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入院初期の点数引き上げを了承 ─ DPC評価分科会(6月29日)

< Ⅰ. 診断群分類点数表の見直しについて >
 

1. 一日当たり点数の設定方法
 
 厚生労働省は、「入院期間Ⅰ」(入院初期)の点数を引き上げる一方、入院日数が経過した「入院期間Ⅱ」の点数を引き下げる方法として、2つの案を提示。「入院期間Ⅰ」を「1日当たり包括範囲出来高点数の平均」、「入院期間Ⅱ」を減額する「案2」が了承された。

 厚生労働省によると、DPCの点数は現在、(1)診断群分類ごとの1日当たり平均点数 (2)平均入院期間 (3)入院期間の25(または5)パーセンタイル値─を基に設定し、「通常」と「短期入院」の2種類がある。

 「通常の設定方法」は、「入院期間Ⅰ」の点数を「入院期間の25パーセンタイル値」、がんの化学療法などを入院で行う「短期入院」の場合は「入院期間の5パーセンタイル値」などとして区別している。「25パーセンタイル値」とは、100件の入院があった場合に、入院日数の短い方からカウントして25番目の入院日数までの点数。

(1)通常の設定方法.jpg このうち、「通常の設定方法」について厚労省は次の2つの問題点を指摘した。

< 問題点 >
① 入院初期の医療資源の投入量が非常に大きい場合には、入院初期では、医療資源の投入量が診断群分類点数を大きく上回っていることがある。
② 入院期間を通じて1日当たり医療資源の投入量の変化が少ない場合には、入院期間Ⅱにおいて、医療資源の投入量が診断群分類点数表を上回っていることがある。
 このような問題を解消するため厚労省は、「実際の医療資源の投入量にあった点数表とするため、入院初期の医療資源の投入量及び1日当たり平均点数に応じ、さらに適切な点数設定の方法を検討してはどうか」とした上で2つの案を提示した。
(案1)
ア 入院初期の医療資源の投入量が、1日当たり平均点数に比して非常に大きい場合
 入院期間Ⅰの点数 : 点数の段差の設定を15%から25%に変更
 入院期間Ⅱの点数 : 入院期間Ⅰの点数及び1日当たり平均点数を基に、面積がA=Bとなるように設定
 入院期間Ⅲの点数 : 点数の段差の設定を15%から25%に変更
イ 入院初期の医療資源の投入量が、1日当たり平均点数に比して小さい場合 (略)
ウ 他の場合は、現行の「(Ⅰ)通常の設定方法」により点数表を作成 (略)

(案2)
ア 入院初期の医療資源の投入量が、1日当たり平均点数に比して非常に大きい場合
 入院期間Ⅰの点数 : 入院期間Ⅰの1日当たり包括範囲出来高点数の平均
 入院期間Ⅱの点数 : 案1と同じ
 入院期間Ⅲの点数 : 入院期間Ⅱの点数から15%減じた点数
イ 入院初期の医療資源の投入量が、1日当たり平均点数に比して小さい場合 (案1と同じ。略)
ウ 他の場合は、現行の「(Ⅰ)通常の設定方法」により点数表を作成 (案1と同じ。略)

 ※ 詳しくは、こちらをご覧ください。

2. 包括払い範囲の見直しについて
 
 カテーテルなどの高額な医療材料を出来高払いにするなど包括支払いの範囲を見直すべきとの意見もあったが、継続審議となった。

 厚労省は4月10日のDPC評価分科会で、「DPCにおける今後の課題についての検討」を示し、▽DPC対象病院への参加と退出のルール ▽調整係数廃止後の包括評価点数の在り方―の2点について意見を求めたが、時間不足のため「調整係数廃止後の包括評価点数」の議論は延期されていた。

 4月10日の同分科会で厚労省が示した「DPCにおける今後の課題についての検討」は次の通り。

[調整係数廃止後の包括評価点数の在り方について]

 調整係数の廃止による課題については、これまで「新たな機能評価係数」にかかる議論を中心に、当分科会で実施してきたところ。一方で、基本小委において、包括評価点数の設定方法等の課題についても、当分科会において検討を行うこととされた。

 (1) DPCでは、入院初期に手厚くなるように包括評価しているものの、救急疾患等においては入院初期の医療資源投入量が、包括評価点数を上回る場合があることが、以前から指摘されている。

 (2) その他

 6月29日の同分科会では、(1)について「一日当たり点数の設定方法」の見直し案を示し、了承された。(2)については次のように提案した。
[包括払い範囲の見直しについて]

 DPC制度においては、別紙7のとおり、出来高の点数表を基に、各項目の特徴に応じて、診断群分類点数及び医療機関別係数による包括評価と、出来高による評価を組み合わせることにより、点数を設定している。

 この包括評価の範囲について、見直しを行うべきとする意見があったが、どのように考えるか。

 4月10日の同分科会で、参考人として出席した藤森研司氏(松田研究班)は、次のように述べている。
 「調整係数の廃止に関して、診断群分類をもう一度見直す時期に来ているだろうというのが研究班の考え。調整係数は診断群分類のつくり方と包括範囲の設定に非常に大きな影響を受ける。例えば、高額薬剤をどう扱っていくのか、あるいは輸血が現在(診断群分類番号の)97(その他の手術)に入っているが、ちょっと異質なものが入っているので、そこをどういう風に整理していくのか。また、(慢性)腎不全の透析が、かなりのものについて、"引っ張っている"(入院の目的が他の疾病でも、人工透析をすると、最も医療資源を投入した傷病名が慢性腎不全となる)ということもあるので、そこをどう整理していくのかということも含め、ぜひ分科会でご検討をいただきたい。さらに、包括範囲の中で若干、不整合がある。例えば、『画像診断管理加算』は出来高でできているが、『検体検査管理加算』の方は包括になっていて、ちょっと部分的に合わない。あるいは、(手術中に組織の細胞が癌細胞かどうかなどを判定するための)『術中迅速病理組織標本作製』という、"ドクター・フィー"っぽいやつが包括に入っているというのもあるので、(診断群分類の見直しも)併せてご検討いただきたい」

 その後、包括払い範囲の見直しに関する審議よりも、「新たな機能評価係数」の絞り込みが先行したため、議論が延期されていた。

 6月29日の同分科会で松田晋哉委員(産業医科大医学部公衆衛生学教授)は、包括評価されている中に出来高にした方がいいものがあることを改めて指摘しながらも、次のように述べた。

 「(抗がん剤などの)高額な化学療法の薬剤費を(包括評価の)外に出す(出来高にする)と、外に出さない化学療法の扱いをどうすべきかという問題が出てきてしまう。そうすると、(点数表の)分岐で分けた方がいいかもしれない。また、高額医療材料については、インターベンション(手術)まで行けばいいが、検査だけで終わってしまって、同じ材料を使っているのに『手術等』にならない分類があるので議論しなければいけない」

 この日は意見がまとまらず、継続審議となった。

  ※ 詳しくは、こちらをご覧ください。

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