「緩和ケア必要な子ども、6割はがん以外」-日本小児医療政策研究会
■地域の訪問看護師と病院の小児疾患専門看護師がサポート
私が住んでいたリバプールを中心とする英国の北西部の田舎の県。英国には11のプライマリケアトラストという大体2次医療圏のようなものがあり、人口10-20万人ぐらいだが、各プライマリケアトラストを小児専門訪問看護師チームが持っている。常勤換算で10万人に1人ぐらい配置されている。パートタイムで働いている人もたくさんいるので実際の人口的にはもっと多いが、小児人口ではなく、全体の町の人口10万人に1人程度、各地域に配置されている。訪問看護師の仕事内容と言われるものはほとんどしている。急性期の日帰り手術のフォローや抗生剤の投与、人工呼吸器もそうだし、ターミナルケア、疼痛管理、レスパイトケア、遺族のケアといった様々な小児医療のジェネラリストとして、小児プライマリケアをサポートしている。
そしてもう一方、小児病院の各疾患の専門ナースが訪問するというのがある。これは小児がんとか、てんかん、糖尿病、新生児など、さまざまな領域のクリニカルナースとして訪問してサービスを提供するというもの。全国22の小児がんの施設があるが、小児がん専門のナースはそういったところに配置され、現在小児進行がんの在宅死亡率は80%近くになっている。このように小児病院からの専門ナースが派遣されることで様々な効果が出る。
最近日本でも「NICUの出口問題」という名前も付いているようなので紹介すると、私の勉強させてもらった場所の近くの病院でも、このNICUナースと地域の訪問看護師がお互いに入り合って、訪問看護師がNICUに入ったり、NICUのナースが地域に訪問したりという形でお互いにフォローし合っている。マンチェスターでは母子分離期間が2週間短縮したと報告もある。こういった形で小児の訪問看護をはじめとした在宅ケアがコミュニティの中で政策的に進められてきたのがイギリスの一つの特徴。
ただ小児在宅ケアを進めていく上では先ほど言ったように家族の負担、身体的のみならず、精神的負担、社会的孤立というような孤独な中での政策をサポートする仕組みが同時に行われていないと、在宅ケアというのはういまくいかないというのは日本でも皆さん良く経験されることと思う。そういったことでレスパイトケアについて紹介する。
■子どものホスピスはレスパイトケアから死後のケアまで
レスパイトケアは家族に休息を与えるために子どもを預かるものだが、公的サービスと慈善団体による2種類のサービスがある。慈善団体の子どものホスピスを紹介する。27年前に世界で最初の子どものホスピス「ヘレンハウス」がオックスフォードにできて、その後イギリスでは急速に子どものホスピスが普及した。41施設が今活動しており、概ねイギリス全国に普及している。
子どものホスピスというと、大人のホスピスを想像し、がんのターミナルケアをしている印象がもたれやすいが、先ほど話したように、新生物は3.9%とわずか。過半数は神経筋疾患で、ほかは先天性異常の子どもたち、あるいは代謝内分泌疾患。
そういった子どもたちのレスパイトケアなどを経て、場合によってターミナルケア、死別後のケアまで継続してサポートしていくという、家族にっとては孤独からの解消を目指した場所になっている。非常にアットホーム、「ホームフロムホーム」と呼ぶが、家庭のような内装で、6-10床程度の非常に小さな施設。広い個室が一人一人に与えられている。レスパイトケア、ターミナルケア、死別後のケアを継続的に提供していくもので、年間100人から多いところでは300人近くが利用している。さまざまなレクリエーションのための遊具、ジャグジー、視聴刺激室など子どもの来たくなるということが子どものホスピスの条件。病院ではないということ。
こういったところで家族も宿泊できるというのが重要で、宿泊する家族もいればしない家族もある。どちらであっても家族は休息することができる状態。霊安室は冷房完備で子どもがなくなった後も家族は子どもと過ごすことができる。プライベートガーデンもある。一番大きい特徴は地域の寄付で運営されているということで、3-5億円かかるけどもほとんどが寄付で運営されている。
こういうことでイギリスの小児緩和ケアは在宅医療や子どもホスピス、レスパイトケアなどさまざまなチームが連携を取ってお互いを補いながら、活動しているということが言える。
最後に強調したい点を言う。子どもは、苦痛から解放される、緩和ケアを受ける権利がある。子どもは可能な限り入院を避けるべきということ。小児の専門スタッフへのアクセスが保障されるということ。それは子どものホスピスであり子どもの訪問看護師、子どものための専門ナース、小児科医であるということ。そして小児緩和ケアは多職種的な幅広いサポート体制が必要。英国は小児在宅緩和ケアが政府の優先課題。2007年には、障害児のレスパイトケアに対して800億円の助成が行われ、子どものホスピスへは100億円。こういう形でさまざまな小児緩和ケアに対する政府のお金が投入され、人材育成が進められてきた。
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