということでできるんですけども、調査票を記入していただくという部分は時間的な余裕を確保する必要があったということで、今回はずれてしまったということでございます。
[椎名委員]
18年調査は、その点はどうだったんでしょうか。
[事務局]
18年調査は同じ時点に合うように時間的な余裕を持って医療機関に依頼し、レセプトは抜くだけですので、それに合う形で国保支払い期間に依頼をして、合わせて実施したということです。
[椎名委員]
今の説明ですと医療機関サイドの記入者負担とかは、18年と20年調査のその間に特段の合理的な変化があったのかどうか。そういう話になってしまいますけども。ただいまの事務局の答弁だと。
[事務局]
20年調査に関して言うと、調査開始時期の関係で、1月に合わせるということで当初依頼をしておったわけですけども、調査ボリュームの関係上、1月の回収は難しいということになりましたので、3月ということにしたということでございます。
[椎名委員]
今度はボリュームという話が出てきたんですけど(笑)。要はあの、単なる疑問は、18年調査は時期が一致しているにも関わらず、20年度調査では患者特性調査の時期とレセプト調査の時期が違うのか、という疑問を持ったから先ほど来お尋ねしているのだが。要は結局、合わせようと思ったができなかったと。はっきり言っちゃえばそんな話ですか。
[事務局]
はい、そういうことです。
[椎名委員]
ああそうですか。はい。