文字の大きさ

ニュース〜医療の今がわかる

"良い子"でない配合剤の薬価を引き下げ ─ 厚労省・薬価算定組織

7月15日の薬価専門部会.jpg 「配合剤」には、"良い子"と"悪い子"があるらしい。"良い子"の価格は現行通りだが、"悪い子"の価格は最大で3割引き下げるルールを厚生労働省が提案している。(新井裕充)

 「革新的な新薬」と対比される「配合剤」は、複数の異なる成分を組み合わせた新薬で、先発品の寿命を延ばすことに最大のメリットがあるとも言われる。

 先発品の特許が切れると後発品が登場するので、特許が切れる前に先発品同士を配合して、新たな先発品をつくる。つまり、"賞味期限"が切れそうなAとBを合体させて、新しいCという製品を生み出す。

 しかし、このような「配合剤」を無制限に認めると、後発品の使用が進まない恐れがある。そこで、診療報酬や薬価などを決める中央社会保険医療協議会(中医協)の委員らは、こぞって「配合剤」に反発している。
 例えば、「後発品の使用促進の邪魔をしないでほしい」、「単剤が両方使えるのに、なぜあえて配合剤にする必要があるのか」、「配合剤の薬価は引き下げるべき」など。

 6月10日の中医協総会でも、高血圧薬(ARB)と利尿薬の配合剤「ミコンビ錠」(日本ベーリンガーインゲルハイム)が、「ジェネリックを阻害する」などの批判を浴びた。
 これに対し、厚労省の担当者は「配合剤とひとくくりで言ってもいろいろなタイプある」と説明。資料を整理して中医協の薬価専門部会で改めて議論することになった。

7月15日の薬価専門部会2.jpg こうして迎えた7月15日の薬価専門部会で、厚労省は20種類の配合剤を分類して提示。

 「エチニルエストラジオールは前立腺癌や閉経後の末期早乳癌という適応を持っているが、配合剤の適応としては子宮内膜症に伴う月経困難症。大きく違う適応で、配合剤として承認を取っている」など、"工夫された配合剤"の例を示した。

 一方、高血圧薬(ARB)と利尿薬を組み合わせた4つの配合剤については、既収載品の1日薬価を合計した薬価の0.9~0.7倍引き下げるルールを提案。これに反対意見は出なかったが、後発品の使用促進との関係で議論があった。

 小林剛委員(全国健康保険協会理事長)は「今後、薬価の高い先発品同士の配合剤が出るか」 と質問。厚労省の担当者はその可能性を否定しなかった。

 3ページを参照。

 山本信夫委員(日本薬剤師会副会長)は、価格を引き下げるルールは評価したものの、「配合剤の医療上、保険上の必要性を示していただきたい」などと要望した。

 4ページを参照。

 藤原淳委員(日本医師会常任理事)は、「特許が切れる前に(配合剤が)出るのかを確認したい」と求めた。

 5ページを参照。

 一方、長野明専門委員(第一三共常務執行役員信頼性保証本部長)は薬価算定組織から提案された算定ルールの見直しについて、「これからさまざまな議論を頂けると承知している。然るべき時期に業界トップの意見聴取の場をぜひおつくりいただければと思う」と要望。
 配合剤については、「これまでのさまざまなご批判について十分承知しているし理解している。(薬価算定組織の)加藤委員長からご説明のあった方向で薬価の算定ルールをご議論いただきたい」と述べた。

 その上で、引き下げ幅の「0.9~0.7倍」について、「専門委員としてさまざまなデータ分析が可能だと思うので、お認めいただければ、然るべき時期に分析データをご提供して、どういう掛け率が妥当なのかという議論を進めていただきたい」と求めた。

 6ページを参照。

 これに対して、山本委員(日薬副会長)は厚労省が示した20種類の配合剤のうち、「11~20番までは比較的工夫された配合剤だと思う。1から10番までは、それぞれ工夫はされているのだろうが、とりわけ4番から7番(ARB と利尿剤の配合剤)は、必ずしも"良い子"ではない」と評した上で、後発品の使用促進に対する先発品メーカーの姿勢に不満を表した。

 遠藤部会長(中医協会長)は、「本日は結論を出すということではないので、薬価算定組織から出していただいた提案を基本に考えながら、今後、当部会として審議を進めていきたい」とまとめ、継続審議となった。

 6ページを参照。

 同日の薬価算定組織の説明はこちらを参照。厚労省の補足説明と、委員の主な発言は以下の通り。


 【目次】
 P2 → 配合剤の取扱いについて ─ 厚労省の説明
 P3 → 「今後、薬価の高い先発品同士の配合剤が出るか」 ─ 小林委員
 P4 → 「医療上、保険上の必要性を示していただきたい」 ─ 山本委員
 P5 → 「特許が切れる前に出るのかを確認したい」 ─ 藤原委員
 P6 → 「掛け率が妥当かを議論していただきたい」 ─ 長野専門委員


1 |  2  |  3  |  4  |  5  |  6 
  • MRICメールマガジンby医療ガバナンス学会
loading ...
月別インデックス