慢性期入院医療、「データでは赤字は拡大していない」-中医協分科会
「診療報酬はマイナス改定だったが、マイナスの度合いが少なくなっている。リハビリに取り組むなどしてマイナスを改善したのではないか」。2010年度診療報酬改定に向けて慢性期入院医療の包括評価について議論する分科会で示された2008年度の実態調査について、厚生労働省の佐々木健保険局医療課長補佐は、06年度に実施した前回調査に比べて赤字額が減少しているとの認識を示した。(熊田梨恵)
厚生労働省は7月8日に開いた中央社会保険医療協議会(中医協)の「慢性期入院医療の包括評価調査分科会」(分科会長=池上直己・慶大教授)に対し、昨年度に実施した「慢性期入院医療の包括評価」の、「コスト調査」と「レセプト調査」の結果を報告。このデータは、2010年度診療報酬改定での慢性期包括医療の評価を左右するものだ。
コスト調査では、患者一日当たりの収支差額が示された。前回調査と共通している10病院について、要介護度などによって変わってくる患者への手間のかかり具合を加味した費用を前回調査と比較すると、医療区分1では▽ADL区分1、1192円赤字(前回調査、1519円赤字)▽ADL区分2、3459円赤字(3546円赤字)▽ADL区分3、3217円赤字(3326円赤字)。医療区分2では▽ADL区分1、1736円黒字(1700円黒字)▽ADL区分2、563円黒字(783円黒字)▽ADL区分3、233円黒字(486円黒字)。医療区分3では▽ADL区分1、5184円黒字(5414円黒字)▽ADL区分2、1195円黒字(1860円黒字)▽ADL区分3、563円黒字(1297円黒字)-という結果。医療区分1では赤字額は減少していたが、医療区分3では重度になるほど黒字額が減少する傾向が見られた。
この結果について佐々木課長補佐は会合中、「赤字全体が拡大しているというデータではない」と説明した。会合終了後、記者団に対し、「診療報酬はマイナス改定だったが、マイナスの度合いが少なくなっている。リハビリに取り組むなどしてマイナスを改善したのではないか。そういう取り組みが進んだと見えなくもない」と話した。
この調査について、事務局の説明と委員のやり取りをお伝えする。
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[事務局・佐々木補佐]
コスト調査の図表の見方でございますけども、左側が全病院ということで今回調査にご協力いただいたすべての病院のデータというものをまとめて解析したもの。右側が平成18年調査と20年調査に共通して参加を頂いている病院のデータを集めたもの。まず左側の全病院。医療療養病棟のうち、今回は44病院がコスト調査にご協力いただいた。
図表の1を見ていただきますと、人件費、材料費、委託費と、ありますが、人件費と材料費が若干上がっております。委託費、設備関係費、研究費等は若干下がっております。合計で見ますと、費用としては若干ですけれども20年度のほうが高いということでございます。
右側の共通病院ですが、これに関しては10病院ご協力いただいております。18年度と19年度では、図表2。先ほどのものと共通している傾向として、人件費、材料費がアップしておって、委託費、設備関係費、研究費は下がっておると。全体としてはアップしておるということで、金額は多少違いますけども、傾向としては同じ傾向ということでございます。
3、4ページ目。こちらも左側が全病院。右が共通病院というつくりです。左側の図表3、これは今回参加いただいた医療機関がどれぐらいの規模、ベッドを持っているかということを示したものです。図表3は、一番左の棒が平成18年のデータ。真ん中の棒が平成19年のデータ、これは医療施設調査のデータ。今回の施設調査に参加したのではなく、全国の療養病床持っている病院の傾向ということでございます。20年調査は右側の方で、今回の調査は若干ではありますが、規模が大き目の病院が参加しているという傾向があると思われます。
下の段、3ページ目の図表4。これは今回協力いただいた病院の療養病床だけのベッド数の施設割合。18年度、20年度調査と見ますと、ほぼおなじでございますが、20年調査のほうが若干大きいところが多いのではないかと思います。
右側の共通病院共通病院と二つ棒グラフが経っておりますが、左側のほうが平成12年医療施設調査の療養病床を有する病院の全国傾向。右側にあります棒が共通病院の傾向ということ。やはり大規模で病床数多いところがご協力いただいている。図表6は療養病床部分だけということで書いた分。共通病院だけという事でこういう傾向と見ていただければと思います。
5、6ページ。職種別人件費重み付けケア時間の算定、というもの。実はこのタイムスタディというものを、平成20年度調査では行っておりませんので、この職種別直接ケア時間については、平成18年のデータをそのまま活用するということで今回計算させていただいておりますので、図表7、図表9につきましては平成18年のデータです。これを前提にして、職種別賃金は図表8。これは両方調べていて全体的にはアップの傾向ということです。右側の共通病院の図表10。これにつきましても全体的に18年度に比べて上昇している傾向です。