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薬価維持特例の試行的実施に向けて (1) ─ 中医協・薬価専門部会

■ 薬価制度改革案の補足説明 ─ 長野専門委員
 

[長野明専門委員(第一三共常務執行役員信頼性保証本部長)]
 専門委員の長野でございます。6月3日の業界代表意見陳述の折に、さまざまなご意見、ご指摘を頂いた。

 本日は、時間の関係から、前回頂いたご意見やご指摘の中から、いわゆる「薬価維持特例」の対象品目の考え方について補足的に、「薬価制度改革案について―補足説明―」というもの(資料)で説明したい。

 6月3日、あるいはそれ以前、薬価維持特例の対象範囲について、「特許期間中の新薬であって市場の平均乖離率以下のもの」というのが、日本製薬団体連合会(日薬連)、業界提案だった。

 一方、「革新性」というキーワードと「平均乖離率」というのは全くマッチしないのではないかという指摘を多々頂いている。それに着目して専門委員として補足させていただく。(中略)

1. 市場で認められた価値の評価

 ページ1をご覧いただきたい。「医薬品の価値」を2つに分けてみた。

< 医薬品の価値 >
・ 医療上の革新性 (新規性、有効性・安全性、治療方法改善性等)
・ 医療上の必要性 (対象疾患の菫篇性、治嘉法・治凛薬の希少性等)
 「医療上の革新性」は、新薬の薬価算定時の基準を主体にしたもの。

 「医療上の必要性」は、さらにそれに加えて、診療の場で先生方にお使いいただいた結果の価値がどれぐらいあるのかといった切り口。この2つに分けてみた。

 今、薬価算定ルールがあり、上市前の新薬はそのルールに基づいて薬価を決めていただいている。原価計算、有用性加算が付くもの、付かないもの、さまざまある。いったんその薬価で発売する。その後の価値は、医療現場の先生方が実感しているものがあると思う。

 駄目なもの、良いもの。しかしそれは、薬価改定ルール、つまり上市後の薬価改定ルールの中にはない。それを一定条件付きで、改定時にルール導入を検討していただけないかというのが、いわゆる「薬価維持特例」。

2. 薬価維持特例適用品日の選定方法

 2ページに、"切り口"をまとめた。①審査上の取扱いに基づく選定 ②収載時の革新性に基づく選定 ③患者数・市場規模に基づく選定 ④薬効群に基づく選定 ⑤乖離率に基づく選定─の5通り。
特例適用品目の選定方法0715.jpg 業界団体が提案しているのは、⑤乖離率に基づく選定。上市後に乖離率が判明するので、その乖離率に基づいて実際に販売した後の評価を基準にしてみたらどうか。日薬連(日本製薬団体連合会)はこれを「平均(乖離率)」と称している。

 一方、専門委員としていろいろ考えると、①から④に仕分けできた。①審査上の取扱いは、例えば、オーファンとか優先審査品目とか。

 あるいは②、薬価算定時の分類(原価計算品目、画期性加算、有用性加算)ではどうか。さらに患者数や市場の規模で決めたらどうか
とか。あるいは、病気の種類、いわゆる「薬効群」で対象を決めてみたらどうかなどがある。しかし、①から④はいずれも、発売後の先生方の評価が入ってこない。

 これら5分類、メリット、デメリットがある。例えば、国際共同治験とか、ドラッグラグの解消は「①審査上の取扱いに基づく選定」に分類されるという気がする。

3. 収載時の評価と市場における評価との関係について

 業界提案は、「平均乖離率」よりも乖離が小さいものを対象にしていただけないかということ。今、説明した①審査上の取扱い、②収載時の革新性、③患者数・市場規模、④薬効群─の中で1つに絞ると、「薬価収載時に高く評価された品目」。これに仮に限定してみてはどうか。それと、それ以外というところ。収載時評価と市場評価.jpg 仮に、「薬価収載時に高く評価された品目」を「原価計算品目および加算取得品目」にすると、新薬のトータルの金額中の、平成9年から17年の収載分としているが、これが大体新薬の中の4割。その中で平均を下回る乖離率の小さいものは、大体、新薬全体の28%、3分の1以下になる。

 それから、収載時にあまり評価されなかったが、使った先生方から高い評価を頂いているもの、これを市場の乖離率で見たときに、平均未満と見ると、6割のうちで大体3分の1ぐらいがあって、全体新薬の2割。これをどう見るかというところもある。

4. 乖離率でみた各製品群の位置づけ

 今のような考え方を平成20年度の薬価改定で見てみる。あの時は確か、(収載全品目の加重)平均乖離率が6.9%だった。(中略)

○ 医薬品市場は、異なる疾患領域に各々対応する機々な製品群の集合体である。
○ 各製品群の乖離率をみると、対象とする疾患領域の重篤性や市場規模・競合状態等によって、その状況は異なっている。
○ 例えば、ARBやスタチンなどの競合が激しい領域の製品は、総じて乖離率が大きく、がん等の重篤な疾患やH!V等の希少疾病などアンメット・メディカル・ニーズの高い領域における製品は、総じて乖離率が小さい。
乖離率による製品群の位置付け.jpg

5. 市場が大きく競合の激しい領域の推定乖離率の推移(事例①)

 5、6ページでは、話題になっているARBに、もしこのルールが入ったらどうなのかを過去の4回の薬価改定で見てみた。(中略)

同一薬理作用2番手までは乖離率は比較的小さく、3番手が上市された後は総じて乖離率が大きくなる。ただし、加算を取得した品目については、収職当初の乖離率が小さい場合がある。
推定乖離率の推移.jpg

6. 市場が大きく競合の激しい領域の推定乖離率の推移(事例②)
 
 HIV治療薬について。(中略。ほとんどが平均乖離率以下であり、市場が小さい領域では、参入している製品が多くても乖離率が総じて小さいことを説明)推定乖離率の推移2.jpg

 以上、ご説明を申し上げた。時間の関係で、これで終わりにしたい。

[遠藤部会長(中医協会長)]
 ありがとうございました。事務局(保険局医療課)で、今までの議論をまとめていただいた。それから、専門委員から追加的なデータが提出された。その両方について(の質問・意見)で結構。どの分野でも結構なので、ご意見を頂きたい。

 ※ 続きはこちらをご覧ください。

  
 
 (この記事へのコメントはこちら

 
 【目次】
 P2 → 製薬業界が提案する新薬の薬価改定方式(論点案) ─ 厚労省
 P3 → 薬価制度改革案の補足説明 ─ 長野専門委員

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