DPCの高額薬剤、出来高にせず ─ DPC評価分科会(7月6日)
抗がん剤など高額な薬剤を使用した場合、DPC(包括払い)では不採算になってしまう問題について、厚生労働省は出来高算定にせずに診断群分類のツリーを増やすことで対応する案を中医協の分科会に提案し、了承された。厚労省は、入院初期の点数設定の方法を変えれば赤字部分が解消されるとみているようだ。(新井裕充)
厚生労働省は7月6日、中央社会保険医療協議会(中医協)のDPC評価分科会(分科会長=西岡清・横浜市立みなと赤十字病院長)で、「DPCにおいて今後検討すべき課題」として、高額薬剤を使用した場合や人工透析をした場合の取り扱いなどについて論点を示し、意見を求めた。
DPCでは、1日当たりの入院費の中に検査や投薬の費用が含まれているため、高額の薬剤を使用すると病院が赤字になってしまう恐れがある。このため、現在の点数表で包括評価されている高額薬剤などを出来高払いに変えるなど、包括範囲の見直しが求める意見が同分科会で出ていた。
前回の2008年度診療報酬改定では、「化学療法あり・なし」で区別している診断群分類のツリー(分岐)を見直し、一部の高額薬剤(リツキシマブやトラスツズマブなど)について別の分岐を設定した。前回、新たに分岐を設定したのは、▽肺(040040) ▽大腸(060035) ▽直腸肛門(060040) ▽乳房(090010)─の4種の悪性腫瘍(がん)。
2010年度の診療報酬改定に向けた同日の分科会で厚労省は、高額薬剤を出来高算定にせず、現行通り診断群分類のツリーを分岐させて対応することを提案し、了承された。
高額薬剤を使用した場合の「コスト割れ」を指摘した委員に対し、厚労省は、入院初期の点数設定を引き上げることを説明した。
次期改定では、前年度の収入実績を保証する「調整係数」が段階的に廃止されるため、病院経営への影響が心配されている。
このため、厚労省は入院初期の1日当たり点数を引き上げるのは、「調整係数」廃止によるマイナス分を補填するためだと説明している。この「入院初期の点数引き上げ」という説明は、何度も使い回しがきくものなのだろうか。
「調整係数」の廃止をめぐっては、救急医療に及ぼす影響も懸念されている。DPCでは、救急患者を受け入れてMRIの検査をした結果、脳梗塞ではなかったような患者が入院した場合、外来での検査費がDPCに包括されてしまう。
これまでは、前年度の収入実績を保証する「調整係数」でカバーされていたが、来年度から段階的に廃止されるため、この部分の補填をどうするかが問題になっている。ここでは、「入院初期の点数引き上げ」という説明はもう使えないように思えるが、どうだろうか。
なお、高額薬剤を使用した場合の取り扱いなど、「今後検討すべき課題②」について、詳しくは次ページ以降で。