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「ラグ被害者の声も聴いて」 薬害検証委インタビュー③


――越権じゃないかということですね。

 それだけではありません。「薬害」の再発防止という前者のリスク管理に特化した議論を行なうとしても、前提となるリスク評価は適切になされなければいけません。医薬品が有する不可分の二つの作用とそこから生じる二つのリスクの一方を著しく過小評価してしまってはリスク評価としては極めて不適切ですし、そのリスク評価に基づいて行なわれるリスク管理も誤ったものとならざるをえません。

 現に、ドラッグ・ワクチンラグの一つである医薬品の「適応外使用」について、検討会では「薬害」というリスク評価のみに基づいた意見が見受けられますし、これは私たちが検討会の議論に危機感を抱いたポイントの一つでもあります。

――薬害被害者側の意見としては、本当に「ドラッグ・ワクチンラグ」が存在するものまで妨げるつもりはないということのようです。

 たしかに第一次提言には「臨床上の必要性があり、安全性と有効性に関する一定のエビデンスが備わっている場合には、速やかに保険診療上認められるシステムを整備するとともに、適切な承認手続きのもとで承認を得られるように体制を整備すべき」と、適応外問題の解消に向けた記述もあります。

 しかし、考えていただけばすぐ分かることだと思うのですが、「適応外使用の大幅な制限」は明日からでもできることです。一方の「適応外問題の解消」には、どれだけの費用と期間かかるでしょう。実現のスパンに大きな差が生じることは、誰の目にも明らかです。

 有効性、安全性が明らかであるにもかかわらず適応を取得していない医薬品は数多くあります。そしてその理由も単一ではありません。適応外使用の解消には数多くの施策と相応の時間が必要です。検討会の提言では、適応外使用が大きく制限される一方で、適応外の解消は遅々としてすすまないという状況に陥りかねませんし、これはまさに「ドラッグ・ワクチンラグ」の拡大、そしてそれによるリスクの拡大を意味します。この提言内容からも、「ドラッグ・ワクチンラグ」というリスクを適切に評価せず軽視していることが窺えます。

 「ドラッグ・ワクチンラグ」によるリスクは、救われるべき患者が救われないという「被害」を生み出します。このリスクを過小評価するということは、それは「ドラッグ・ワクチンラグ」被害者の存在を軽んじることと言っても過言ではないでしょう。薬害というリスク評価だけに立脚した議論ではなく、「ドラッグ・ワクチンラグ」被害者の存在をきちんと認識し、「ドラッグ・ワクチンラグ」というリスクがあることを適切に評価したうえで、薬害の再発防止というリスク管理を論じてほしいと願うものです。

――そういったことを検討会で喋らせろ、ということですね。

 はい、当然ヒアリングには呼んでいただけるものと思っています。

*次回検討会は29日に開催予定だ。

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