入院費の包括範囲の議論を開始したが......
がんの化学療法に使う高額薬剤など、DPC(入院費の定額払い方式)で包括評価されている項目を見直す審議が中医協の分科会でスタートしたが、早くも議論が錯綜している。救急医療の問題を議論しないとDPCの議論も進まず、逆にDPCの議論を進めないと救急医療の議論も進まないという硬直状態に陥っているようだ。(新井裕充)
厚生労働省は6月29日の中央社会保険医療協議会(中医協)・DPC評価分科会(分科会長=西岡清・横浜市立みなと赤十字病院長)で、「DPCにおいて今後検討すべき課題」について意見を求めた。
DPCでは、1日当たりの入院費の中に検査や投薬の費用が含まれているため、高額の薬剤を使用すると病院が赤字になってしまう恐れがある。このため、現在の点数表で包括評価されている高額薬剤などを出来高払いに変えるなど、包括範囲の見直しが求められている。前回の2008年度診療報酬改定でも同様の見直しを行った。
2010年度の診療報酬改定に向けた同日の審議では、高額薬剤のほか高額医療材料、術中迅速病理診断について包括評価の範囲から除外すべきとの意見もあったが、継続審議となった。
この日は、救急患者の検査などに掛かる費用も議論になった。厚労省は同会合の最初の議題で入院初期の診療報酬を引き上げることを提案して了承されている。このため、病院の持ち出し部分は「入院期間Ⅰ」の点数を引き上げることで補填されるとする意見と、それでは足りないとする意見が対立した。
DPCでは、救急患者を受け入れてMRIの検査をした結果、脳梗塞ではなかったような患者が入院した場合、外来での検査費がDPCに包括されてしまう。
これまでは、前年度の収入実績を保証する「調整係数」でカバーされていたが、来年度から段階的に廃止されるため、この部分の補填をどうするかが問題になっている。
このため、同日の議論は包括範囲の見直しと救急医療の評価などが絡み合って錯綜。厚労省の担当者は、「不採算、不採算と言っても、どの程度不採算なのかというデータはあまりないと思う。こちら(保険局医療課)でも調べてみたいと思うが、もし先生方で『これぐらい不採算なんだ』というデータがあればご提出いただき、DPC評価分科会で議論できるなら議論して、そのような材料を(中医協)基本問題小委員会に出して全体で議論していただく形にしてはどうか」と投げた。
救急医療の問題を議論しないとDPCの議論も進まず、逆にDPCの議論を進めないと救急医療の議論も進まないという硬直状態に陥っている。入院基本料の議論はまったく進んでいない状態。病院団体の関係者からは「このペースで大丈夫だろうか」と不安の声も聞こえる。「選挙が終わるまでは方向性を決められないのではないか」との声もあり、保険局医療課は難しい舵取りを迫られている。
以下、包括払い範囲の見直しに関する厚労省の説明と意見交換の模様をお伝えする。